ウォルマートは自動運転車を開発するNuro社と新たな食料品の宅配実験発表しました。
この記事では、この実証実験はどのような取り組みなのか、なぜウォルマートにとってこの実証実験が重要なのかを書いていきます。
この記事のポイント
- ウォルマートは自動運転車での食料品宅配実験を新たに開始すると発表。
- ネットショップの成功を握るのは倉庫と配送網。ウォルマートは全米でたくさんの倉庫を既に持っている。ライバルのアマゾンに勝つためには、配送網の整備が必須な状況。
- インターネットショッピングは今度、配送の自動化でコストが劇的に変わる分野の1つ。
ウォルマート自動運転車を使った食料品配送の実証実験を開始
ウォルマートによれば、2020年からNeroの自動運転車を使った食料品の宅配実験を開始するようです。
この取り組みで使われるNuro(ニューロ)社が開発した自動運転の車は、ドライバーも乗客も載せない運搬用の車になっています。
ウォルマートが発表したサイトに掲載れていた写真には、Neroの車にウォルマートの食料品を詰めたバッグがいっぱいに詰め込まれている様子が見れます。
出典:Walmart to Test-Drive Autonomous Grocery Deliveries with Nuro(ウォルマート公式サイト)
ウォルマートのネットショッピングで食料品を注文したユーザは、米国ヒューストンでNeroの自動配送の受け取りを希望した場合に、このサービスを利用できることがあるようです。
米ネットショッピングの成功の鍵は倉庫と配送網
インターネットショッピングで成功成功するためには、巨大な倉庫と配送網が必要だと、よく言われます。
この原則が言われ始めたのはアマゾンがネットショップで成功してからです。
ネットショップ企業の成功のポイント
- どんなものでも買える状態を作るための巨大倉庫
- 注文した品物をすぐにユーザのもとに届ける宅配網
巨大倉庫を使ったロングテールビジネス
すでにだいぶ昔話になりますが、2000年頃のまだ多くの人々がネットショップが使っていなかった時代、誰でも気軽にネットでビジネスがはじめられると思っていたのに、ネットで成功する大きく成功した企業はほとんどいませんでした。
そんな中、アマゾンはネットショップの在庫を巨大な倉庫で持つビジネスをスタートして、ネットショップではじめてと言っていい成功例になります。
アマゾンがやったのは、たまにしか売れないものでも在庫としてもっておけるように在庫コストを徹底的に下げ、あらゆる商品が揃っているネットショップにしたことです。
たまにしか売れない商品でも多数そろえて、売上を大きくするマーケティング戦略を「ロングテール」と呼びます。このへんの話は、あの売れっ子作家のクリス・アンダーソンの出世作「ロングテール」にも詳細に書かれています。
初期投資がほとんど要らないのがメリットだったはずのネットショップで、成功するための要因が実物の巨大倉庫だったというのは、なにか教訓めいています。
ユーザにいち早く届ける配送網
この記事を書いている2019年現時点で、アマゾンもウォルマートも十分な商品を準備するだけの巨大な倉庫は持っています。
2019年で問題になっているのは「いち早くユーザに届ける配送網」です。
ライバルのウォルマートがネットで買った商品を無料で2日以内に届けるサービスを行っているのに対抗して、アマゾンは米国で翌日配送の「1dayデリバリー」サービスをPrime会員向けの標準サービスとするなど、バチバチに競争している状態です。
特にアマゾンは配送網の整備のコストで、決算の利益が圧迫されるほどになっています。
>>配送コストがアマゾンを苦しめる。今後の利益も大幅悪化で株価急落【2019年7-9月期決算】
自動運転で配送コストを劇的に減少させる試み
ただ、配送網の整備にコストがかかっていたインターネットショッピングにも、明るい兆しが見えています。自動運転やドローンの自動制御で、今後大きくコストが削減できる未来がやってくるかも知れないからです。
配送コストは言うまでもなく、人件費が大きく影響します。この人件費を大きく減らす取り組みの1つが自動運転車やドローンを使った配送です。
【米国株】自動運転の普及で儲かる企業を、もう一度考えてみた。
ライバルのアマゾンは、この配送網の整備に一番関心があるので、この問題をドローンや配送ロボットで解決できないかずっと研究を続けていました。
Amazon自動配達ロボット、シアトルに続きカリフォルニア州でも稼働。
アマゾンは2019年1月にシアトルで自動配達ロボットScoutの試験導入を開始しましたが、その第2の都市としてカリフォルニア州でも導入が始まったようです。Scoutは人、車、待ちのベンチや信号など、街の歩道と障害物を認識しながらゆっくり歩き、自動で配達所から家まで荷物を運んでくれます。
GoogleにAmazonも、相次ぐ完全自律型ドローン配送の実用化。
2019年になって実用化に大きく動いている分野に自動配送ドローンがあります。2010年代前半から開発は続けられてきましたが、規制に阻まれるなどなかなか日の出を見なかったサービスがGoogleやAmazonから相次いで実用化のニュースが入ってきています。
ウォルマートもアマゾンに負けじと、次々と自動運転の取り組みを始めています。
ウォルマートの自動配送の実験
- 2018年、Googleの自動運転会社waymoと、食品配送トラックを使ったパイロット事業展開
- 2019年年初、Udelv(ユーデルブ)とアリゾナ州で食料品の自動配送実験実施
- 2019年夏、Gatik AI(ガーティックAI)とアーカンソー州で自動運転車を使った食料品の配達実験実施
実証実験をすすめても、本格展開しないところにどんな課題があるのかが気になります。しかし、こうした積極的な動きの中で、今回またウォルマートがNeroと配送実験を行うところに、なんとしても成功させたいウォルマートの意地を感じます。