先日、9月のアメリカの景気先行指数が発表されたので、結果を確認していきます。
このデータを見る限りやはりアメリカの景気の先行きは暗いように見えます。
2023年は想像以上にアメリカの景気が粘り強く拡大を続けましたが、だからと言って前年から続く急速な金融引き締めにも関わらず景気が悪化しないと考えるのは難しい気がします。
まだ景気悪化がはじまっていないだけで、やはりいずれどこかで景気は悪化するはずです。失業者はまだ増えていませんが、そろそろ増えるという声もあるので注意深くデータを見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- アメリカの景気先行指数は予想を下回って低迷が続いた。2022年4月から景気悪化の兆候を示す前月比マイナスが続く。
- データ発表元のカンファレンスボードは今の強いアメリカの景気を認めつつも、2024年前半のリセッション入りの予想を変えていない。
低迷が続く景気先行指数
景気先行指数はアメリカ経済の先行きが明るいか暗いかを見通す数字です。
すでに発表された9月の経済指標から景気の先行きを示すもの(例えば、新規受注、建築許可数、週平均労働時間や新規失業保険申請件数など)を抽出して数値化して、毎月1回カンファレンスボードという組織が景気先行指数として発表しています。
この数字をしばらく前から見ている人なら知っている通り、アメリカの景気先行指数はもう2年近くずっと低迷が続いています。
そして、10月の数字もまたかなり悪いデータが発表されたようです。
- 予想:-0.4%
- 結果:-0.7%
- 前回修正:-0.4%から-0.5%への下方修正
過去2年間の景気先行指数の推移がこちらです。マイナスになると先行きが暗いことを示すのですが、2021年4月からずっとマイナス圏を抜け出せずにいます。
アメリカの景気景気後退について
これだけのマイナスが長続きするなら、当然アメリカの景気悪化が心配されます。
景気先行指数の前年比(下図)はとっくに過去のリセッションの水準にまで低下していて、いつ経済の縮小が始まってもおかしくないように見えます。
データ発表元のカンファレンスボードも、2024年前半には浅い景気後退に陥る可能性が高いとコメントを出し続けています。
これまでの米国経済は金利の上昇と高いインフレにもかかわらず、かなりの回復力を示してきた。しかし、カンファレンスボードはこの傾向が長くは続かずに、2024年前半には浅いリセッション(景気後退)に陥る可能性が高いと予測している。
ちなみに、カンファレンスボードによるアメリカのリセッション予想はもともとは2022年末だったのですが、アメリカの強い景気の壁に阻まれて予想は2024年前半にまで先延ばしされています。
私も2023年前半のアメリカのリセッションを予想していたので、カンファレンスボードの気持ちは痛いほどよくわかります。まさか、こんなにもアメリカの景気が長持ちするとは思っても見ませんでした。
この景気を支えてきたのは強い雇用ですが、そろそろ(1-2ヶ月以内にも)失業者も増えるのではないかという声が聞かれ始めています。
まだ新規失業保険申請件数は伸びていないのですが、WARN(集団的解雇の事前予告の規制)のデータを見ているとそろそろ失業者が急増するのではないかという憶測が飛び交っています。
2023年のアメリカの景気はたしかに強いですが、強い金融引き締めをしておきながらリセッションを回避できるとは私は思っていません。
その時期がいつ来るのかを知るために、まもなく失業者の急増が始まるのかを注目したいと思います。