米国株を投資している人達と何人かで話をした時に、違和感を感じることがあります。
「結局、米国株に投資するのは正解」という考えが、引っかかるのです。
私も米国株に投資をしていますが、「正解」と言えるほど自信はありません。
私は100歳くらいまで長生きしたいと思っているので、今後何十年もまだ投資をすることなります。その長い期間ずっと安心して「米国株の1択」で全資産を預けられるほど、米国株は安定した投資対象ではない気がします。
「基本的に投資は米国株で良いと思うけど、長期的に見ると一時的にリターンが大きく減る不安材料もあるかな」と思っています。ここでは、普段私が米国株を投資しながら感じているリスクについて書いていきます。
この記事のポイント
- 米国株の長期投資で気になるのは「景気後退」と「インフレ」の2つのリスク
- 米国株の平均リターンが7%と言っても、毎年7%上昇するわけではない。景気低迷期には株は下落する
- 米政府は債務を増やしているので、いつかは大幅なインフレとドル安が起こる。ドル安が起これば、米国株も米国債も下落する。
- 基本的には米国株を主軸にしつつも、景気低迷とインフレ時には米国株の保有比率を下げるのも手だと思う。
ただし、この記事で話す米国株のリスクの話は、どれも2-3ヶ月後で起こるようなものではありません。
一部の指標では、最速で2020年後半にも米国で景気後退が始まるとシグナルを送っていますが、正直そのような危機が近づいている実感は今のところないです。
2020年夏に米景気後退か。ニューヨーク連銀の予測モデルが警告。
2020年1月の米国の景気のデータを見る限りは景気後退もインフレも遠い印象を受けますが、リスクと対処法を頭に入れつつ投資したいと思っています。
米国株が正解という人の考え
冒頭の米国株に強気な人に、米国株に投資する理由を聞いてみると出てきたのは次のような意見です。
- 米国株はこの10年間で日本株のリターンを大きく超えている。
- 約100年の長期で見ても、米国株は歴史的に年間7%で上昇している。国債・金よりもはるかにリターンが良い。
- 日本は人口が減少するが、アメリカは今後も人口が増える。人口が増えて、経済発展をする国に投資したほうがいい。
これらの意見には全て賛成です。
そもそも私は昔からブログで初心者向けに書いている「はじめての投資」という記事に全部書いている内容だったので、「さては、このブログを読んでいるな?」と疑ったほどです。
冗談はさておき、私も基本的には米国株を投資の軸するスタイルをとっています。
ただ、それでも米国株に投資する上で気になるのは次の2点です。
- 景気後退期が来たときの株価の大きな下落
- 米国のインフレが起こすドル安で、米国株の価値が下がること
景気後退とインフレのリスク
当然のことですが100年間の7%の平均リターンが出たからと言って、毎年7%上昇するわけではありません。
リーマンショックの時には株価は最高値から半値まで落ち込んでいますし、1929年の景気低迷では最大で9割ほど下落した上に、25年間株価が1929年の最高値を超えられなかった時代もあります。
>>米国株投資で押さえておきたい数字シリーズ2:不況時の最大下落率編
同じようなことが、自分の投資人生の間に、再び起こらないとも限りません。
可能性の話をしたらキリがありませんが、米国株に自分の資産を100%投資するとは、こうした大きな低迷が起こらないことを祈りながら人生を送ることを意味します。
米国株は投資の選択肢として、とても良いと思うのですが、長い投資人生をずっと「米国株だけに投資すれば良い」というのは、少しリスクを取りすぎている気がします。
個人的には米国株との向き合い方は、「基本的に米国株に投資しつつ、景気の悪化やインフレ上昇など株が下落する兆候が見られたら、米国株の保有比率を少し下げて、他の資産にも分散投資して良いのかな」と感じています。
超長期的に見るとリターンの大きい米国株ですが、歴史を10年ごとに振り返ると米国株が低迷する時代もありました。米国の10年毎の経済の動きと株のリターンは、こちらの記事で詳しくまとめているので、時間がある時にご覧下さい。
【投資家向け】アメリカの経済史と資産のリターンを年代別に振り返る
歴史は繰り返すとよく言います。この記事では1920年代からのアメリカの経済史を振り返りながら、各時代で株・国債・金・商品のどの資産を持てばリターンを上げることが出来たのか数字を見ながら振り返ります。
上の記事を全部読むと流石に大変だと思うので、要点だけまとめたものを書いておきます。
- 米国が低成長の時代なら、株が売られて国債が買われる
- 米国がインフレ時代になると、株よりも金などの実物資産のほうがリターンが大きくなる。
米国のインフレ・ドル安のリスクの補足
長期で米国株に投資していると、「景気後退期」と「インフレ上昇時」にリスクがあるという話をしました。
ここではもう少しだけ、インフレのリスクについて補足します。
インフレ率は政府が借金(国債)を増やすと上がります。国が予算を使って世の中にたくさんお金を供給すれば、お金の価値が下がり、モノの値段が上がってインフレになるからです。
最近はレイ・ダリオやガンドラックなどの著名な投資家から、今後のアメリカは政府の借金が増えて、いつか急激なインフレが進むと警戒する声が上がっています。(それがいつなのかは、プロでもわからないようですが。)
今の米国政府は債務を増やしすぎている上に、もしも景気が悪化した場合には、既に金利が低い中央銀行には打つ手が限られているので、政府が国債をさらに増やして景気対策をするほかないと言います。この国債の発行しすぎが、いつか深刻なインフレを起こすというわけです。
米国のインフレが進めばドル安がおきて、ドル資産の米国株や米国債権の価値が下がります。
さて、ここで面倒なお知らせです。ドル安のリスクがあるなら円などのドル以外の資産を持っておけばいいかというと、そうも行きません。日本もヨーロッパもイギリスも米国と全く仕組みで、通貨安が進む恐れがあるので、円で資産を持っていても資産を守れない場合があります。
いつ起こるかわからないインフレ率の急上昇ですが、もしもいざ起こった場合には国の通貨に関係なく価値を持つ、金・不動産(REIT)・仮想通貨などの資産をポートフォリオの一部に組み込む検討をしたほうが良さそうです。
まとめ
米国株に投資している人間として、個人的な感想ですが、米国株は「それだけ100%投資していれば正解!」といえるほど、安定感ある投資先には感じていません。
やっぱり株はハイリスク・ハイリターンです。
長期的なリターンは魅力なので米国株は投資の軸にはなりますが、「景気悪化した場合」や「インフレ率が急に上昇した場合」には、柔軟に米国株の保有率を下げて、(景気悪化の場合)ポートフォリオの一部に国債、(インフレ時の場合には)金などの実物資産を加えることで、対応する選択肢もありだと思っています。