1ドル7元を超えて元安になったその日、アメリカは中国を為替操作国に指定しました。アメリカのムニューシン財務長官によれば、中国は貿易で不公正に有利になるために人民元安を誘導してきたと言います。
日本も過去に何度か為替操作国の管理リストに入れられていた経緯があるので、名前を知っている人も多いと思いますが、この為替操作国とは一体何でしょう。また、これを指定されるとどんな困ったことになるのでしょうか。
為替操作国はアメリカが独自で認定している制度
そもそも、為替操作国はアメリカが独自で認定している「自分の国の貿易に有利になるために、通貨を安くしている国」のことです。
通貨が安い国はアメリカへ低価格で商品を輸出することができるので、アメリカ国内の類似商品は売れなくなってしまう恐れがあります。なので、アメリカはこれを警戒して、不当に通貨を安く保っている国を監視しています。
為替操作国の条件は「貿易収支」「経常収支」「為替介入」の3つの条件を満たすことです。2つだけ満たす場合には、監視リストに入れられます。日本も2016年から、たびたび監視リストに入れられてきました。
- 貿易収支:アメリカとの貿易による黒字額が年間200億ドルを超えること。
- 経常収支:経常黒字額が国内総生産(GDP)比で3%を超えること。
- 為替介入:政府による外貨購入が1年のうちに6カ月以上でGDPの2%を超えること。
為替操作国指定の後にはアメリカとの面談が待っている
さて、めでたく為替操作国に認定されると何が待っているのでしょうか。小学校でも何かやってしまったら先生との面談が待っているように、為替操作国に認定されると、基本的にはまずアメリカとの二国間協議という名前の面談が始まります。
この面談でのアメリカ側の要求は極めてシンプルです。通貨を引き下げる行動をやめて、通貨の価格を引き上げなさいというのです。為替操作国が対応できない場合には、アメリカ側が通貨安の影響を相殺するために関税を発動します。
中国を為替操作国に指定した背景
アメリカは1996年の中国への為替操作国の指定以来、どの国にも為替操作国の認定をしてきませんでした。トランプ大統領は2016年の大統領選で「中国を為替操作国に指定して45%の関税を課す」と公約していましたが、実際に大統領になってからは態度を軟化させて為替操作国の再認定は度々見送られてきました。
しかし、貿易戦争の過熱でアメリカが課した制裁関税の影響を和らげるために、意図的に通貨安を容認しているとして2019年8月に為替操作国の指定に踏み切っています。