私はビザ、マスターカードの株を保有していますが、中でもマスターカードは私の主力銘柄でもあり、この2社にはかなりの期待をしています。その理由は端的にいうと、今後増え続けていく電子決済の恩恵を受けられることです。
電子決済の基盤を担うビザ・マスターカード
ビザもマスターカードもクレジットカードに印字されているため、この会社はクレジットカードの会社なんだと思う人も多いかも知れませんが、これらの銘柄を純粋なクレジットカードカード会社と見ていると、本質を見誤る恐れがあります。
マスターカードはそのあたりの誤解を解くために、自分の会社をこのように表現しています。
Mastercard is a leader in global payments and a technology company that connects billions of consumers, thousand of financial institutions, and millions of merchants, as well as governments and businesses around the world
Mastercardは、世界規模の決済機能を提供する企業のリーダーであり、多くの消費者、金融機関、加盟店、そして世界中の政府と企業をつなぐテクノロジー企業です。
投資家の中でには、最後の一文を読んで「え!?」と驚かれる人も多いのではないでしょうか。マスターカードのような半世紀も歴史がある企業が、ちゃらちゃらした印象の強い”テクノロジー企業”のイメージと結びつかないのは、私も同感です。
しかし、ビザもマスターカードも、その事業の中心はクレジットカード(カードそのもの)を作る会社ではありません。
店舗で買い物をして店員がクレジットカードをカードスロットに通す時、またはアマゾンのカートに入れた商品を支払うタイミング、QRコード決済で金額を確定した時、モバイルSuicaにチャージするそのタイミングで、支払い情報はビザやマスターカードのネットワークとコンピュータで処理されます。世界のあらゆるところから同時に大量にアクセスされる決済データを、1つの狂いなく・遅延なく処理するための膨大なネットワークと大規模なコンピュータ処理能力を提供するのが、ビザとマスターカードの事業の本質です。
(マスターカードがテクノロジー企業だと表現したのも、ネットワークとコンピュータをあわせた決済基盤を提供しているからにほかなりません。)
よって、わたし達消費者がクレジットカードを使わなくても、QR決済を使ったとしても内部でマスターカードを登録していれば、その金額はマスターカードのコンピュータで決済処理されて、金額の数%はマスターカードの売上になるわけです。
QRコード決済アプリも、内部でクレジットカードを使用
最近ではQRコード決済を利用した決済サービスも注目を集めています。楽天Pay、PayPay、Origami Pay、LINE Payなどサービスが乱立している印象すらありますが、これらのサービスの利用には銀行口座の登録の他、クレジットカード登録も選択でき、結局はQRコード決済であってもビザ・マスターカードに手数料収入が入る仕組みは変わりません。
そして、地道に利用数を増やし続けているアップルペイもアプリの内部ではクレジットカードを登録することによって、支払い機能を提供しています。
今後ますます電子決済が増えていくことが予想されますが、電子決済で一番重要な基盤を提供しているビザとマスターカードは時代の波にのった企業と言えます。
ビザ・マスターカード以外にライバルが出てこない理由
なぜこれほど美味しいビジネスがビザとマスターカードの2社に限定されているかは、決済基盤を作るのがただただ困難だからにつきます。世界中からいつでもどこでもつながる安全な支払いネットワークを作り、なおかつ同時に大量アクセスされても落ちない基盤を作るのは、技術的に大変難しく、投資資金も膨大になるため、それを本業とするビザやマスターカードに頼らざるを得ない状況が生まれています。
また、莫大なお金を出して決済基盤を作ったとしても、使ってくれる消費者や企業がいないと収益になりません。ビザカードを持っている人は、使える場所が多い(使っている企業が多い)からビザカードを作ったという理由が多いように、使う消費者や企業が多いことから、ますますみんなが使うようになるネットワーク効果と呼ばれる性質があるため、ビザとマスターカード以外がビジネスを展開しにくくなっています。
唯一にして最大の懸念点は仮想通貨
ただし、この2社が今後も長い将来に渡って盤石かというとそうでもないと考えています。
私が懸念しているのは、仮想通貨です。厳密に言うと、仮想通貨を支えているブロックチェーンと呼ばれる技術がビザとマスターカードが長年構築してきた電子決済基盤の代わりとなって、将来2社を脅かすのではないかと懸念しています。
誰がいくらの仮想通貨を保有しているかを記録するブロックチェーン技術は、人から人へのお金の移動(支払い)扱える技術で、ビザとマスターカードにとっては驚異の技術です。ただ現在のブロックチェーンは、ビザ・マスターカードが構築した電子決済基盤ほど安全でもなく、また大規模に拡張できるものでもないため、ビザとマスターカードの代わりになるものではありません。
しかし、長期的に見た時に、いつかどこかのタイミングで、ビザとマスターカードの基盤に匹敵する技術に化けるとも限りません。ビザ・マスターカードは推奨銘柄で私も保有していますが、長期投資家としては取扱いには十分注意が必要です。
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