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[更新版]企業が革新的な商品を出し続けなければならない理由。

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最近のこのブログの記事では、株を保有している会社の革新的な取り組みを立て続けに紹介してきました。

Googleの事例

近未来が見える。Googleのタッチレス・ディスプレイが実用化へ。

[更新版]次のトレンドは音声アシスタント、その頂点に立つのはGoogle。

このあたりの進んだ技術の取り込み方は、さすがグーグルだと感心します。でも、こうした革新的な試みは、何もIT企業に限った話ではありません。これから先は、こういった企業の例も見てみたいと思います。

ナイキの事例

ナイキ、足の形状に合わせて自動調整する革新的なシューズ発売へ

スポーツシューズは昔からある製品で、いまさらこの分野で何か新しい取り組みがあるとは思っていなかったのですが、とてもエッジが効いた、いいシューズだと思います。

3Mの事例

実は、ナイキのように昔からある商品でもまだまだ新しい取り組みをやっている企業はあります。3Mが2018年8月に発売したスコッチブライト・スクラブドットスポンジは「汚さないスポンジ」というコンセプトを持っています。

source:ヤマダヨウスケ型

使うほどに汚れと匂いが気になる洗い物用スポンジですが、3Mのスコッチブライト・スクラブドットは汚れ離れをしやすい特殊加工がしてあり、カレー汚れですらも水で洗い流せるようにしています。

革命おきちゃった。3Mの新開発スポンジはカレー鍋への「決戦兵器」だった

企業が革新的な商品を出し続ける理由

以前の私は、安定して利益とキャッシュが成長しているかなどの過去の実績の数字を追って、購入する株を決めていたのですが、最近はどれだけ挑戦的な取り組みをしているかという未来の市場についても見るようにしています。

既存のビジネスが成功しているうちから、新しい挑戦に取り組む企業だけが長期的に存続できるからです。

今の社会は本当に動きが早いです。何もしないでいるとあっという間に、ライバル企業に同じような製品を真似され、しかもより安い価格で提供されて、お客がそちらになびいてしまいます。

ライバル企業のこうした動きには行動を起こさないといけませんが、更に安い価格で抵抗するだけでは、ただの売上減少になります。よって、いずれ他の企業に真似することを見越して、次々と製品を打ち出せる企業の体質になる必要があります。

さて、ここまでが一般的な教科書的な解説です。私がこのコンサルタント業界にいて見てきた実際の世界でライバルとの競争のために行われていることは、もう少しだけドロドロとした残酷なものでした。

ある日系企業Aの苦戦

その時、私はコンサルタントとして、ある日本企業Aを担当していました。A社が打ち出した製品は値段はかなり高いのですが、高性能で評判がよく前年の売上も悪くありませんでした。

しかし、グーグル、アマゾンなどがライバルとして同じような製品を打ち出してきたことで風向きが一気に変わります。彼らは、A社と同じような製品を出しただけでなく、一桁も二桁も安い価格で、サービスを提供したのです。二桁安いだけで驚きだったのに、なんと中には無料で提供した企業もいました。A社は大苦戦を余儀なくされました。

さて、ここで疑問なのですが、なぜ海外の大手ITがここまで価格を下げられたのでしょうか

蹴散らしてから、儲ける戦略

それはひとえに、彼らの戦略にあります。新しい分野に進出するとき赤字覚悟で値下げしてライバル企業が蹴落とし、ライバルがいなくなってから利益を出し始めるのです。

具体的なステップはこうです。

  • 本業のビジネスを確立させる(グーグルなら広告、アマゾンならネットショップ)
  • 本業が好調のうちに次の製品を育てるため、企業Aと同じような製品を作る。
  • 企業Aが音を上げるまで、利益を度外視にして製品の価格を一気に下げる。(この製品が赤字を出しても、本業で稼ぐので体力がある
  • 同時に大量の開発者をつぎ込み、徐々に機能面で企業Aと同等に追いつき、そして追い越す
  • 製品も価格も負けている企業Aはギブアップ状態。他の企業も同様に蹴散らす。
  • (今後もし)ライバル企業が数社に限られたら、少しずつ利益が出し始める

実はインターネット上のクラウドビジネスも、これと同じ戦略で各社戦っていました。2010-15年頃までは各社が値下げ競争をしていましたが、今はアマゾンとマイクロソフトが勝ち残り、2社とも安心してクラウドで利益を出し始めています。

まとめと学び

いやー、こわい世界ですね。

これを見て「なんて奴らだ!」と思った方も多いかと思いますが、前回と今回の記事で言いたかった結論は、「グーグルとかアマゾンって本当にひどいですね」ではありません。

お伝えしたかったのは、「成功しているうちに、次なる手を打つことがどれだけ大事か」です。企業Aがまずかったのは、ライバルが赤字覚悟でも企業Aを倒そうとしてくることを予想して、それに備えることが足りていなかったのです。

ライバルへの備えが重要なのは、何もIT企業に限ったことではありません。

私の保有銘柄で一番多い金額を投資している、糖尿病治療薬を開発するノボノルディスク社は、次世代の糖尿病治療薬の開発を行っています。あと2年で飲むタイプの糖尿病治療薬(インスリンの分泌を促すGLP-1受容体作動薬セマグルチドの経口型新薬)を発売する見込みですが、ライバル企業も同じく同様の製品が出されることを見越して、この新発売する製品のさらに次の世代の製品も、既に開発段階に入っています。

私たち、長期の投資を考えているものにとっては、企業が永続するかがとても重要です。そのために、「成功しているうちに、次にどんな手を打っているか」をみる必要があります。


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