この1週間の市場は、長期金利の上昇の悪影響であらゆる資産の価格が下落する動きが見られました。
しかし、国債価格の下落は悪いことばかりではないとも思っています。
2021年2月になってからの国債の価格下落で利回りもコロナ前の水準にまで回復してきたので、選択肢が広がった気がします。
価格が下落したことで国債の価格の上昇余地も回復したので、このブログでも何回か紹介しているオールシーズンズ戦略(≒オールウェザー戦略)も「いざ」という時には再び使えるようになってきたと思います。
>>【参考記事】レイダリオが個人投資家に推奨するオールシーズンズ・ポートフォリオとは
この記事のポイント
- オールウェザー戦略は株・国債・ゴールド・商品を使った分散投資で、あらゆる状況で中程度のリターンを安定して残せる投資戦略。コロナショック前後でも抜群の安定感を誇った。
- 2020年半ばから国債価格が上がりすぎて上昇余地が少なくなり、オールウェザー戦略が機能しにくい状態が続いたが、2021年2月からの米国債の下落で再び使える戦略になりつつある。
- 2021年2月は国債価格の下落が急なので、国債を多く保有するオールウェザー戦略に今切り替えても儲けが出にくい。しかし、十分に国債価格が上昇し終わった後、景気の先行が見えない場合にはオールウェザー戦略は投資家の選択肢に十分なり得る。
先を見通すのが難しいアメリカ経済
アメリカの経済は今後を見通すのがとても難しい時期に来ています。
いまだに多くの失業者を抱えていて、コロナ前の失業率にはまだまだ全然戻っていません。
2020年がコロナで経済が止まった反動で、2021年後半からは景気が良くなる見通しですが、その反動が終わった後も高い失業率が続いていると、アメリカの経済が低迷してしまう恐れもあります。
一方で、このブログでも何度もお話しているように、近年のアメリカはコロナの景気刺激策で大量のドルをバラまいているので、2021年後半や2022年から景気が過熱してインフレが進む可能性もあります。
2020年代の米国投資の大きなテーマはやはりインフレだと思う。
まだ2020年代は始まって1年しか経っていませんが、それでもこの10年間で大きな変化が起こりそうなものをあげるなら、アメリカのインフレ(モノの価格上昇=ドルの価値下落)だと思います。たぶん、2020年代のアメリカはインフレが投資家の最大の関心事になるはずです。インフレ率が適温なら米国株に追い風ですが、過熱すると向かい風に変わるので、注意が必要です。
要するに、2021年後半から前年の反動でアメリカ経済は調子が良くなるにしても、その後に「低成長・低インフレ期」になっても「高インフレ期」になっても不思議ではない、両極端で先の見通しにくい環境にあります。
オールウェザー戦略が使えるようになりつつある
そんな先を見通せない状況でも、そこそこのリターンを生み出せる投資方法があります。
世界的に有名なレイ・ダリオが個人投資家向けに考えたオールシーズンズ戦略(≒オールウェザー戦略)です。
この戦略は、国債・株・ゴールド・商品をバランス良く聞く見合わせて、不況期(低成長期)だろうがインフレ期だろうが、安定してリターンを出せるように設計された投資戦略です。
好景気のリターンではS&P500には劣るのですが、株が下落するような状況でも中程度のリターンがあらゆる状況で出せるようになっています。
例えば、コロナショックに襲われた2020年3-4月でもオールシーズンズ戦略(オールウェザー戦略)はほぼ無傷の安定感を誇りました。
もしも 2020年にオールウェザー戦略を取っていたなら
オールウェザー戦略は、株100%で投資する場合に比べるとリターンは高くないものの、株の下落時に抜群の安定感を誇ることで有名な投資法です。この記事では、もしも2020年を1年まるごとオールウェザー戦略を取っていた場合には、どんなリターンになっていたのかを検証します。
オールウェザー戦略が機能するようになってきた
このオールウェザー戦略ですが、2020年半ばから少し問題点を抱えていました。
オールウェザー戦略は、景気が悪くなって株価が下落したとしても国債が値上がりしてカバーして、資産全体としては中程度のリターンを出す仕組みになっています。
でも2020年半ばから国債価格は歴代最高の水準にまで買われて、値上がりする余地がかなり少なくなってしまっていため、次に不景気で株が下落してもその下落をカバーできるほど国債が値上がりできるか、不安材料がありました。
しかし、2021年になってから国債価格がコロナ前の水準近くまで下落したために、再び値上がり余地が出てきたようです。
国債は売られると利回りが上昇するのですが、利回りはコロナ前まで上昇して回復しています。
もしコロナのような株の下落が起こったとしても、株の下落を吸収できるまで国債の価格が下落したようです。
なので、今後いざという時が来たら、いつでもオールウェザー戦略を取ることはできるようになりました。
オールウェザーをタイミングはまだ来ていない
「今後いざという時が来たら、いつでもオールウェザー戦略を取れる」と書きましたが、今はまだオールウェザー戦略に切り替えるタイミングは来ていないと思います。
2021年2月現在はまだ金利の上昇(国債の下落)が続いているので、国債の保有比率が高いオールウェザーに切り替えると、国債価格の下落の悪影響を受けてしまうと思われます。
コロナ不況の反動でアメリカの景気が強くなる2021年半ばから後半にかけては、安全資産の国債は売られやすくなる時期が続きますが、この時期を過ぎて国債価格の下落が一段落すれば、その後の先行きが見通しにくい経済でもそこそこのリターンが期待できるオールウェザー戦略は、投資家の選択肢になるはずです。
オールウェザー戦略は国債の下落が続いている2021年2月で採用する投資戦略ではありませんが、「いざ」と言うときの今後の投資の選択肢として頭の片隅に入れておきたいと思います。