サームルールというものがあります。アメリカがいつリセッションに突入したかを判断する基準で、かなり有名なものです。
ずいぶん前にサームルールを紹介する記事を書いてからこのデータを眺めていなかったので、5月の雇用統計までのデータを使って、現状把握をしてみたいと思います。
やる前から結論はわかっていたつもりではありますが、やはりアメリカは景気後退まではもう少し時間がかかると言えそうです。
変化があるとしたら、次回の雇用統計で0.1%でも失業率が上がるかどうかがポイントになりそうです。
この記事のポイント
- 過去のアメリカでは、「過去3ヶ月の失業率平均」が「12ヶ月の最低失業率に0.5%ポイントたした数字」を超えたときにリセッションに突入している。
- 現時点では、サームルールを満たすには過去3ヶ月の失業率が低すぎる。
- 次回やその次の雇用統計で続けて失業率が上がるような展開になれば第3四半期でのリセッション入りはあるが、そうではないなら第3四半期でのリセッションはない。
サームルールのおさらい
まず、サームルールとは何だったかをおさらいしたいと思います。
リセッションが近づく時には失業率の上昇が起こります。では、いったいどれだけ失業率が上がれば、アメリカはリセッションに突入したと言えるでしょうか。
その質問に回答できるのが、サームルールと呼ばれる判断基準です。
サーム・ルールによる景気後退期の判定
- 過去3ヶ月間の失業率の平均値が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%ポイント上昇していたら、景気後退期と判断する。
とてもシンプルなのですが、過去の景気後退ではこのサームルールが良い感じに当てはまっているようです。
アメリカの次のリセッションまでの距離
さて、今月上旬に発表された5月のアメリカ雇用統計では、失業率が3.4%から3.7%に上昇していることがわかりました。
これにより、サームルールでアメリカの景気後退がどれだけ近づいたのかを調べてみようと思います。
次の図では過去3ヶ月の平均失業率を赤いグラフ、サームルールでリセッションに突入したと判断できる失業率の基準を灰色のグラフで描きました。
最新のデータを見ると、過去3ヶ月の平均失業率は3.53%どまりでした(赤いグラフ)。5月に失業率が上がったといっても、3月や4月の失業率が低かったことが足を引っ張ったのでしょう。
サームルールで、リセッションに突入したと判断できるには過去3ヶ月の失業率平均が3.9%を超える必要があるのですが(灰色のグラフ)、それにはまだまだ及ばないようです。
次回やその次の雇用統計で失業率が上がれば…
今は3月と4月の低い失業率が過去3ヶ月の平均失業率を引き下げているので、今後もわずかでも失業率が上昇すれば、すこし見える景色が変わるかもしれません。
(少し厳しい設定かもしれませんが、)もしも6月も7月も0.1%ずつ失業率が上がるとすれば、次のグラフのようにサームルールの基準にかなり近づくようになるはずです。
反対に言えば、0.1%ずつ上昇するような展開にでもならないと第3四半期でのアメリカのリセッション突入はないのかもしれません。
たった0.1%ポイントですが、次回失業率が上昇するかどうかは注目すべきデータになるはずです。失業率が変わらなかったり下がった場合には、「やはりまだまだアメリカのリセッションにはまだ時間がかかる」といういつも通りの結論になります。