2024年にはアメリカはいよいよ利下げがあると言われています。
「利下げは株価にプラスに働くから、2024年は株価が上がる」とか「景気が悪くなるから利下げしているのだから、株価は景気につられて下がる」とか色々な考えが飛び交っています。
一体どっちなんだと思う人もいるはずなので、調べました。
結論としては「景気後退にならない時の利下げは株価上昇、景気後退になる時の利下げは株価下落」となります。
この記事のポイント
- 過去のアメリカで利下げをした後の株価の動きを調べた。
- 利下げをして12ヶ月以内にアメリカが景気後退に陥った場合には30%程度の株価下落をしていた。
- 利下げをしても景気後退に陥らないなら、利下げ後に株価は上昇する。
リセッション前があれば利下げしても株価は下落
既に結論を話してしまったので、あとは単なる確認作業になるのですが、データを眺めて見たいと思います。
1984年以降の6回の利下げ開始時について、利下げ後12ヶ月以内にリセッション(景気後退)が起こったかどうか、利下げ後12ヶ月でナスダック総合指数が上昇したか下落したかを調べたものが次の表です。
利下げ開始時期 | 利下げ後12ヶ月以内のリセッション有無 | 利下げ後12ヶ月間のナスダック上昇率 | |
---|---|---|---|
1984年9月 | なし | 12% | |
1989年6月 | なし | 6% | |
1995年7月 | なし | 18% | |
2001年1月 | あり | マイナス30% | |
2007年9月 | あり | マイナス23% | |
2019年8月 | あり | 48%(※コロナ時にマイナス30%) |
上の表をみると分かるのは、利下げして12ヶ月以内にリセッションが起こった場合には株価が30%近く下落するということです。
例外は2019年で、この時はリセッションが起こったにも関わらず利下げ1年後の株価が上昇しているように見えます。しかし、この時のリセッションはコロナショックのかなり短いもので、30%近い下落を経験した後に株価が復活しただけなので、結局はこの時も大きな下落を経験していることになります。
つまり、リセッションが起こってしまう場合には、利下げの株価上昇の力はあったとしても、リセッションによる株価下落の力が勝ってしまうようです。
この結論はちょうど1年くらい前にも書いた気がしますが、今回改めて調べる年代を広げてみても同じような結論になりました。
>>利上げ停止も利下げも株価を上昇させるが、景気後退にはかなわない(22年12月12日))
2024年の利下げについて
というわけで、2024年に予想されている利下げが株価を押し上げるかどうかは、2024年にアメリカが景気後退を回避できるか否かにかかっていると言えそうです。
ですが、私は残念ながら利下げ後12ヶ月以内にアメリカはリセッション(景気後退)になると思っています。
景気後退のシグナルはあらゆるところに見られます。
例えば、長短金利差からリセッションの兆候を読み取っているクリーブランド連銀は2024年4月にアメリカがリセッション入りする可能性を70%超えと見ています。
出典:Yield Curve and Predicted GDP Growth
「長短金利差は今回は当てにならない」という考える人もいるでしょうから、金利差以外にも多数の項目をウォッチしているアメリカの景気先行指数も見てみると、こちらも低迷していて景気後退のシグナルを出しています(下記事参照)。
また、景気後退になる時には鉱工業生産指数の伸びが前年比マイナスになることが知られているのですが、その鉱工業生産指数は既に前年比マイナスです。
そうは言ってもアメリカのGDPは2023年はまだ堅調に伸びているじゃないかと言えますが、長期的にはGDPとほとんど同じ動きをするGDIは既に伸びが止まっていることが確認できます。
今のアメリカは(一部の裕福な世帯を中心に)消費が堅調ですが、消費余力は全体的に低下しておりコロナ時にためた貯蓄は2024年半ばにも使い切る予定だというのは昨日書いた下の記事でとおりです。
というわけで、多くのデータが2024年のアメリカの景気後退を示しており、景気後退前に利下げが行われたとしても2024年の米国株の上昇は大きなトレンドにはならないのではないかと考えています。