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1970年代前半のアメリカの景気後退を調べて、気になったこと。

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もしも、これから数年以内にアメリカで景気後退(≒不況)が起こるとしたら、「パッと見でそこそこ売上は伸びているのに、調べてみたら物価が伸びているだけだった」というタイプになると思っています。

過去にこのような景気後退は1970年代にも見られました。

今の2020年のインフレ率の状況は1970年代と少し似ているので、ここでは1970年代前半の景気後退に注目して、当時のデータを振り返っていきたいと思います。

この記事のポイント

  • 次の景気後退は、名目GDPはそこそこ伸びていても物価がそれを上回った1970年代のような景気後退になるかも知れない。
  • その場合、株価がどこでピークをつけるかは心配。1970年は名目GDPの伸びが鈍化し、物価の伸びが大きくなったときに株価が下がり始めた。
  • 1970年代と同じような株価の動きが起こるなら、すでに米国株はピークをつけている恐れもある。

1970年代の景気後退の様子


最近のアメリカは7%超える物価の上昇に悩まされていますが、それ以前にこれほどの物価の上昇が起こったのは1970年代でした。

次のグラフは1970年代前半の消費者物価(青線)をグラフにしたものですが、消費者物価の青い線があっという間に上昇して最大で12%ほどにまで上昇しています。

上のグラフには名目GDP(緑線)も表示しているのですが、名目GDPの緑線を大きく超えるほどに物価の青線が伸びてしまっているのがわかります。

この逆転現象の時期には、いったい何が起こっているのでしょうか。

この時期の名目GDPは8%で伸びているので経済は成長しているように見えるのですが、実は物価が伸びていただけです。物価の上昇分を差し引くと、実質マイナス成長(景気後退)をしていた時期になります。

簡単に言うと、売上は伸びているけど物価の上昇が急すぎて景気が悪い状態です。

この1970年代に近いことが、今後数年のアメリカでも起こるのではないかと私は心配しています。

近年のアメリカの様子


次のグラフは、近年のアメリカの名目GDPと消費者物価をグラフにしたものです。

2020年に新型コロナウイルスの流行で景気が悪化した後は、現金給付や大規模な金融緩和のおかげもあって名目GDPが急成長しました。

でも、これからは景気対策の効果も薄れて、コロナ前の2010年代後半のような名目GDP成長率5%程度を目指してゆっくりと下がっていくことが予想されます。

一方で、物価は以前このブログでも書いたように、しばらく高い伸びが続く傾向があります。

>>2022年もアメリカの物価の高止まりが続く理由(2021年12月14日の記事)

このままいけば、1970年のように物価の伸びが名目GDPの伸びを上回るような逆転現象が起こる可能性もあります。

そうなるまでにはまだ時間がかかりますが、いざ起こったときにはアメリカは景気後退になるはずです。

個別企業の決算を追いかけると売上はそこそこ伸びているように見えるのに、利益も景気も悪いという状況になるかもしれません。

少し気になっていること


今回1970年代前半の様子を見ていて、少し気になったことがあります。

1970年代前半の米国株のピークについてです。

1970年代前半の景気後退前に、ナスダック総合指数の株価がどのような動きを見せたのかを赤線で追加してみたのが以下の図です。

赤線を目で追っていくと、この時代のナスダック総合指数は見事な下落をしていることがわかりますが、それ以上に気になったのは下落を始めたタイミングです。

ナスダックが下落し始めたのは景気後退から1年前。ちょうど名目GDP成長率が鈍化して、消費者物価が急上昇している時期です。

少しこじつけになりますが「名目GDPが鈍化するなら、売上成長率も鈍化しているはず」「物価が急上昇しているなら、企業のコストも上昇しているはず」と考えると、このタイミングは企業の利益成長率が鈍化し始めた時期だと見ることができます。

利益が減ったりするなら株は下がるはずなので、このタイミングでナスダックが下がったのも少し頷けます。

さて、問題は2022年の今のアメリカです。次のようになっています。

今のアメリカは、名目GDPの伸びはすでにピークをつけました。また、物価の急上昇もまだ続いています。

1970年代前半の株価の動きを今に当てはめると、そろそろ米国株がピークをつけていてもおかしくないことになります。そう思って再びナスダック総合の株価を見ていると、2022年1月をピークに下落しているのが、急に気になり始めます。

私は、今まで「米国株はまだピークをつけていない」と言ってきましたが、何か間違っているのかも知れないという不安に少し駆られます。


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