多くの投資家の間では6月にアメリカの利上げが止まるという考えがあります。
次の焦点は利下げがいつから始まるかです。
2022年に見られたように利上げは株も国債も価格を下げる働きがありましたが、一方で利下げはそれらの価格を上げる働きがあり、投資家はその時期を待ちわびています。
待ちわびた利下げは市場のメインシナリオでは4ヶ月後の9月、早ければ2ヶ月後の7月にも開始されるようです。
この記事のポイント
- 市場の投資家は既に9月の利下げが起こると考えている。7月に利下げをする確率も
- 利下げが始まる理由は、インフレ退治が落ち着いたため。インフレは順調に低下しており、早々に5%の政策金利は不要になる。
- 問題はFRBの利下げが遅れる恐れがあること。対応が遅れて景気が悪化する可能性はわりと高い。
市場は9月の利下げを織り込んでいる
まだ、アメリカの政策金利の引き上げ停止もハッキリと決まっていないのに気が早いかもしれませんが、今回は利下げの話をしていきたいと思います。
FRBの話では利上げを停止してもインフレが収まるまで政策金利はしばらく高い状態を維持すると言っていますが、市場の投資家はそうは思っていないようです。
次のグラフは市場の予想をまとめたものですが、9月に利下げがあると見ています。
30%くらいですが7月にも利下げがあるという少数派の意見もあります。
要するに待望の利下げはあと2から4ヶ月ほどで訪れるようです。
既に高い金利は必要ない
どうして投資家たちはFRBの予想に反して、利下げを織り込んでいるのでしょうか。
素直な考え方をするなら、「今まではインフレをやっつけるために政策金利を高くしたが、その必要がなくなるから」という考えが頭に浮かびます。そして、この考え方は割と当たっている気がします。
先週、アメリカの4月までの消費者物価指数を見ながらインフレが順調に低下しているという話をしました。
下図はアメリカの消費者物価指数の前年比の伸びをグラフにしたものですが、最大で9%あった消費者物価指数は今では4.9%にまで低下しています。
>>待望の住居費の伸び鈍化、アメリカのインフレは順調に鈍化へ(23年5月11日)
さらにクリーブランド連銀が出しているアメリカの物価予想では5月分の数字を見ることができるのですが、5月には消費者物価指数が4.14%まで低下するようです。
このペースで物価が低下しているなら、5%の政策金利が不要になるまでにそう遠くないという考えは一理あります。だから、利下げは真夏か夏の終わりまでにやってくる可能性が十分あります。
問題はFRBの対応の遅さ
ただ、政策金利を決めるFRBの高官たちが利下げの対応に遅れて、利下げがなかなか実現しない恐れはあるかもしれません。
1970年代には早々と利下げをしてインフレの再燃を招いた失敗があったので、簡単に利下げをしてインフレを再燃させたくないとFRBは思っているはずです。
物価は急には動かないので物価目標の2%が見えてくる前に本来なら金利を下げる必要がありますが、今回のFRBにはそれが難しいと思われます。
本来なら利下げをするべきタイミングで対応が遅れれば。当然景気は冷やされすぎて景気後退がやってきます。
この展開になってしまった場合には、せっかくの利下げがあっても株価にとっては良い展開ではありません。
なので、今は利下げを期待して株を買うよりも、景気後退で株価が下がったところを買えるように準備をしておく必要があると思っています。