アメリカの中央銀行FRBのごく一部のメンバーから、金融緩和の縮小の話が出ています。
もしも毎月買っている国債の購入額を減らすとなると2013年以来のことになるので、現在と2013年を重ねる話をする機会も増えてきましたが、少し注意しておきたい点もあります。
2021年現在は状況こそ2013年に似ていますが、米国株の国債に対する割高度は2013年ではなく、既に2017年と同程度まで進んでいいます。
もしも今後FRBが金融緩和を縮小する動きを見せれば、株が20%近く急落した2018年末のようになるまで1-2年程度しかかからないかもしれません。
この記事のポイント
- 2013年には国債購入を減らしても、米国株はすぐには下落しなかった。国債購入の縮小や政策金利引き上げを進めても、2018年末までの5年間は株価は大きく崩れなかった。
- 2021年に金融緩和が縮小しても直ぐには株は下落してないと思っているが、以前のように株の下落まで5年も猶予はない恐れがある。
- 2021年6月現在で、既に米国株は米国債に対して2017年当時と同じ程度まで割高度が進んでいる。金融緩和の縮小が進めば、1-2年程度で株価が音を上げるかもしれない。
現在と2013年を重ねて見る動き
今後FRBが毎月買う米国債の金額を減らそうという動きになれば、2013年以来のことになるので、最近では2013年当時を振り返って現在と重ねる話をよく聞きます。
実際に私も2013年の株価を振り返って、当時は国債を買う金額を減らしても株価への悪影響は直ぐに現れなかったので、すぐに米国株の保有を大きく減らす必要はなさそうという話をしています。
2017年時に近い米国株の割高度
しかし、今の状況を2013年と全く同じようにとらえて、「金融緩和が終わっても2018年末まで株価が大きく下げなかったから、あと5-7年は米国株に投資して大丈夫」と考えるのも、少し違う気がしています。
2021年6月時点の米国株の割高度は、2013年ではなく既に2017年と同じ程度になっています。
これから金融緩和が縮小した場合は、米国株に2018年のような変調が見られるまで1-2年程度しか時間がかからない場合も十分あると思っています。
以下はロバート・シラー教授は毎月調べている米国株の国債に対する割高度をグラフ化したもので、グラフが下に行くほど米国株が割高と見ます。
これを見る限り、2017年と同じくらいに現在の米国株は割高になっていると言えます。
既に2017年と同じ程度の米国株の割高度のところに、金融緩和が縮小されればさらに割高になるので、2018年末のように株価が音を上げて下落するまでに5-7年も時間は必要なさそうです。
※上記グラフは米国株に投資して得られるはずのリターンが国債に対してどれだけ大きいか(超過CAPE利回り)を数値化したものです。詳しくは以下の記事を参照ください。
米国株全体の割高度合いの調べ方について【S&P500編】
あまり知られていませんが個別株だけではなく、S&P500などのインデックスでもPERを計算することができます。この記事では、米国株全体の割高度をどうやって調べるのかを書いていきます。
まとめ
2013年の米国株は金融緩和の縮小(国債購入の縮小)が始まってもすぐには下落しなかったので、2021年も緩和縮小後にすぐに株の下落を心配する必要はないと以前からこのブログでは書いてきました。
その考えに今も変わりはありませんが、2013年の状況と現在は全てが同じではないので、「株が下落する2018年末のような状況が来るまで5年程度は大丈夫」という考えは少し違うと思っています。
国債に対する米国株の割高度は、既に2017年夏と同程度まで進んでいるので、2018年末のような状況になるまでは1-2年程度しか時間がかからないかもしれません。
振り返ると2017年夏は、2021年とは違って既に国債の新規購入は停止され、政策金利もゼロ金利から約1%ほど引き上げられた状態でした。
そこから2018年末にかけて金利をさらに1.25%引き上げて2.50%になったところで株価は急落しましたが、同じような動きをするなら、2021年以降の利上げは1.25%程度までしか上げられないかもしれません。
米国株は以前よりも金融緩和に依存度を高めていて、耐えられる政策金利の水準がかなり低くなっている恐れがあります。