今週のニューヨーク市場は少し動きが慌ただしかったです。
2月10日に発表されたアメリカの物価の伸びが大きかったことでインフレに弱い国債が大きく売られましたが、今回は少し良くない国債の売られ方が見られました。
長期国債よりも短期国債のほうが大きく売られていましたが、これは景気後退(不況)に少しずつ近づいていく時によく見られる売られ方です。
米国債の投資家はインフレを警戒して利上げをすれば、景気にダメージが出ると思っているのかもしれません。
景気後退になるまでには今はまだ十分時間はあると思いますが、利上げによってそれが少しずつ近づくという点は注意して見ておく必要がありそうです。
この記事のポイント
- 今週(22年2月上旬)に長期国債以上に短期国債が売られる動きが目立った。
- 10年米国債と2年国債の利回りの差がわずか0.40%にまで縮まった。これがゼロになると景気後退の前兆と言われているが、それに近づいている。f
- 投資家はインフレ対策で利上げが始まると、景気が悪化すると見ている模様。
長短金利差は大きく縮小
今週は短期国債が長期国債に比べて大きく売られる動きが見られました。
これは冒頭にも書いたように、これは景気拡大期のピークを迎えて後退期に向かい出す時期に見られる動きです。
どれくらい景気後退に近づいているのかを調べるためには、長期国債と短期国債の金利差(長短金利金利差)を使って表現することが多いです。
景気が悪化する数か月〜1-2年前には長短金利差がゼロになる現象(逆イールド現象)が起こると言われていますが、その発生に少し近づいているように見えます。
上の図でも書きましたが、今週は一気に長短金利差が下がりました。少し前まで0.6%前後の数字だったのですが、一気に0.42%まで下がっています。
前回の景気サイクルでこの0.4%の水準にまで下がったのは2018年6月の時です。
当時から投資をしていた人は覚えているかもしれませんが、2018年6月という時期は次の景気後退までは残り1年半、米国株が20%以上下がる弱気相場の開始までは残り4ヶ月という時期です。
今の米国株も近い状況にある気がしています。
景気後退にまではまだ1年程度の時間はあるけれど、市場の下落までは数か月かもしれないという感じです。
インフレと景気景気後退の間
現在、投資家のあいだでは2022年のうちに1.75%(通常の7回分)の利上げが予想されていますが、このペースに利上げをした場合にアメリカの需要が悪化すると見ている人もそこそこいるようです。
昨年末から消費は悪化している傾向も見られるので、それほど大きくない利上げでもアメリカの景気を傷つけるのではと心配する気持ちはわかります。
景気を心配する投資家は不景気に強い10年米国債などの長期債を買い進める傾向があるので、最近の長期債は短期債ほど売られない(よって、長短金利差も小さくなる)という現象が起こっているように見えます。
今のアメリカですが、かなり難しい立場にいるような気がしています。
- (1)現状のままでは金融緩和が行き過ぎているので、インフレが進んでしまう。
- (2)インフレ率の上昇を止めるために政策金利を引き上げ過ぎてしまうと、景気や需要を冷やして不況になるかもしれない。
しかし、冷静に考えるとまだ政策金利を一度も引き上げていないので、今は金融緩和が行き過ぎている上記(1)の場合を心配しても良さそうです。
それなら、ゴールドや原油などの価格に連動するコモディティ、企業の値上げによってインフレにある程度対応できる株などの資産を持ち続けることはそれほど悪い選択肢ではないはずです。
問題は(1)から(2)にどのタイミングで移行するかです。
この記事の前半で書いたように、次の不況がどれだけ近づいているかを長短金利差で確認すると、今月か来月かというような差し迫ったものはまだ感じません。
ですが、今週だけで長短金利が大きく動いたように状況が一気に変わることもあるので、今後も長短金利差は注意して見ておきたいと思います。