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上昇を続けた5月の米生産者物価、それを見て考えたこと。

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少し前のことになりますが、アメリカの5月分の生産者物価指数が発表されているので、この記事で振り返っておきたいと思います。

この発表は6月15日に終わっていて、その影響は株や商品(コモディティ)の価格にとっくに反映されています。(そしてそれは微々たるものでした。)

しかし、これからのアメリカでインフレの高止まりなどの予想以上の景気の過熱が見られれば、割高な米国株を支えている低金利の状態がいち早く終わる恐れもあることを考えると、生産者物価指数も毎月ちゃんと状況を把握しておいたほうが良い数字だと思うので、遅ればせながら取り上げます。

この記事のポイント

  • 5月の生産者物価は予想以上の上昇を見せた。前年比で6.6%しただけでなく、前月比でも年率10%超で上昇している。
  • ただし、やはり市場はこのインフレを一時的だと想定している。5年国債に織り込まれている予想インフレ率は2.3%しかない。
  • また、2022年の政策金利の引き上げの予想が強まっていることと合わせて考えると、「アメリカの中央銀行FRBが金利引き上げる必要はあるかもしれないがインフレは抑えられる」と市場は考えている模様。

急上昇を続けているアメリカの生産者物価


まず、5月のアメリカの生産者物価指数を確認しておきます。

5月は予想以上に物価が上がったようです。

アメリカの生産者物価(5月)

  • 前年比:6.6%(予想6.2%)
  • 前月比:0.8%(年率10.1%、予想0.5%)

改めて言う必要はないかもしれませんが、2021年に入ってからアメリカの物価は上がり続けています。生産者の物価だけでなく、消費者の物価も2021年に入ってから急上昇中です。

「前年の2020年4-5月に新型コロナウイルスの感染拡大で不況になったせいで、前年比で数字が高くなって見えているだけでは?」という指摘もあるかと思います。

なので2020年5月のデータとは比べない前月比(2021年4月比)のデータを見てみても、生産者物価は+0.8%(年率10.1%)で高い上昇率を見せています。

過去10年分のデータを遡ると、前月比の生産者物価指数は、ある1ヶ月間のデータだけ針のように高い上昇率を見せることはあるのですが、2021年では高い前月比が珍しくなくなっています。

アメリカの生産者物価指数(前年比年率)

あまりに投資の世界では言いたくない言葉ですが、「今までとは少し違うのかな」と感じるデータが続いているようです。

やはりインフレは一時的とみる市場


ただし、プロがひしめく市場の投資家たちは、今回のインフレ率上昇もやはり一時的だと思っているようです。

5年国債に織り込まれているインフレ率を調べてみても、わずか2.3%しかありません。

5年国債に織り込まれた期待インフレ率

出典:FRED

上の期待インフレ率(5年国債に織り込まれているインフレ予想)のグラフを見ても、2.3%なら過去10年間と比べても「やや高い」程度のものです。

市場の投資家はほとんどインフレが行き過ぎることを心配していないのだと思います。

ただし、そうは言っても何も手を打たないでインフレ率が収まるとは考えていないようです。先日書いた以下の記事でも話したように、FRBは思いの外早くに政策金利を引き上げるのではないかとの予想が市場で広がっています。

>>米市場の金利予想、2022年7月には利上げされる確率は40%

数ヶ月前まではインフレは一時的だろう、政策金利も長く低く保たれるだろうという見方が優勢でした。

しかし、最近の政策金利の引き上げ予想の前倒しを踏まえると、市場は「FRBが従来の予想よりも早く利上げをするかもしれないが、それならインフレは一時的で収まる」という見方に変わっているのかもしれません。


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