昨日の記事を書いていて、「あれ?」と気になったことがあります。
原油価格は大きなショックが起こる2ヶ月前に下落しているように見えるのです。あたかも、これから世界が混乱に陥っていくことが分かっていたような動きです。
2020年の新型コロナウイルスのショック時とリーマンショック前でこの現象を見ていきます。
この記事のポイント
- 欧米で新型コロナウイルスの流行が拡大した2020年3月、原油価格はすでに2ヶ月前ピークをつけて約30%下落を始めていた。
- 同様の動きはリーマンショックの前にも見られた。リーマンショックが起こった9月15日、原油価格はまたも2か月前にピークをつけて30%以上下落していた。
2020年コロナショック前
まず、新型コロナウイルスの流行拡大時の2020年3月の原油価格の動きを見ていきます。
この時期は覚えている人も多いと思いますが、欧米でコロナの感染者数が急拡大して、一気に景気が悪化した時期でした。
以下は2020年3月のブログで紹介した感染者数の推移です。今思えば感染者数はたかが知れていますが、当時は世界中が感染拡大に恐怖していました。
大事なのはここからの話です。
景気が急激に悪化したのは2020年3月なのですが、原油価格はそれよりも随分前からはっきりと下落している兆候が見られます。
上のグラフを見ると、2ヶ月も前から原油価格はピークをつけています。2020年1月のピークから2月末までに(欧米で感染者が拡大するまでに)WTI原油先物は30%以上も下落しています。
何もなければ30%も原油価格は下落しません。この後の世界の展開を予想したかのような、原油価格の動きです。
もちろん、2020年1月や2月には中国を中心に感染者はすでに拡大していたので、その動きに合わせて原油価格が下がっていたのかもしれません。
2008年リーマンショック前
では、原油価格に経済的なショックを見通せる先見性があるかを見るために、もう一つ例を見ていきます。
次は2008年9月15日のリーマンショック時の様子です。
やはり、この時期も2ヶ月前に原油価格はピークをつけて、リーマンショックが始まる直前までに30%下落しています。
リーマンショックが起こる半年前の2008年3月にベア・スターンズも同様に破綻していることから、銀行や証券会社がこれから破綻することを一部の投資家は予想していたのかもしれません。
しかし、このときも原油先物市場の投資家の先を見通す目は見事なものでした。
2023年現在について
さて、それでは2023年のアメリカはどうでしょうか。今のところ、原油先物価格はアメリカの利上げ停止予想を受けて、価格が上昇しているように見えます。
また原油価格がピークをつけたようには見えませんが、これから2ヶ月で30%以上の下落があるなら2度あることは3度あるかもしれません。
直近の高値は9月18日の$92です。(万が一)これがピークだったとしたら、2ヶ月後の11月半ばまでに30%下落してWTI原油先物が$64まで下がると要警戒かもしれません。
現時点から2ヶ月で60ドル台まで下がるというのは、あまり想像できませんが、一応頭の片隅においておきたいと思います。