Visaの2019第3四半期決算が出ましたが、派手さはないものの良い内容でした。売上、利益ともに事前のアナリスト予想を上回る結果となっています。
- 売上は$58.4億ドル(前年同期比+11%)で、事前予想の1.4億ドルほど上回る。
- 一株利益は$1.37(前年同期比+14%)で、事前予想の$1.32を上回る。
- 決算をうけて、Visaの株は時間外取引で+1.2%で推移しています。
相変わらず、手堅いですね。クレジットカードなんて、既に何十年も使われているものなのに、未だに前年比10%を超える成長ができる点がすばららしいです。
実際にカードの発行枚数は3%しか伸びていないのですが、利用金額がそれ以上に増えているところを見ると、ネットなどの電子決済にクレジットカードがマッチしている様子が透けてみえます。
今回の決算から見えてくることは以下の4点です。
- Visaの好調さを牽引したのは、クレジットカードやデビットカードなどvisaの決済ネットワークを使った収入で、+13%の伸びを示している。
- 一方で、今後成長が見込まれている国際決済は+9%と、他の売上に比べてやや軟調だった。
- アメリカ国内でのデビットカードの支払いが目立った。4-6月期のアメリカの個人消費の力強さがここでも垣間見えた。
- カード発行数は前年比+3%の伸びだが、カード利用回数は+12%、利用金額は+13%であることから、一人あたりの決済回数と金額が順調に増えている。
これらを決算資料を振り返りながら、触れていきたいと思います。
しかし、ただ振り返るだけではつまらないので、visaの決算資料を見慣れていない人でも、今後自力でも決算の内容が読めるようにいくつか用語の解説を交えてながら進めていきます。
売上構成:決済収入がvisaの成長を牽引
visaは3つの収入源を持っています。「サービスビジネス収入」、「データ処理収入」、「国際決済収入」です。
- サービスビジネス収入(Service Revenue):金融機関が発行するvisaカードの発行を手助けする対価として、金融機関発行のvisaカードの利用金額に対して一定金額を収益としてもらう。
- データ処理収入(Data Processsing Revenue):visaカードの認証、決済、クリアリング(支払い額の集計処理)などのvisaの決済システム利用料。システムの利用回数ごとに、収入が発生。
- 国際決済収入(International Transaction Revenue):国をまたぐ決済処理の収入。為替収入も含む。
2019年3Q決算では、データ処理収入が+13%が一番の成長を見せています。一方で、今後成長が見込まれている国際決済は+9%と、他と比較するとやや軟調だったのは気になります。世界各国の個人消費はアメリカほど堅調ではないのかもしれません。
カード種別毎の利用金額はアメリカ国内のデビットカードが成長
クレジットカードとデビットカードの利用金額内訳を見ると、アメリカ国内のデビットカードが堅調だったことがわかります。近年、アメリカでは個人間の送金をデビットカードを通じて行うやりとりが流行っていることも、利用金額の上昇につながっているかも知れません。
カード利用回数は+12%の安定した伸び
カードの決済回数+12%は順調な推移です。下の図はvisaのシステム利用回数の伸びを示していますが、このグラフを読めるようになるためには、用語の理解が必要かもしれません。
- total transaction(左側のグラフ):「認証した回数」、「カード決済の回数」、「支払金額集計(クリアリング)の回数」などvisaのネットワークでやり取りした回数全てを全てを含んでいます。この回数は、データ処理収入に直結します。
- process transaction(右側のグラフ):「カードの決済」の数だけを集計しています。クレジットカードやデビットカードの利用回数が見れるので、こちらの指標のほうが解りやすかも知れません。
カード発行枚数は+3%の伸びです。既にクレジットカードもデビットカードも世の中に溢れているので、ここの伸びはあまり今後も期待できません。しかし、発行枚数が+3%の伸び一方で、カード利用回数が+12%と、一人あたりのカード利用頻度が大きくなっていることは良い知らせです。
最後に、「この決算報告資料はどこからダウンロードできるの?」という質問にお答えしておきたいと思います。
過去の資料も含めて、こちらのPresentationと記載がある箇所からダウンロードできますので、今後のVisaの企業研究にお役立てください。