昨日の記事では、アメリカはハードランディング(不況)に向かうという話をしました。
一方で、現時点ではアメリカ経済は個人消費に支えられてかなり景気が良い状態だと言えます。
本当にこれからハードランディングに向かうのかと考えてしまいますが、強い消費を支えている雇用に少し変調の兆しが見られるので、消費減速は意外にもそれほど時間がかからないかもしれません。
この記事のポイント
- 7月の個人消費はとても強かった。この単月だけで第3四半期のアメリカの景気後退はないと思われるほどだった。
- しかし、コロナ流行初期にためた余分な貯蓄はほとんどを使い、FRBはインフレ退治のために雇用を冷やしていることから、消費はいずれ失速する。
- すでに予兆も現れている。一時的ではない失業者は前年比でプラスに転じた。これは景気後退前に見られる現象。
現時点でアメリカの消費は好調
少し前に7月の個人消費が発表になりました。アメリカの消費は絶好調だった模様です。
- 予想:前月比+0.7%
- 結果:同+0.8%
- 前回:同+0.5%から+0.6%に上方修正
前月比+0.8%と言われても成長を感じられないかもしれませんが、このペースが12ヶ月続けば(年率では)+9.9%成長を遂げる数字です。
「前月比で急成長しているように見えるのは、前月が弱かっただけでは?」と思うかもしれません。
しかし、前月の6月も前月比+0.6%(年率+7.8%)とかなりのハイペースの成長だったので、7月の成長率はアメリカの強い個人消費を表しているように思えます。
インフレを差し引いた実質でも7月は年率+7.1%のペースで成長しているので、これだけ成長していれば7-9月のアメリカの景気後退の可能性はなくなったと言えそうです。
消費はいずれ鈍化する
ここまで、今のアメリカ経済(≒消費)は強いという話をしてきました。
こんなに個人消費が強いのにこれからハードランディング(不況)が来るのかと疑問に思うところですが、問題は消費の持続性にあると思います。
簡単にいうと、所得と支出のバランスが合っていないです。
この数年は所得を上回るペースで支出を拡大させてきましたが、そろそろそのハイペースな支出も限界が近づいているように見えます。
今のペースでの消費は続かないという話は「コロナ流行時に蓄えた余分な貯蓄がなくなる」という文脈でも聞いたことがある人がいると思います。
コロナが流行して自粛をしている間は消費をしたくてもできなかった上に政府から手当があって今までは余分な貯蓄ができました。経済再開後は、その余剰分を使ってハイペースな消費が続きましたが、そろそろ余分な貯蓄を使い果たすと言われています。
そうなれば、ハイペースな消費ができるボーナス期間もまもなく終わることになります。
加えて、今はFRBパウエル議長が多少雇用を弱くして(失業率を増加させて)インフレを退治しようとしています。
(他に金融危機などの何かしらののショックが起こらなければ)インフレ退治が成功するまで金融引き締めは続き、失業率はどこかで上昇することになります。失業者が増えれば消費は減速するので、やはり高い確率で消費のペースは鈍化する時期が来るはずです。
消費減速の時期は意外に早いかもしれない
問題は失業者が増える時期(消費は減速する時期)はいつかです。
下の図を見ると企業はすでに人員削減をしています。
また、その影響を受けてか「一時的ではない失業者」も前年比で増え始めています(下図)。
上の図を見るとわかるように、「一時的ではない失業者」が増え始めると景気後退期(灰色の期間)が近いことを意味します。
失業者の動きを見ていると、消費減速の時期は少しずつ近づいているようにも見えます。