少し前のことなのですが、解釈に困ることがありました。
2つの別々の企業が発表したアメリカサービス業の7月分の景気指数が、1つはかなり悪く、もう一つはそこそこ良かったのです。
この記事のポイント
- S&P Globalが発表した7月分の米国サービス業の景気は悪かったが、ISMのものは予想外に強かった。
- ISMの7月分のデータだけを見ると、インフレ圧力は低下し、新規受注などの伸びは加速しているように見える。
- 単月で見ていると結果がブレることはある。2つの結果のどちらに収束していくのか、今後の動きに注目。
7月の米サービス業の景気
まず、悪かったデータから確認していきます。
S&P Globalが発表した米国サービス業の7月の景気は「景気悪化」を示しました。
50を超えたら「景気拡大」、50を下回ったら「景気悪化」を意味する数字で、7月のサービス業の景気指数は47.3を記録し、新型コロナ不況だった2020年5月以来の「景気悪化」の状況まで落ち込みました。
このデータを見ている限りでは、アメリカのサービス業は勢いよく悪化しているように見えます。
予想外に強かったISMのサービス業の景気指数
これに対して、投資家からの注目度が高いISMサービス業の景気指数は、予想外に強い数字が発表されました。
- 予想:53.6
- 結果:56.7
もちろん景気が強かった2021年の時期に比べると、景気拡大の勢いは低下しているのですが、先に速報値が発表されていたS&P Globalの低い数字を知っていた人はこの結果に驚いたはずです。
このISMの数字ですが、7月分のデータだけみると内容も良かったです。
まず、過去1年間ずっと問題視されていたインフレ圧力はだいぶ改善されているように見えます。支払価格の伸びは大きく鈍化して、供給遅延も解消されていることからもわかります。
一方で、新規受注は勢いが増すなど、ISMサービス業には景気の強さを感じる点がいくつか見られました。
ISMサービス業の7月分の結果を素直に読むなら、「インフレ圧力は低下し、景気はなおも強い」と言えそうです。
アメリカの景気が強くみえる一部のデータ
S&P Globalの数字とISMの数字で、7月分のサービス業の結果がかなり異なるのは、少し印象的でした。
調査した時期なのかそれとも対象企業の違いなのか、何が結果の違いを生んでいるのかわかりませんが、いずれこの2つの結果は1つの方向に収束していくはずなので、翌月以降も辛抱強く結果を追いかけたいと思います。
今後のアメリカは景気が悪化する方向に進むと私は思っているのですが、今回のISMサービス業指数のようにごくまれにアメリカの経済指標で予想外に強い数字が現れることがあるのも、気になっています。
未だにかなり強い数字が発表されている代表例は、アメリカの雇用統計です。
既に実質GDPはマイナス成長なのに、失業率は歴史的な低水準で、賃金上昇率もコロナ前に比べて強いというのは、かなり違和感があります。
この記事を書いている8月5日はアメリカの7月分の雇用統計の発表が予定されています。
このような一部の「景気の強いデータ」は、アメリカの景気後退を回避できると信じている投資家に自信を与え、私のような弱気派は投資リターンを下げることになるので、最近は雇用や景気のデータにかなり注目しています。