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【2019年12月ISM製造業指数】浮上のきっかけを掴めない米製造業。

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2020年の年初の相場は順調なスタートを切ったという趣旨の記事を昨日書きましたが、わずか1日で状況は良くない方向に少し暗転したようです。

1つはアメリカがイランの司令官を空爆で殺害したというニュース。ずいぶんと手荒な話ですね。イランはアメリカに報復をすると宣言していて、しばらくアメリカとイランとの間で緊張が続くことになりそうです。

このニュースを受けて、株は売られて安全資産の金と国債が買われる展開になっていますが、アメリカもイラクも戦争はしたくないと意思表明をしているので、言葉通り信じるなら過度な心配はしなくて良さそうです。短期に収束する可能性もあるので、しばらく様子見と言ったムードです。

私が心配しているのは、昨晩のもう一つの株の売り材料になったアメリカの製造業の不振です。世界の製造業と同じく、一時は底打ちをしはじめたようにも見えたアメリカの製造業ですが、まだ浮上のきっかけがつかめずにいるようです。

この記事のポイント

  • アメリカ製造業の景況感をアンケート調査したISM製造業指数(12月分)は5ヶ月連続で、景気悪化を示す50を下回った。
  • 12月は、前月より改善するとの事前予想を大きく下回った。製造業の景気は前月より悪化ペースが増した。

予想外に悪化した12月のアメリカ製造業景況指数

アメリカの製造業350社の仕入れ担当者に景気のアンケートを取って集計したものが、毎月ISM製造業指数として発表されています。しかし、この数字がよくありません。

12月分の結果は、予想を下回る低調ぶりでした。50を下回ると景気が悪化していることを示すのですが、これで5ヶ月連続で節目の50を下回っています。

  • 予想:49.0
  • 結果:予想を下回る47.2(前月48.1よりも悪化)

以下は直近2年間のISM製造業指数の推移ですが、浮上するきっかけが掴めていないように見えます。グラフはきれいな右肩下がりです。

今月の景気を表す47.2という数字は、2009年6月以来の10年ぶりの低迷です。株式市場はISM製造業指数の結果よりも、イラクとの争いに反応しているように見えますが、私はアメリカの製造業は本当に景気が良くないんだろうなと勝手に想像しています。

ほぼ全業種の製造業の景気が悪化。生産活動が大きく縮小した12月


せっかくなので、製造業の何が一体そんなに不調なのか、もう少しだけ触れておきます。

前月よりも悪化したのは18業種中15種のほとんどすべての業種で悪化。工程の内訳では、新規受注と生産が2009年4月以来の低水準でした。特に生産活動は、11月から12月に大きく落ち込んだようです。

新規受注も受注残も前月より悪化しているので、生産活動が縮小するのは当然かも知れません。

それでもやや気になるのは、生産活動の縮小だけでなく、製造業の雇用も悪化し始めていることです。雇用環境が悪化していないかは、後日発表される雇用統計でも確認したほうが良さそうです。

Index 2019年12月 2019年11月 前月比
PMI製造業指数 47.2 48.1 -0.9
新規受注 46.8 47.2 -0.4
生産 43.2 49.1 -5.9
雇用 45.1 46.6 -1.5
入荷遅延 54.6 52 2.6
在庫 46.5 45.5 1
顧客在庫 41.1 45 -3.9
仕入価格 51.7 46.7 5
受注残 43.3 43 0.3
輸出受注 47.3 47.9 -0.6
輸入 48.8 48.3 0.5

製造業の不振がアメリカ経済に影響を与えるかどうかのポイントは雇用

さて、ここまでアメリカで製造業の調子が良くないですよという話をしてきましたが、実は市場はイラクの影に隠れた形になって、今回のISM指数の不振にはさほど注意を払っていません。

また、シカゴ連銀の総裁は「製造業活動が若干縮小しつつある状況でも経済は成長を続けられるということが分かっており、現在のところ経済は非常に底堅いと期待している」とアメリカの景気に自信を持っています。

製造業が不振でも、アメリカの景気に自信を見せている理由には、製造業がGDPに占める割合が約10%と小さいことがあります。製造業だけ不振になったとしても、全体から見たらそんなに影響はないだろうという考えです。

製造業の雇用が悪化しない限り、この考えは正しいと思います。ただ、もしも雇用が悪化すれば、個人は消費を急速に縮小して節約をしはじめます。そうなると消費の縮小は、今度はアメリカ経済を支えている好調なサービス業にも影響を与える恐れがあります。

今はまだ製造業のだけの不振にとどまっている小さなほころびですが、この穴が大きくなるかどうかのポイントは雇用が悪化するかどうかです。

2019年11月までは少くとも雇用環境が悪化する兆候は見られませんでした。雇用環境の好調をちゃんと維持できているかどうか、1月10日の雇用統計の発表に注目が集まります。


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