新しいユーザ体験UXとは何か。企業と株主がUXを追求すべき理由。

  • yuta 
にほんブログ村 株ブログ 米国株へ

MRIエンジニア・ダグの苦悩

GEに勤めるエンジニアのダグは、自分が開発した医療用検査機器のMRIに自信を持っていました。MRIは体にメスを入れず、子供達の体への負担なく検査できるすばらしい装置だと思っていたからです。

でもある日、MRIがどう使われているかヒアリングをしに訪れた病院で、ダグの自信は打ち砕かれることになります。MRIを受診する子供たちのほとんどは、大きくて無機質な機械に長い時間閉じ込められるのが怖くて、泣いていたのでした。

機能には最高のものを作ったMRIでしたが、何が足りなかったのでしょうか。

あれこれと悩んだダグでしたが、次のようにMRIを子供用に作り直すことにしました。

MRIと検査室に海賊船の絵を描いて、検査前の子供たちには「海賊たちに見つからないように、じっと隠れているんだよ」とお願いをしてから検査をすることにしました。

それ以降、子どもたちは喜んで進んでMRIに隠れ、泣く子供の数は激減しました。検査を終えたある子どもは「ママ、明日も探検したい」と元気よく話したそうです。

なぜ新しいユーザ体験が重要か

この2-3年、大企業の経営層はこのような新しいユーザ体験(UX:ユーザ・エクスペリエンス)を生み出して、製品の価値を高めようと様々な努力をしています。

「このブログは株式投資ブログのはずなのに、どうしていきなりUXの話をしているのだろう」と思ってるかもしれません。ただ、私は個人的には、長期的に株で利益を得るためには、このような新しい体験を生み出せる企業かどうかが重要なポイントの1つだと思っています。優れたUXを作り、継続的に改善する仕組みがあれば、ユーザが他社のライバル製品に乗り換えることなく、繰り返し買ってくれる性質を持っているからです。(他社に乗り換えられないことを「経済的な濠」といいます)

「新しい体験を提供する製品は儲かる」仕組みは次のような感じです。

  • モノで満たされた現代は、人々はモノに対して機能ではなく新しい体験を求めている。
  • そんな現代では(iPhoneのように)使って心地いい製品は、ヒットにつながる&顧客離れされず継続的に利用される。

機能だけでは満足しないユーザが、UXを求めている

すでにモノで満たされた現代では、私も含めて一般的なユーザは製品に対して、とってもわがままになっています。

次の消費者へのアンケート結果では、(1)製品に必要な機能を備えていることは当たり前で, 企業としては(2)ユーザが求める期待を超えなければ、(3)他社の製品に乗り換えられて売上が減少しかねないことを示しています。

      (1)求める製品やサービスが提供されるのが当たり前だ: Yes 75%
      (2)期待値を外した会社の製品はすぐに是正するのが当然だ: Yes 86%
      (3)上記2つともNGならば、即座に別の会社の製品に乗り換える: Yes 64%

モノが溢れている現代では、(1)の機能面はすでに満たされています。だからこそ、ユーザに飽きられて他の製品に目移りされないように、(2)で求められているユーザの期待を超える必要があり、そのために色んな企業で新しい体験を提供しようとしているのです。

ちなみに、アマゾンは(2)の点を特に重要視しています。アマゾン登場以前の日本のインターネットショッピングは、注文から数日立ってから商品が届くことが普通でしたが、ユーザにはできるだけ早く商品を届けられるように当日配送を実現し、さらに1-2時間での配送も可能にしました。また、更にアマゾンは注文が入る前から、商品の出荷準備をして届け先の近くの拠点まで送り届ける予想配送の技術も持ってて、「商品がいち早くほしい」ユーザの期待に常に答えようとしています。

また、昔から馴染みのある取り組みとしては、アマゾンのサイトでの商品画面からワンクリックで住所入力も、クレジットカード番号入力も省いて商品を購入できる”1-Clickボタン”の特許を取得して、ユーザのネットショップの体験をより身近なものにしていきました。

2016年にはレジのないコンビニAmazon Goを社内で実験的に開始し、2018年にはアメリカ・シアトルで一般向けに1号店をオープンして、常に新しいUXを提供しています。

心地いい製品はヒットにつながる&顧客離れしにくい

ユーザに新しい体験・心地よい体験を提供してユーザを味方につければ、今度はユーザがSNSへの投稿や「いいね」ボタンを使って体験を共有する広告塔となるため、UXは顧客離れ回避のためだけでなく、ヒット商品への要因になりえます。

また使って心地いい体験が消失するデメリットが、他の製品に移るメリットを上回れば、そのユーザが製品のリピーターとなってくれます。一度iPhoneを使うと、他に移りにくいと言われるのがこの例です。

株式投資家にとってのUX

さて、ここまで説明すると株式投資家としてもUXの存在は見逃せない要因に見えてきたと思います。わがままな私達、一般ユーザの期待を超えるサービスを継続的に提供できれば、顧客がライバル企業に流れにくくなって、株主としても長期的に安定した利益を確保することができます

ここで大事な要因は、ライバル企業に顧客が流れないことです。この性質は「経済的な濠」と言われていて、この性質がある企業は株主のリターンが大きい傾向がみられます。例えば、法律の規制が厳しくライバル企業が新規参入しにくいタバコ業界はそもそもライバル企業の数が増えにくい経済的な濠があり、製品が特許で守られてライバルが同じものを作れない製薬会社も同様の濠があると言えます。また、これらの業界は長期的に株のリターンが大きい企業が多いことで有名です。

この経済的な濠を作る要因は、タバコや製薬会社の例に見られる政府の規制のほか、利用者が多くなるほど価値が上がりライバル企業が入りにくくなるネットワーク効果(みんながLINEを使っている場合、他のライバル企業のメッセージアプリは使われなくなる現象)が有名ですが、継続的にUX改善を挙げられる企業も、濠を作る要因になりえると考えています。