2020年は新型コロナウイルスの影響を受けて、航空業界は致命的なダメージを受けています。
米国の航空会社はどの決算を見ても赤字に転落しており、借り入れを増やしてなんとかコロナの危機を乗り越えようとしているところです。
航空業界に幅広く投資できるETFの価格を見ると2020年は大きく落ち込んでいるのがわかります。
しかし、低迷期は投資家にとってチャンスそのものでもあります。どんな投資家にもおすすめできる方法ではありませんが、最終的にコロナウイルスが収束することを見越して、低迷する航空会社の株を買いに行くのもアリだと思います。
その場合に大事になるのは「どの航空会社の株なら買っても良さそうか」です。この記事では、アメリカの航空会社でどこなら経営難を乗り切れそうかを調べました。
結論から言うと、米大手航空会社4社の中ではサウスウエスト航空(シンボル:LUV)なら比較的生き残れる可能性がまだ残されていると思っています。
私が航空会社で投資をするなら、投資資金を少額に抑えつつサウスウエスト航空の株を選びます。
この記事のポイント
- アメリカの大手航空会社4社(サウスウエスト・デルタ・ユナイテッド・アメリカン)の経営の健全性を比較した。
- 新型コロナウイルスの影響を受けて、4社とも20年4-6月期は赤字だった。
- 各社の違いが明確なのは社債比率。サウスウエストだけは比較財務状態がよく、大手四社では唯一「投資適格」の格付けをもらっているので、必要な場合は他社よりも良い条件でまだ借金ができる。
- サウスウエスト航空は米国国内線が中心で、新型コロナウイルスからの回復が他の航空会社に比べて早そう。
財務状況はサウスウエスト航空が一番安定
財務状況は2つ点を確認していこうと思います。「今後1年の支払いに対して現金が十分にあるか(流動比率:Current Ratio)」と「負債は十分小さいか(負債比率:Dept/Equity)」です。
航空会社 | 流動比率 (6月時点) |
負債比率 (6月時点) |
---|---|---|
サウスウエスト航空 | 1.7 | 0.96 |
デルタ航空 | 0.94 | 2.85 |
ユナイテッド航空 | 0.61 | 2.32 |
アメリカン航空 | 0.77 | (債務超過) |
サウスウエスト航空は他の企業に比べて、流動比率が小さいので現金が確保できている上に、負債比率が低いのでまだ借金できる余力を残していることがわかります。
実際に、借金の返済能力を格付けしているS&P社の評価では、サウスウエスト航空は大手4社の中では高い格付けをもらっています。
航空会社 | S&P格付け | 見通し |
---|---|---|
サウスウエスト航空 | BBB(投資適格)-8/14時点 | ネガティブ |
デルタ航空 | BB(ジャンク債)-7/22時点 | ネガティブ |
ユナイテッド航空 | B+(ジャンク債)-7/9時点 | ネガティブ |
アメリカン航空 | B-(ジャンク債)-7/10時点 | ネガティブ |
S&P社のランク付けではBBB以上なら「投資適格債」、それ以下なら投資には適さない「ジャンク債」にあたるのでサウスウエスト航空だけがかろうじて投資適格のランクを維持しています。
「投資適格」の格付けをもらっている間は新規発行の社債の利回りを低く抑えることができるので、サウスウエスト航空にはまだ安く借金をできる余地が残されていそうです。
さいごに
財務とは少し離れてサウスウエスト航空の路線も確認してみると、この会社は国際線はメキシコやカリブ海の国の一部だけで、ほとんどがアメリカ国内の路線であることも今後プラスに働きそうです。
新型コロナウイルスからの回復状況を見えると、日本でもアメリカでも国際線よりも国内線のほうが先に業績が回復する傾向が見られるからです。
この記事では、今のアメリカ航空会社の中ではサウスウエスト航空が比較的倒産しにくい企業になりそうだという話をしてきました。他の企業が経営悪化して弱体化する中でも生きのびれば、コロナ収束後にはライバルよりも競争力が強くなった状態で復活できるかも知れません。
それでも、サウスウエスト航空はS&Pの格付けでジャンク債の一歩手間の企業なので、かなりリスクが高い投資だと思います。成功すれば数年かけてそこそこ大きなリターンが得られそうですが、リスクが高いので投資額は少額にとどめたほうが無難だと思います。
また、株価回復の時期は新型コロナウイルスの再流行の有無によるので、気長にまったほうが良さそうです。