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データで見るアメリカのインフレが一時的ではなさそうな根拠

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最近は「アメリカのインフレは一時的ではない」という見方が増えてきました。

少し前を思い返すと、8月末にFRBのパウエル議長は、ジャクソンホールの講演の中でインフレが一時的だと考える理由を5つ説明していました。

当時のデータを見ると「インフレは一時的」と言えそうですが、それから3ヶ月たって11月現在は世の中も少し変化が見られ、今では5つの理由が揺らいでいるように見えます。

この記事ではパウエル議長が示した5つの理由を振り返り、11月時点でもなお「インフレが一時的ではない」と言えるかを見ていきます。

パウエル議長が示したインフレが一時的な理由の5つ

  • (1)物価上昇が見られるのは一部のモノ・サービスに限られる
  • (2)上昇した価格はじきに収まり2%に近づく。
  • (3)インフレを心配するような高い賃金上昇は起こっていない。
  • (4)長期のインフレ率予想は高くない。
  • (5)世界的に長期のデフレ傾向が続いている。

(1)物価の上昇の広がりについて


パウエル議長がインフレが一時的と判断する根拠として初めに触れていたのは、物価上昇が一部のモノ・サービスに限られている点です。

たしかに講演までの数カ月間は中古車、エネルギー、ホテル代、航空券など一部の価格が急上昇していました。

特定のモノだけ物価が大きく変動している場合に、FRBでは物価が急上昇(または急低下)しているモノを取り除いて計算したインフレ率(Trimmed Mean PCE Inflation Rate)を見ることがあるのですが、7月までのデータを見るとこの数字はちょうど目標の前年比2.0%でした。

しかし、その講演後にこの数字は急上昇して13年ぶりの水準になっています。


出典:FRED

数字はまだそこまで高くないですが、物価の上昇は一部のモノだけでなく幅広いモノに広がっているようです。

(2)物価上昇の収束について

このままではかなりの長文になりそうなので、残りの検証はスピードアップしていきます。

インフレが一時的としたパウエル議長の2つ目の理由は、それまでに急上昇していた一部のモノの価格が落ち着き始めていて、その傾向が続けばインフレは一時的に終わるというものでした。

たとえば、7月の中古車の価格の変動を見てみると落ち着き始めていました。

しかし、最新のデータを最近は中古車の値上がりは再加速しています。


出典:FRED

これを見る限り、パウエル議長が思っていたよりも物価は長く上昇するようです。

(3)賃金上昇について

平均賃金が大きく上昇し続けると、高いインフレ率が長続きしてしまう恐れがあるのですが、7月時点のパウエル議長の見解では目標のインフレ率2%にそった賃金上昇が続いているという見方でした。

パウエル議長はアトランタ連銀の賃金トラッカーを見て、インフレは長期化しないと言っていますが、この値は8月のパウエル議長の講演後も上昇傾向が続いています。


出典:アトランタ連銀

別のデータで最近の賃金上昇を見てみると、物価と同じように賃金も年率5%を超えるペースで上がっている月が多いので、このまま行くと目標の2%を超えた高い数字でインフレ率が安定する恐れがあります。

(4)長期のインフレ率予想について

「市場の長期のインフレ率予想を見ると、投資家もインフレを心配していないはずだ」とパウエル議長は話していました。

しかし、講演からわずか3ヶ月で市場の投資家はインフレ予想をだいぶ上方修正したようです。


出典:FRED

インフレが一時的という根拠は、ここでも弱まっています。

さいごに

この記事では、ジャクソンホールでパウエル議長が「インフレは一時的」と考える5つの根拠をおさらいし、今でもそう言えるかどうかを見てきました。

最後の「(5)世界中で長期的なデフレ傾向が続いている」現象が終わったかどうかは、何年か経ってデータが得られないと確認できないのですが、5つの根拠のうち4つは状況が悪化していて、インフレが長続きするかも知れない懸念が広がっています。

こうした背景もあって、最近では一部のFRBメンバーはインフレを警戒して、予定よりも早く金融緩和を引き上げようとする意見が出ているようです。

>>FRBで進むテーパリング加速の議論、市場はまだ織り込んでいない模様。


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