今の米国株は、コロナの不況を乗り越えるために打ち出した大規模な金融緩和のおかげで高い値がついています。
しかし、少しずつではありますが、この金融緩和の規模を縮小させる時期についての話が多くなってきた気がします。
アメリカでは景気が力強く拡大しているので、不況のために打ち出した金融緩和をそろそろ終わらせようとする話が出るのは自然な流れです。
ただ、少し悩ましいのは、金融緩和で高値がついている米国株はその規模が小さくなっても下落せずに済むのかという点です。
この記事のポイント
- 金融政策を決める中央銀行FRBの中で、緩和縮小の議論をそろそろ始めても良いという人々が現れ始めている。
- FRBの副議長は今後数ヶ月で、債権購入額を縮小(一部の金融緩和の規模縮小)を議論する可能性もありうると、意見を軟化させはじめた。
FRB内でわずかに広がりを見せる緩和縮小の議論
先日、4月の金融政策を決める会議(FOMC)で、メンバーの一部から「そろそろ債権購入の縮小する時期を議論するべきでは」という提案があったことを以下の記事で書きました。
4月のFOMCの議事録を眺めていて、気になった2つのこと。
アメリカの金融政策を決める会議(FOMC)の21年4月28日の議事録が公開されました。議事録を眺めていて気になった点が2つあったので、この記事で書いていきます。
この会議があった4月時点では、そろそろ債権縮小を話し合う必要があると提案するのは少数でしたが、5月後半になってから意見を少しずつ変えたメンバーもいるようです。
意見を変え始めたように見えるFRB副議長
FRBのクラリダ副議長は5月17日までは、4月の雇用回復が弱かったことを理由にまだ緩和縮小をする時期ではないと強い発言をしていました。
21年末にかけて雇用が改善するかを確認し、もしも緩和縮小させるなら前もって伝えるとも言い、緩和縮小への道のりは長いことをアピールしていました。
>>クラリダFRB副議長、テーパリング協議を始める時期ではない(ブルームバーグ)
しかし、そのFRB副議長が5月25日のインタビューでは、データによっては「恐らく、今後数回の会議で債権購入ペースの縮小について議論を開始できる状況になる」と緩和縮小に前向きなニュアンスを出し始めています。
>>FRB副議長、テーパリング開始は今後数回の会合で協議可能も(ブルームバーグ)
クラリダFRB副議長が気にしていた雇用については、5月に入ってから毎週のように新規失業者(の保険申請数)が減っているデータも公表されているので、こうした情報を見て発言が前向きになっているのかもしれません。
まだ少数派ではあるものの、最近は少しずつ債権購入の縮小を匂わせる話がFRBから増えているのを感じます。
債権購入よりも気になる政策金利引き上げ
FRBのメンバーから、そろそろ緩和縮小の時期を話し合うべきという考えが出始めていますが、米国株への悪影響はまだそれほど考えてなくて良いと思っています。
というのも、アメリカでは2014年1月から10月でも債権購入の縮小を起こったのですが、そのときも米国株への悪影響はほとんど見られなかったからです。
前回同様に、FRBが慎重に債権購入を縮小させるなら、まだ株価への影響はそれほど気にしなくて良いはずです。
一方で、債権購入の縮小と停止のあとに待っているはずの、政策金利の引き上げについては、米国株投資家は注意が必要だと思っています。歴史的には、政策金利の上昇は半年から数年の時間をかけて、かなりの高い確率で経済を景気後退に追いやっているからです。
参考までに、2000年のITバブルのときには政策金利引き上げから、7ヶ月でニューヨーク・ダウが下落に転じています。
今後のハイテクバブルに備えて、2000年のITバブルの値動きを振り返る
2020年はまだバブルではありませんが、今後1-2年かけてバブルになる可能性も否定できません。その場合に一番状況が近いのは2000年のITバブルです。この記事では、今後やってくるかも知れないハイテク株のバブルに備えて、ITバブルの動きを振り返ります。
最近気になったニュースでは、モルガン・スタンレーCEOは2022年序盤にも政策金利引き上げの可能性があると予想していました。
>>2022年序盤の米利上げ見込む、モルガンSのCEO-自社予想より早期(ブルームバーグ)
私はもともと2022年半ばに政策金利が引き上がると思って以前から記事に書いてきましたが、モルガン・スタンレーCEOの発言はそれ以上に早いペースになります。
債権購入縮小の議論では注意を払う程度で良いと思いますが、時期に政策金利引き上げの議論が進んでくると、いよいよ半年から数年以内に株価の調整があるかもしれないと警戒する必要がありそうです。