昨日の記事ではアメリカのインフレは鈍化しつつあり、利上げ停止が迫っているという話をしました。
いろんな直近の経済指標を見ても、アメリカのインフレ率はまだ低下するだろうと思うのですが、もう1年以上先の少しだけ未来の話になると少し心配になる点があります。
最近はアメリカの住宅価格価格の低下が止まってしまったようにも見えるので、ここで取り上げたいと思います。
この記事のポイント
- ケースシラー指数でもZillow指数でもアメリカの住宅価格の低下が終わり、反転して上昇し始めた様子が見られる。
- 住宅価格の上昇が消費者物価を押し上げるには約1年以上のタイムラグがあるため、すぐにインフレの再燃を心配する必要はない。
- しかし、2024年半ばにも住宅価格の上昇が再び消費者物価を押し上げるかもしれない点には注意。
低下がとまったアメリカの住宅価格
先週、ケースシラー住宅価格指数というアメリカの住宅価格を示すデータが発表になりました。
この結果は少し注意して見ておいたほうが良いかもしれません。
2022年7月からずっとアメリカの住宅価格は前月よりも安くなっていたのですが、2月は約半年ぶりに前月よりも住宅価格が上昇してしまいました。
住宅価格の上昇は、時間をかけてアメリカのインフレを押し上げる効果があります。
なので、2月に住宅価格が上昇に転じてしまったことは未来のアメリカのインフレ再燃を警戒する材料となりえます。
3月も住宅価格上昇の傾向
上のケースシラー住宅価格指数の伸びのグラフを見ると、「まだわずか1ヶ月住宅価格が上昇しただけだし、これから住宅価格が下がるトレンドに逆戻りするかもしれない」という見方もできるかもしれません。
ですが、その考えは少しだけ楽観的すぎるかもしれません。
4月末の時点で、ケースシラーは2月分のデータまでしか公開されていませんが、3月分のデータも公開されている別のデータも見てみると2月も3月も住宅価格が上がっている様子が見えてくるからです。
次のグラフはZillow住宅価格指数の伸びを示したものですが、3月は2月よりも住宅価格の伸びが大きくなっています。
これを見る限り、どうも2月だけでなく3月でも大きな住宅価格の上昇があったのではないかと考えてしまいます。
アメリカのインフレは当面は低下だが
ここまで、アメリカの住宅価格がどうも2月や3月に上昇に転じているのではないかという話をしました。
住宅価格が上昇するなら、やがてアメリカのインフレ率を押し上げることになるかもしれません。
そうなると「昨日のブログでアメリカのインフレは低下すると言った内容と矛盾するのではないか」という疑問も出てきそうなので、最後に少し整理したいと思います。
まず、住宅価格がアメリカの消費者物価に影響を与えるには1年以上のタイムラグがあると言うことです。
なので、「今から1年間」と「1年後以降」で次のような反対の動きが見られるはずです。
- 今から1年間くらい:2022年からの住宅価格低下の影響を受けて、消費者物価の伸びは低下。
- 1年後以降:23年2月以降の住宅価格の上昇の影響を受けて、消費者物価の伸びは上昇。
やはりこれからしばらく1年くらいの間は、アメリカのインフレの伸びは低下するのだろうと思います。これは昨日のブログでも書いたとおりです。
しかし、もしもこのブログにも書いたようにこれから住宅価格の伸びが大きくなるなら、2024年半ば以降にも住宅価格が上がった影響で消費者物価の伸びが上昇するかもしれないと少し心配しています。