2020年、コロナショックで市場に起こっていたこと

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2-3月は株式市場が大きく売られました。ごく短い時間だけですが、「売れる資産であれば、株だろうが国債だろうが何でも売る」極端な動きも見られたように思います。

渦中にいるときには気づけなかったのですが、今になって振り返ると一瞬だけ見られた「売れる資産は何でも売る動き」は、あと少しで債務危機につながる状態にあったのではと感じます。

少し時間をおいた今だからこそ、2-3月の市場で何が起こっていたのかを振り返っておきたいと思います。

この記事のポイント

  • 2月後半から3月上旬にかけては、リスクが高い株や社債を売って、より安全な国債などを買う動きが見られた。
  • 3月半ば以降は、株・社債と同時に国債も金も売られる現象が一時的に見られた。
  • 世の中には、実在する現金よりも債権のほうが金額が大きい。たとえリスクが小さい債権や国債でも下落を恐れて売る動きが広がり、少ない現金を巡ってあらゆる資産が売られる債務危機の状態に、かなり近づいていたように思う。

前提知識:現金は債権より少ない


まず、2-3月の市場の動きを見る前に、前提として知っておくと理解が深まる知識を触れておきます。

世の中に存在する現金の金額と、債権の金額についてです。感覚的にわかっている人も多いと思うのですが、世の中には現金以上に圧倒的に多い金額の債権が存在します。

前提知識

  • 世の中には、現金以上に大量の債権が存在する。
  • 債務危機が起こった場合には、少ない現金を巡って、あらゆる資産が売られる。

たとえば、私たち一般人の一番身近な債務は住宅ローンですが、頭金を少し用意するだけで年収の数倍のお金を借りることができます。

(購入する住宅は担保に取られますが)将来得られる収入を銀行に『信用』してもらうことで、頭金の現金よりも数倍大きな債務ができあがります。

「でも、銀行にある現金を借りただけで、世の中に存在する現金と債務の量は同じじゃないか」と思わるかも知れません、

しかし、銀行は預金の数倍の金額までお金を貸し出すことができる仕組みがあり、その結果、現金よりも多くの債務が世の中に存在することになります。

いろいろと言いましたが、ここでは『将来の収入を当てにした信用(クレジット)』の仕組みを使って、世の中には現金の数倍以上の債務が存在すると覚えておいてください。

なので、もしも債権危機が発生した場合には、少ない現金を巡って安全な資産を含めて、あらゆる資産が売られる傾向がでてきます。

このあたりの信用(クレジット)の話をより詳しく知りたい場合は、投資家のレイ・ダリオ氏が大変わかりやすい動画を日本語で提供しているので、ぜひ参考にしてください。

私の説明よりも正確かつ、わかりやすいと思います。

より安全な資産へ資金が流れた2月後半から3月前半

2月後半〜3月前半の市場の動きですが、この時は大幅な株価の下落が見られたものの、まだ「あらゆる資産が売られる」ような最悪な状態ではありませんでした。

普通は景気が悪くなると、株やリスクの高い社債などのリスク資産が売られて、より安全な国債や金などの安全資産が買われる傾向(リスクオフの動き)が見られます。

上のグラフでグレーに色を塗った時期は、コロナショックで株が下がった時期ですが、国債は買われて価格が上昇しているので、普通の景気悪化で見られる動きをしていました。

つまり、まだ債務危機のような悪い事態ではなく、通常のリスク資産を売って安全資産を買う通常のリスクオフの動きでした。

あらゆる資産の現金化が一時的に見られた

異常が見られたのは3月2-3週目です。この週は、株も国債も大きく売られる日が目立ちました。

この時、一時的ですが、「資産であれば何でも売られる最悪な市場環境」に近づいていたように感じます。

あらゆる資産が何でも売られるのは、債務危機で見られる現象です。

先程、「将来得られる収入を『信用』して」現金以上の債務が生まれると説明しましたが、景気の悪化で将来が売られる収入が減る不安から『信用』がなくなり、国債などの安全な資産ですらも売って現金化する動きが、一時的に投資家に生まれた恐れがあります。

ただし、3月は債務危機の片鱗が見えただけで、リーマンショックのような大規模なものには至りませんでした。それは、社債のリスクを表すスプレッド(社債利回り – 国債利回り)を見ても、リーマンショック時の水準まで悪化しなかったことからわかります。

ただ、債務危機とまでは言わないまでも、近い状況にいたのだと思います。

市場の現金化の流れを止めたFRB


過去の米国でも3月半ばから後半に見られた債務危機に近い状態は何度も起きていますが、今まで人類が生み出した比較的平和な解決策は今のところ一つしかありません

中央銀行が誰も買わなくなった債権を買い取って、現金を欲しがっている投資家に現金を供給することです。

債務危機が訪れたときの唯一の対応策

  • 中央銀行が、大量に紙幣を印刷して債権を買い取る。

3月も米国の中央銀行FRBが国債などの債権を無制限に買い取る宣言をしました。FRBが大量に紙幣を印刷して、市場で買われないままになっている国債を買い取ることで、現金化したい投資家の需要を抑え込んでいます。

FRBの迅速な行動がなければ、きっと今も市場が荒れていたはずです。

市場はまだ警戒している状態


しかし、FRBが無限に債権を買い取ることになったから、これで安心と思うのは、まだ早いです。

これは私の感覚ではなく、市場がまだ警戒しています。株式の市場参加者の恐怖心を表すと言われる恐怖指数(VIX)はまだまだかなり高い状態なので、警戒心が解かれていないことがわかります。

恐怖指数VIXは年始の10代前半には戻らず、警戒が続く

2020年2月には10前後だったVIX指数は、まだその水準に戻ることはなく40程度の高いレベルにあります。

市場が何に警戒しているかは推測するしかないのですが、景気の悪化と企業の業績の悪化から、債権が売られることではないかと思っています。

既にさまざま報道されているように、米国はいま歴史的な勢いで失業者が急増中です。この失業者が早く職場に復帰して、給料をもらえる状態にならないと、カードローン・住宅ローンの支払いは滞り、これらのローン関連の商品は下落します。

また、失業率が早く改善されないと、消費者の手元のお金はローンの支払いばかりに使われ、消費にお金が回らなくなるので、企業の業績が低迷する可能性もあります。

今後、企業が次々と悪い決算をすれば、格付会社は大量の米国企業に対して格付けを悪化させて、再度債権が売られる動きがあるかも知れません。

この記事を書いている4月2週目の株価はかなり順調に回復していますが、今までの2ヶ月の動きを振り返ると、まだまだ油断できない展開にあると言えます。

将来の不安

今後も何か債務危機に近いことが起こったら、FRBが大量に紙幣を印刷して助けてくれるから大丈夫だという考えは、短期的にあっていても、長期的にはかなり危ういです。

危ういポイントは2つです。

FRBの債権購入のデメリット

  • 米国の経済成長率の低下
  • ドルの大量供給によるインフレリスク、金利上昇と株安

大量に紙幣を印刷することで、ドルの価値は時間をかけて確実に低下するはずです。ドル安で輸入品の価格があがれば、消費が7割のGDPを占める米国で消費が低迷し、長期的に経済成長率が下がってしまいます。

また、通貨安になればインフレも招きます。そうなれば、いずれインフレ率の上昇を抑えるために、FRBも金利を上げざるを得なくなります。金利が上がれば、株は安くなるので、遠い将来のどこかで米国は今回のFRBの政策のツケを払うことになると思います。


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