2020年も米国に不況のシグナルが発生しそうです。
過去のリセッション(景気後退)の前には、10年国債利回りから3ヶ月国債利回りを引いた値がマイナスになる現象が毎回のように発生していました。
2019年もこの現象は発生していたのですが、2020年も利回りの差がまもなくマイナスになるところまで来ています。
この記事を書いている時点の金利差は+0.015%まで低下しています。
この記事のポイント
- 2020年に入ってから10年国債利回りが低下し続け、ついには3ヶ月国債の利回りに近づきつつある。
- もしも、10年物が3ヶ月物より利回りが低下したら、逆イールド現象と呼ばれる不況の前に現れる現象になる。
- 逆イールド現象が起こったら、FRBは利下げをしてこの現象を解消しようとする。市場は既に2020年内の利下げを織り込んでいる。
- 利下げをすれば、2019年のような株の上昇が再度起こるかもしれない。ただし、企業の利益が伴わないとその先には大きな下落が待っている。
逆イールド現象とは
逆イールド現象については、すでに冒頭にも紹介しましたが、少しだけここで補足説明をしておきます。
半年間以上、経済成長がマイナスになることをリセッション(景気後退)と言いますが、過去30年間リセッションの前に必ず起こっていたのが、この逆イールド現象です。
2019年に発生してメディアでも大きく取り上げられましたが、逆イールド現象が発生して解消された後、1-3年後に景気後退が訪れることで有名です。
逆イールド発生時期 | 株価のピーク時期 | 景気後退時期 |
---|---|---|
1989年5月 | 90年6月(13ヶ月後) | 90年7月(14ヶ月後) |
1998年9月 | 00年8月(23ヶ月後) | 01年3月(30ヶ月後) |
2006年2月 | 07年10月(20ヶ月後) | 07年12月(22ヶ月後) |
2019年3月・5-10月 | – | – |
2019年5月に発生した逆イールド現象は10月に解消されてから、しばらく消えていました。しかし、2020年に入ってから10年国債利回りが急激に低下して、再び逆イールド現象が発生しそうになっています。
下がり続ける10年国債利回り
2020年になってから10年米国債利回りがやたらと買われて、利回りが下がり続けていました。
疑問に思うのは、どうしてアメリカの10年国債がこんなに買われたかです。
通常の景気後退前であれば、「これからアメリカは景気が悪くなるから、株を売って安全な国債を買っておこう」と思うのかもしれませんが、今のところ株はかなり好調です。そんなに国債が買われるような、悪い市場環境ではありません。
2020年に入ってからずっと国債が買われていたので、アメリカとイランの一時的な対立も、1月下旬から流行した新型コロナウイルスも関係なさそうです。
恐らくですが、アメリカの景気後退を懸念しているというよりも、年金機構・保険などの安定した金利収入を求める投資家が、アメリカ国債を買っている影響が大きいのではと思っています。
利回りを求めるマネー
ブラックロックのリック・リーダーさんは面白い数字を紹介していました。
2020年にフィクスト・インカム(金利収入が得られる国債のような資産)は2019年より7,000億ドル供給が減る。でも、高齢化している人口構成からして年金・保険だけで需要は1.5兆ドルも増える。だから、今後金利が上昇するのはかなり難しい。
これが確かなら、アメリカの国債は継続的に買われる力が大きく、利回りは低下する傾向にありそうです。
それに加えて、海外を見渡すとアメリカよりも財政面で問題を多く抱えているギリシャの10年国債の利回りが1.2%、イタリアでも10年国債が1.0%と利回りがかなり低いです。
アメリカ国債はイタリアやギリシャよりも安全とされていて、なおかつ利回りも高いなら、アメリカ国外からもアメリカ国債が買われる動きが起こるはずです。
2020年、市場は利下げを見込む
アメリカの国内も国外も利回りを求めて、米国債が買われるなら、今後も10年国債利回りが下がるかもしれません。そうなると見えてくるのは、10年国債が3ヶ月国債の利回りを下回る逆イールド現象です。
ただし、逆イールド現象が起こると一番嫌がるのは、アメリカの中央銀行FRBです。逆イールド現象の後に、リセッションが起こることを発見したのがFRBなので、発見した当人たちが逆イールド現象を気にするのは、当然と言えば当然です。
逆イールド現象を解消させるためには利下げをして、政策金利に影響を受けやすい3ヶ月国債の利回りを引き下げようとするはずです。
この動きを見越しているのか、市場は、2020年内にアメリカが1回0.25%分の利下げをすると考えているようです。
この記事を書いているのは2020年1月28日ですが、9月のFRBの会合までに少なくとも1回は利下げすると予想する確率が60%を超えました。
2020年も利下げ後の株価上昇があるか
2019年は3回の利下げ後に株価が急上昇しましたが、ひょっとすると2020年も利下げをすれば株価の上昇があるかもしれません。
ただし、株は企業の利益と無関係にどこまでも上昇することはできません。もしも、利下げしても企業の利益が成長しないようだと、株価の上昇の先には、大きな下落が起こる可能性もあるかもしれません。
やはり、基本的なことですが、株価を支えるのは企業の利益です。2019年は企業の利益成長がほぼ横ばいまで鈍化しましたが、2020年は上昇気流に乗れるかが重要になります。