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アメリカのインフレは収束に向かっている

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8月のアメリカの賃金のデータを見返していたのですが、どうもアメリカのインフレは収束に向かっているように見えます。

1月に書いたブログを掘り返しながら、賃金の伸びが鍵となる5%を下回ったことに触れつつ、賃金以外のインフレ要因も解決の出口が見えていることを書いていきます。

この記事のポイント

  • 製造業の非管理職の賃金の伸びが5%を下回ったことで1970年代のインフレ期は収束した。
  • 2023年8月すでに前年比4.5%まで下がり、前月比では年率2.6%まで下がっている。
  • サプライチェーン、人手不足などの供給側のインフレ要因は出口が見え始めた。あとは、金融引き締めで需要を抑え込めばアメリカは低インフレに向かう。

賃金の伸びの鈍化

今年の1月に賃金の伸びが5%を安定して下回ったら、70年代の高いインフレが収束したと書きました。

>>アメリカのインフレ再燃は防げるかも知れない(2023年1月8日)

もう少し正確に言うと、製造業の非管理職の賃金の伸び(前年比)が5%を下回ったことで、高インフレ時代は終わったというものです。

上のグラフを見ると、たしかに70年代に続いた10年間のインフレは「賃金上昇率が5%を下回ること」で収束したと言えそうです。

そして、最近になって久々に製造業の非管理職の賃金を見てみたのですが、まだまだ高いものの、賃金の伸びはしっかりと5%を下回っているようです。

上のグラフは前年比で12ヶ月分のデータが反映されたものですが、毎月賃金上昇のペースは落ちています。

下のグラフを見ると8月は前月比で年率2.6%のペースにまで低下しているので、この傾向が続くならアメリカのインフレ鈍化に大きく貢献しそうです。

インフレ圧力の変化

というわけで、長期的なインフレの原因になりそうな賃金上昇は今のところ無事に抑えられていることがわかりました。

この数年間でアメリカにはさまざまなインフレの要因が登場しましたが、どれも一段落つきそうな気配を感じます。

  • (1)サプライチェーン
  • (2)人手不足と賃金上昇:
  • (3)現金給付と経済再開:
  • (4)コモディティ価格

まず、昨年まで聞かれていた半導体不足などの(1)サプライチェーンの問題は今ではまったく話題に登らなくなり、元通りになったことに異論はないと思います。

以下のISMが発表している供給遅延指数を見ても、物資の納入の遅れは発生していないことがわかります。

加えて、2020年の新型コロナ流行後は(2)人手不足で賃金上昇が起こっていましたが、これも解決しつつあるというのは上で書いたとおりです。

まだ企業の求人件数は多いのですが、それでもこの数年は移民が増えているためにコロナ前の労働人口をすでに300万人上回って人手不足は解消に向かいつつあります。

このペースなら2024年の早い時期には求人率もコロナ前に戻り、人手不足と賃金上昇は解決すると思われます。

以上、(1)(2)で物資と人材の供給側のインフレ要因はかなり解決に向かっていると言えそうです。

需要の抑え込み

それなら、あとはFRBが得意とする金融引き締めでアメリカの消費の需要を抑え込むだけです。

今までパンデミック時に貯めた余分な貯蓄を使って(3)アメリカの個人消費はかなり強い伸びを示していましたが、その余力もあとわずかなようです。

>>コロナ余剰貯蓄、なお残っているのは米所得上位20%のみ-FRB調査(ブルームバーグ)

アメリカの7-9月期は個人消費は強いと言われていますが、10月以降はさすがに少しずつ消費の伸びが鈍化して2024年前半の景気後退へと向かうのではないかと思っています。

そろそろ2022年から始めた金融引き締めの効果が出始める時期が近づいていること、7-9月期にもパンデミック時の余剰貯蓄がなくなると言われていること、10月から延期されていた学生ローンの支払い義務が再開されることが10月以降の消費鈍化を考える要因です。

そうなれば、今アメリカで最後のインフレ要因として居座っている(4)原油価格の上昇も、需要の低下とともに落ち着きを見せる可能性はあります。

長々書きましたが、さまざまなインフレの要因はようやく決着の目処がついてきたように思います。


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