3月16日月曜日、この日もダウは歴代最高の下げ幅を記録しました。
Wikipediaには、早くも2020年3月16日に「ブラックマンデー2(Black Monday II)」という名前までつけられていました。さすが英語版Wikipedia、仕事が早いです。
この3月16日は株も金も原油も下げたのですが、唯一値上がった資産がありました。国債です。
この日から、FRBは債権を大量に買って市場に資金を投入する作戦(量的緩和)をはじめたおかげで、国債だけは価格が上昇したようです。
>>【参考記事】FRB緊急利下げ、量的緩和再開。それでも株が売られる理由。
ただ、FRBの量的緩和の取引履歴を見てみると、最近の市場であらゆる資産が売られている理由と、米国経済が景気後退に向かっている兆候が見え隠れしていました。
この記事のポイント
- FRBの国債購入の申し出に、市場の売却の応募が殺到している。市場は資産よりも現金を必要としている。
- 現金が必要なのは、主に「損を恐れて資産を売却したい」か「支払いに迫られている」場合。
- 変動が大きく損が出やすい長期国債より、価格が安定している短期国債のほうが売りの応募が殺到しているので、今の市場は何かしら支払いに迫られている企業が多い模様。
- 支払いに問題がある企業が増えれば、失業率上昇や倒産を招く。新型コロナウイルスが収束しても、景気が戻らず景気後退に突入する恐れあり。
本当に新型コロナウイルスだけの問題で済むのなら、ウイルスの収束とともに景気は急回復するはずです。
しかし、新型コロナウイルスの影響が長引くと、GDPマイナス成長やその先の景気後退が色濃くなる恐れがあると感じました。
FRBの国債買付に売り応募が殺到
3月16日からFRBは本格的に市場から国債を買い取り始めました。その取引履歴を見てみると、FRBの買い募集に市場の売り応募が殺到しています。
FRBの国債購入データ(3/13)
3/16日分 | FRB買い募集 | 投資家売り応募 | 倍率 |
---|---|---|---|
米国債 | 400億ドル | 974億ドル | 2.4倍 |
市場の投資家や企業は、とにかく資産よりも現金を欲しがっているようです。
これは最近の市場の動きとも一致します。
2月下旬までは、株が売られたら安全資産の国債と金は買われるというパターンが見られましたが、最近は株だけでなく国債も金も売られて、とにかく市場は資産よりも現金が欲しがっている様子が見て取れました。
市場が現金を欲しがる理由
しかし、なぜ市場は現金を欲しがっているのでしょうか。
資産を売って現金化する大きな理由は大きく次の2つあると思っています。
現金化する主な理由
- (1)価格が下落して損が出ることを恐れて、売りたがっているから。
- (2)借金の返済や人件費など、何かしらの支払いに迫られているから。
投資家なら真っ先に「(1)損が出ることを恐れているから」と考えたくなりますが、今回は少し様子が違うかも知れません。
損を恐れているなら、変動が大きくて損が出やすい長期債の売り応募が多いはずですが、短期国債のほうが売り応募が集中しているからです。
短期債に売りの募集が殺到
償還期間 | FRB買い募集 | 投資家売り応募 | 倍率 |
---|---|---|---|
2年未満の国債 | 100億ドル | 379億ドル | 3.8倍 |
2-4年の国債 | 80億ドル | 216億ドル | 2.7倍 |
4-7年の国債 | 90億ドル | 167億ドル | 1.9倍 |
7-20年の国債 | 50億ドル | 92億ドル | 1.8倍 |
20年以上の国債 | 50億ドル | 63億ドル | 1.3倍 |
その他:物価連動債 | 30億ドル | 57億ドル | 1.9倍 |
なので、企業や機関投資家に何かしら支払いが生じているのに、資金繰りが悪化している可能性があるのかなと考えてしまいます。
景気後退に突入すれば、低迷期間は長期に渡る
資金繰りの悪化が起きれば、失業率の上昇や倒産の増加などが増え、最悪は景気後退に繋がります。そうなると新型コロナウイルスが収束しても、景気が復活しない恐れがあり、株価は長い間低迷するかも知れません。
以前、株価が20%以上低迷する弱気相場に関するゴールドマン・サックスの調査結果を紹介しましたが、景気後退に陥るかそうでないかで、株価下落率や低迷期間が大きく変わります。
タイプ毎に異なる弱気相場の規模
タイプ | 平均低迷期間(月) | 平均下落率(%) |
---|---|---|
バブル崩壊 &金融危機 |
42ヶ月 | -57% |
普通の景気後退 | 27ヶ月 | -31% |
一時的な弱気相場 (景気後退なし) |
9ヶ月 | -29% |
もしも、景気後退になるなら、まだまだ大きな下落を覚悟しないといけません。
新型コロナウイルスのピークは7月か
大きな下落が見られた3月16日に、トランプ大統領は「景気後退の恐れもあるかも知れない」と珍しく弱気な発言をしました。
>>トランプ氏「景気後退の恐れ」、新型コロナ最悪期は早くて7月(ロイター)
これからは、新型コロナウイルスの収束のほうが早いのか、米国経済が倒れるほうが早いのかの2つの競争になります。
最近は毎日、米国の新型コロナウイルスの感染者数の増加グラフを眺めています。

これがいつ減少に転じるかが、今後の米国の経済を大きく決めそうです。
1月末頃に、バイロンウィーン氏が新型コロナウイルスの影響について話した言葉が思い出されます。
バイロンウィーン(1/31の発言)
- ウイルスの影響が深刻になる前から、株価は調整がおこっておかしくない状態だった。調整はむしろ健全。
- 今後3ヶ月(4-5月まで)で解決できるなら、米国株式市場は大丈夫。
>>【参考記事】焦点はいつ収束するか。成長率の引き下げ予想相次ぐ
バイロンウィーン氏の言葉は、今になって重みが出てきた気がします。