このブログでは1年前から言っているように、アメリカの景気後退はいずれやってくると思っています。
しかし、予想以上にアメリカの景気が強いため、まだその時期は訪れる気配は迫っていません。
ここでは、いくつかのデータを見ながらまだアメリカの景気後退は見えていない現状を確認していきます。
この記事のポイント
- 最近アメリカでの雇用の増加は弱まって来たとは言え、まだ失業者は増えていない。失業が増えないならリセッションはない。
- アメリカの失業率は7月に再び低下したために、景気後退時期は遠のいた。
- 現時点の失業者の増加ペースでは2023年内のリセッションはない。もしも、リセッションがあるとすれば、年内に金融引き締めの悪影響が企業利益に訪れる場合
雇用増加は鈍化しても、失業者は増えていない
先日、7月の雇用統計で雇用増加の伸びは鈍化してきたという話をしました。
>>7月米雇用統計はコロナ後の雇用急回復が落ち着いたことを示す
しかし、あくまでも「雇用増加ペースの鈍化」であって、失業者の増加ペースは増えてはいません。
実際に2021年1月以降のアメリカの失業者数を下図でグラフにしてみましたが、横ばい続きで増加傾向は見られません。
これを見る限りは、アメリカの雇用は一時期よりは弱まっているとは言え、まだまだ強い状態であることがわかります。
サームルール
失業者数のグラフを眺めるだけでは、やや見方が大雑把すぎるので、もう少しだけ細かくどれだけ景気後退に近づいているのか、データを眺めることにします。
アメリカで起こった過去の景気後退では、直近3ヶ月の失業率が過去12ヶ月の最低失業率を0.5%以上上回ると景気後退になるというリセッション突入の判断基準(サームルールという基準)があります。
数日までに公表された7月までの雇用統計のデータを使うと、リセッション突入するためには過去3ヶ月平均の失業率が3.9%を超えている必要がありますが、現時点で最新のデータは3.6%にとどまります。
上の表を見ると、アメリカのリセッションはそれほど遠くないように見えるかもしれませんが、3ヶ月平均の失業率が0.3%ポイント分上がるのはかなり時間がかかります。
最近3ヶ月では3ヶ月平均で失業率は0.1%ポイントしか上昇していないので、このペースでは2023年内のリセッションはなさそうです。
私は2023年内のリセッションを予想していましたが、どうもこのままでは予想は外れそうです。
失業者が増えない背景
なお、新規失業保険申請件数を見ていると、2022年後半から緩やかながら上昇はしています。
それでも先ほど見たように2022年3月から失業者数が変わっていないところを見ると、どうも人々は職を失っても仕事につけているように見えます。
この状況は、失業者よりも求人件数がかなり多い今の状況に変化がないかぎり続きそうです。
上の求人件数のグラフ(青線)を見ると、少しずつ求人件数は減っているのですが、まだまだ求人のほうがかなり多い状況は続いています。
さいごに
前日の記事では、アメリカの雇用の急増は影をひそめたという記事を書きました。
しかし、だからといって失業者が増えているというわけではないことをデータを見ながらこのブログで確認しました。
失業者が増えないのであれば、アメリカのリセッション突入はまだ迫っていないということになります。現時点では2023年のアメリカ景気後退入りの可能性は低いそうです。
もしも、失業者の増加が起こるような原因があるとするなら、それは何でしょうか。
3月の銀行危機のような何かのショックであればタイミングを予想するのはとても困難ですがが、金融引き締めが企業利益を押し下げる時期はそろそろ訪れるのではないかと思っています。
上のブログに書いたように、8月現在のアメリカ企業利益はまだFRBの金融引き締めの悪影響が及んでいないと私は思っているのですが、この悪影響が年内に訪れれば雇用は悪くなるかもしれません。
しかし、そうでなければ、2023年内のリセッションの可能性は低そうです。