いまや、ほとんど話題にされなくなったアメリカの長短金利差の逆転(逆イールドカーブ)について書いてみたいと思います。
逆イールドカーブが発生すると1年程度で景気は悪化すると言われていますが、今回はそれが当てはまらずにアメリカは景気後退にならないと見ている人がほとんどです。
ただ、失業率がやや上昇トレンドが少しずつ鮮明になってきた今、長短金利差が何を語っているのかをもう一度確認してみましょう。
この記事のポイント
- イールドカーブは1年先の景気を予想している。
- 2023年第2四半期に長短金利差がもっとも大きくなった。つまり、景気の底は2024年の第2四半期頃と予想される。
- この予想は数四半期から最大で1年程度ずれることもある。この程度のズレを許すなら、失業率の上昇トレンドから言っても、まだアメリカの景気後退はまだあり得る。
長短金利差とGDP成長率の関係
まず、過去のアメリカで長短金利差と景気後退でどのような関係が見られたかをおさらいしておきます。
次のグラフでは長短金利差(10年国債利回りから3年国債利回りを引いた数字)を黄色線で、アメリカのGDP成長率(前年比)を青線で描いています。
このままでは関係がわかりにくいのですが、GDPのグラフを1年分だけずらしてみると、2つのグラフは(多少のズレはあるものの)似たような動きをとっていることがわかります。
そして、長短金利差(黄色)のグラフがマイナスになる時には、GDP成長率(正確には1年後のGDP前年比)もマイナスとなって景気後退になっているようです。
この関係を使うと、長短金利差が谷のようにマイナスとなって底を打ってから1年後に、アメリカの景気はもっとも悪化することがわかります。
今サイクルでの長短金利差
さて、では今回のアメリカで長短金利差はどのようになっているでしょうか。
長短金利差は2023年第2四半期に底打ちしていることがわかります。よって過去のアメリカのパターン通りなら、1年後の2024年第2四半期に景気の底がやってくるようです。
しかし、2024年にアメリカで景気後退が来ると思っている私でもさすがに第2四半期が景気の底だというのは早すぎる気がします。
世界金融危機の時には、長短金利差が予想する景気の底は実際よりも5四半期も早かったです。恐らく今回も景気の底の時期は、遅れて訪れるのではないかと思います。
すでに1年ほど前から書いているように、景気の低迷が遅れる理由はパンデミック時に蓄えた余剰な貯蓄があったためです。さらにはパンデミック時の大規模な金融緩和で過剰なドルが世の中にあったことも要因となっています。
あと10日前後で第2四半期が始まっても恐らくアメリカは景気後退にすら入っていないと思われますが、「長短金利差の景気悪化予想はやっぱり今回は当てはまらない」と決めつけるのはまだ早いと思います。
もともとこの長短金利差の予想時期はズレが大きいです。警戒を緩めるのは最近上昇している失業率の安定的な低下を見てからでも遅くないはずです。