しばらくこのブログでは触れていなかったのですが、逆イールド現象について書いていきたいと思います。
この記事のポイント
- 逆イールド現象という現象は景気後退の前兆と呼ばれているが、正確には逆イールド現象が発生したのちに解消されると景気後退がやってくる。
- 2023年は7月以降に逆イールド現象が解消に向かっているような兆候が見られる。
- アメリカの景気後退を信じない人は増えているが、ゆっくりと景気後退は近づいている。
逆イールド現象について
まず、逆イールド現象とは何かについて少し説明をします。知っている人は次の章まで飛ばしてかまいません。
10年国債の利回りは2年国債のものよりも高くなっているのですが一般的です。国債を保有する期間が長くなれば、それだけ損を出すリスクも増えるので、10年国債のほうが高い利回りでないと割にあわないからです。
しかし、景気サイクルの後半になって利上げが進むと2年国債の利回りが上昇して、10年国債利回りを上回ってしまうことがまれに起こります。この珍しい現象を逆イールド現象といって、これが起こるとリセッション(景気後退)が1-2年後にやってくると言われています。
逆イールド現象の解消について
逆イールド現象は不況の前兆とよく言われます。
しかし、過去30年くらいのアメリカの不況の前の様子を見てみると「逆イールド現象が起こったらリセッションの前兆」というよりは、「逆イールド現象が発生したのちに、この現象が解消されるとリセッション」という捉え方のほうがあっていた場合が多いです。
実際に見てみましょう。下図は10年米国債利回りから2年米国債利回りを引き算したものをグラフ化しています。
このグラフはプラス圏なら10年国債のほうが2年国債よりも利回りが高い普通の状態、マイナス圏なら逆イールド現象が発生していることを表しています。
これを見ると1990年以降のどの景気サイクルでも、逆イールド現象が発生した後に(グラフがマイナス圏に沈んだ後に)、一度逆イールド現象が解消されてから(グラフはプラス圏に復帰してから)景気後退になっていることがわかります。
9月から逆イールド現象はやや解消に向かい出す
さて、それでは現時点では逆イールド現象がどのように推移しているかを少し見ていきます。
上のグラフにも書きましたが、7月からアメリカの逆イールド現象は解消に向かいだしているように見えます。2023年は景気後退になるという年始に立てた予想はさすがに当たらなそうですが、アメリカの景気後退は少しずつ近づいているようにも見えます。
何が言いたいかというと、アメリカは景気後退を回避するという意見をもつ人が増えているようですが、恐らくそれは違うだろうと思っています。
>>米の景気後退入り、もはやコンセンサスにあらず(ウォールストリート・ジャーナル)
「逆イールド現象は景気後退の前兆ではない」という意見を持つには、逆イールド現象があまりにも過去30年間の景気後退を当てすぎています。
また、逆イールド現象をもとにクリーブランド連銀が計算した景気後退確率(下図)を見てみると、24年4月までは毎月のように景気後退確率が上がり続けています。
景気後退確率が来年4月にかけて上がり続けるのに、その途中の今の段階で逆イールド現象の景気後退シグナルについて「今回は違う」という考えをもつのは早い気がします。