私は、今後10年でも最も大きな花が開く人工知能のビジネスは、自動運転だと思っています。
現時点での主な自動運転開発会社はGoogleのWaymo、GMのCruise、FordのArgoAI、そしてAptivです。
自動運転の主要プレイヤーはこちらを参照:Navigant Researchによる自動運転企業ランキングで首位獲得をしたWaymo
UBSは、2019年時点で自動運転のトップを走るWaymoの売上が2030年には1140億ドル(約12兆円)になると試算しています。2018年のGoogleの売上が1,368億ドル(約15兆円)なので、Waymoはあと10年で2018年時のGoogleに迫る巨大企業になります。
このUBSの試算はだいぶ楽観的かも知れませんが、私がGoogleの株を買っている1つの理由でもあります。
このWaymoが8月21日、自動運転の人工知能の学習には必要不可欠な大量のドライビングデータの公開に踏み切りました。業界トップのWaymoが蓄積したデータを公開したことで、自動運転社会の実現に向けてさらなる加速が期待されます。
データ公開はWaymoにとってもプラス
短期的な目線で見れば、Waymoにとっても重要な運転データを他社に向けて公開することは、ライバルを勢いづけることに繋がりかねない危険な行為です。
しかし、そもそもあらゆる都市で、自動運転に必要な膨大なデータを1社だけで収集するには限界があります。
それにWaymoは安全な自動運転の実現のためにセンサーを自社開発をするなど、長年の積み重ねの総合力で運転技術を開発しており、自動運転の技術はデータだけあれば実現できるものでもないようです。
関連記事:Waymo、自動運転車の精度を握るセンサーを外販化へ
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またWaymoがデータ公開に踏み切った最も大きな要因として、ライバル会社が次々とデータを公開し始めたことがあげられます。
2019年に入ってからAptiv、フォード、Lyftなどのライバル会社が次々とデータの無償公開に踏み切っており、業界全体でデータを共有して、自動運転社会の早期実現を図ろうとしています。
Aptivが自動運転の巨大データライブラリを公開、140万点の画像も(Forbes)
フォード傘下の米Argo AI、自動運転向け高精度マップを無償公開(自動運転LAB)
Lyft、自動運転の開発に役立つデータ「Level 5 Dataset」公開–技術コンテストも開催(CNET)
膨大な時間と投資を費やす自動運転技術の実現を、少しでも短期にしたい思いはどの会社も同じようです。
業界全体の開発速度の向上につながる各社のデータ公開は、大変価値のある取り組みです。企業としてはいち早く自動運転の開発コストを回収できるようになり、人々は大きな移動の自由を手に入れます。
また株主としても自動運転の早期実現は、宅配からタクシー配車ビジネスまであらゆる業界の利益率を向上させる効果が見込める大きな1歩になります。