市場のシグナルから今の市場を読み解く。

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市場がだいぶ楽観的になっています。

アメリカでは新型コロナウイルスの新規感染者数もピークをつけ、ギリアドの新薬が新型コロナウイルスへの治療に有効だとニュースが流れるなど、ウイルスの流行が始まった2020年3月の状況からかなり改善したように見えます。

4月10日でピークをつけつつあるアメリカの新規感染者数

2020年3月後半に株価に底打ちの兆しが出てきたという記事を書きましたが、この記事では市場がどんなサインを送っているのか、再度確認したいと思います。

この記事のポイント

  • 株の底値は近いかも知れない。リーマンショック時に株価に先行してピークをつけた指標は、いずれも2020年3月にピークをつけた。
  • しかし、株が底値をつけるまで、まだ下落する可能性もある。リーマンショック時には先行指標がピークをつけてから3ヶ月で株が30%下がった。
  • インフレ率を見ると、一時期より上昇したものの低位安定している。この傾向が続くなら、インフレの悪影響よりも前に株高が来るはず。
  • 下げ止まらない原油価格は、アメリカ石油業界の業績に大きな打撃。1バレル15ドルではアメリカの石油業界の多くは利益が出ない。
  • 今後の株へのリスク要因は、『企業利益の悪化・格付け悪化・経営難』、『失業者の復職が遅れるなどの新型コロナウイルスからの景気回復の鈍化』。

サイン1:株価の底は近いかも知れない


リーマンショック時には株価は2009年3月に底値をつけましたが、株よりも先にピークをつけたデータがいくつかあります。

リーマンショック時に株価よりも先にピークをつけた指標

指標 ピーク 株の底値まで
期待インフレ率 2008年11月20日 約3.5ヶ月前
VIX(恐怖指数) 2008年11月20日 約3.5ヶ月前
ハイイールド債 2008年12月15日 約3ヶ月前
長期金利 2008年12月18日 約3ヶ月前

そして、これらの株に先行する指標がピークのつけたように見えるというのは、その調べ方も含めて3月25日の記事でお伝えしています。

この記事を書いた時点では、まだピークをつけたかどうか不鮮明なものもありましたが、4月20日時点ではほとんどがピークをつけたと言って良さそうです。

2020年3月にピークをつけた先行指標

指標 ピークをつけた日
期待インフレ率 2020年3月19日
VIX(恐怖指数) 2020年3月16日
ハイイールド債 2020年3月23日
長期金利 2020年3月9日

長期金利(10年国債利回り)だけ、ピークをつけたか怪しい動きが見られますが、総じて先行指標は株の底値が近いと言っているように見えます。

ただし、底が近いと言っても「もう株価は下落しない」という意味ではないです。まだ、これから2-3ヶ月の間に株を下げる可能性もありますし、また底をつけてもしばらく景気回復が遅れて株価が低迷するかも知れません。

サイン2:株価が底をつけるまでに、さらなる大きな下落もある


先行指標がピークをつけたと言っても、かならずしも株価は底値を打ったではありません。実際にリーマンショック時には、先行指標がピークをつけてから2-3ヶ月で株価は-30%ほどの下落を経験して、底値をつけました。

なので、リーマンショック時のような動きをするなら、今後2-3ヶ月のうちに株は下落に向かっていくかも知れません。

3月23日のS&P500の安値からだいぶ上昇したので、下落があるならそろそろかも知れません。

サイン3:インフレ率上昇の前に株高が来る


中央銀行のFRBと米政府が大規模な経済対策を打ち出したことで、株価は3月後半から上昇を続けていますが、大量のドルを世の中に供給することで、長期的にインフレになる恐れもあります。

しかし、4月20日時点で、市場が想定している10年先の期待インフレ率を見てみると1.01%と高くはありません。

むしろ、インフレ率は低位安定していて、市場は急激なインフレはまだ当面起こらないと思っているようです。

この低いインフレ率は今のところ、朗報です。

もしも景気が落ち込んでいるときにインフレ率まであがってしまったら、二重の苦労を背負うところでしたが、そうはなっていません。

以前、このブログではインフレ率の上昇よりも先に株価の上昇が来ると言いましたが、この通りになっていると思います。将来的にインフレ率が上昇しやすい土壌はできてしまったと思いますが、その前にまずは株高が来てくれることを引き続き願います。

サイン4:原油価格の下落と石油業界の経営悪化


さて、インフレ率と若干の関連があるのですが、個人的に気になるのは原油安が止まらないことです。このままではアメリカの石油業界は利益が出なくなります。

サウジアラビアやロシアなど産油国の間で、5月1日から原油の生産量を1000万バレル/日減らす合意をしたことで、原油安に一定の歯止めがかかるはずですが、世界で2000-3000万バレルとも言われる需要の減少を受けて原油が安くなっています。

この記事を書いている4月20日時点では、WTI原油先物相場でついに1バレル15ドル台まで下落しました。

2016年にもWTI原油先物相場で1バレル30ドルを下回って、多くの米国の石油企業は利益がでなくなりましたが、当時よりも状況が悪いです。

2016年ですらアメリカは多くの石油関連企業で黒字を維持できませんでした。大規模でコスト優位性がある以下のような企業でも苦戦していました。

1バレル30ドルを下回った2016年は大企業でも苦戦

企業名 純利益 前年比 利益率
エクソンモービル 7840 -52% 4%
シェブロン -497 -111% -1%
コノコフィリップス -3615 18% -15%
キンダーモーガン 708 180% 5%
フィリップス66 1555 -63% 2%

今後、アメリカの石油業界で経営難の企業がどれほど出るかが心配のタネです。

今の株価が織り込んでいないリスク


上記で石油業界の経営難が心配と言いましたが、石油企業の業績悪化はアナリストたちがかなり警戒して予想を出していて、想定の範囲内なのかも知れません。

問題なのは、まだ織り込んでいないと思われるリスクです。

今後の株価のリスク要因(まだ織り込んでいないと思われるもの)

  • 石油業界以外の企業利益の悪化・格付け悪化・経営難。
  • 失業者の復職が遅れるなどの新型コロナウイルスからの景気回復の鈍化。

たとえば、4月14日から金融業界では一部の企業で1-3月期の決算が発表されましたが、この決算発表の結果を見て2020年1-3月の金融業界の予想利益が急低下しました。

株価は予想利益にもとに価格が形成されるので、決算シーズンが進むにつれて石油・金融業界以外でも予想利益が悪化する業界が出れば、株価に影響が出てきます。

また、アメリカでは3月後半から失業者が急増していますが、まだ市場はこの悪影響を株価に反映させていないように見えます。その証拠に、4週連続で数百万人規模で新規失業保険の申請者が報告されていますが、この報告がある木曜日は4週連続で株価が上昇しています。

新型コロナウイルスが収束すれば失業率は急回復することを見越しているか、市場が失業者数の変化を様子見している可能性がありますが、新型コロナウイルス収束後に失業率の低下が鈍いようだと、景気回復は遅れて株価に悪影響がでます。

まとめ


アメリカでは新型コロナウイルスの感染者数の増加が最悪期を抜け、さらに治療薬の開発が進むなど、明るいニュースが入ってきています。

リーマンショック時に株価に先行してピークをつけた指標をみると、すでにピークをつけているので、株価の底値も近い気配も感じます。ただし、過去の景気後退の動きを見ると、まだこれから大きな下落をして底をつけに行く動きも十分あり得るので注意が必要です。

また新型コロナウイルスの感染拡大がピークを超えたことで、今後市場の注目は少しずつ企業の利益に移るかも知れません。

歴史的に安くなっている原油価格が石油業界にどの程度ダメージを与えているのか、他の業界では新型コロナウイルスでどの程度ダメージを受けているか、その状態からどれだけ早く復帰できるかが焦点になりそうです。


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