まだ、6月の雇用統計の前なのですが、昨晩はアメリカの雇用に関する他のデータが既にいくつか発表されています。
結果はどれも雇用の強さをアピールするものになりました。
アメリカのリセッション突入を待ってから米国株に投資をしようと思っている私にとっては、その兆候がまだ感じられないデータになっています。まだ今年の投資は苦戦しそうです。
景気拡大期の後半にはこうした雇用の強い状態は見られるものなので、今はまだとにかく「待ち」の投資が続きそうです。
この記事のポイント
- ADP民間雇用統計では、6月に雇用者が予想を大きく上回って増加したことがわかった。
- 人員削減数も5月から6月にかけて大きく減少した。まだ増加トレンドではあるものの、その勢いは衰えた。
- 最新の新規失業保険申請件数も予想よりは増えているものの、そのペースは鈍化した。
予想以上に好調なアメリカの雇用
6月のアメリカの雇用はとても強かったようです。
政府発表の雇用統計の数日前には、給与計算などを行うADP社から雇用レポートが発表されるのですが、6月の雇用の増加数は驚くほど大きかったです。
- 予想:24.1万人
- 結果:49.7万人
雇用者の増加は予想の2倍を上回っていました。
内訳を見てみると、どうもレジャー娯楽関連で大きな雇用の伸びが起こっているようです。製造業やITや金融では雇用の減少は起こっているのですが、それらを補ってあまりある雇用の増分を生み出している模様です。
先日の記事で、「政府発表の非農業部門雇用者数だけが強い」はやや不自然だという話をしましたが、ADPの民間雇用統計も強い雇用データが出たことで、やはりアメリカの雇用は強いという結論になりそうです。
人員削減数も減少
また、6月は人員削減も減少したようです。
先月まではIT業界を中心に大きな人員削減が起こっていたのですが、どうもそれらが一段落したのかも知れません。
人員削減が増加しているトレンドはまだ終わってはいませんが、6月にペースが鈍化したことは確かなようです。
そうした影響もあってか、新規失業保険の申請件数も増加ペースが最近は落ちています。
過去3回のリセッション突入時に記録してた35万人の新規失業保険申請件数の水準を超える時期は、先週までのペースなら2024年第1四半期だったはずですが、今のペースでは2024年4月となっています。
この雇用の強さを受けて、市場の投資家も2024年5月まで利下げがないという予想に変えつつあるようです。
なるほど、景気後退に備えた私の投資はとことん長い「待ち」の状態が続くようです。悲しいことですが、2023年の投資のリターンは見込めないかも知れません。
2022年も2023年も散々な結果ですが、こういう年もあるのだと割り切るしかありません。
雇用が強くてもアメリカはリセッションに向かっている
6月も雇用が強そうなデータが増えていることで、案の定「アメリカはリセッションにはならない」という論調が勢いづいていますが、それはないと思います。
「ゆっくりながらも増加する失業者」、「製造業の苦戦」、「賃金の伸びの鈍化と貯蓄率の増加」、「冷え込んでいる銀行の貸出」、「長期化する金融引き締め」、「長短金利差の逆転」など、いくつもの状況がリセッションに向かっていることを示しています。
では、今の雇用の強さは何なのかという話ですが、これも景気拡大期の後半に見られる動きです。
要は家計が苦しくなってきたので、今まで働いていない人々が働きに出たり、複数の仕事をこなす動きが見られているのだと思います。
予想を大幅に上回る6月の雇用データを発表したADPのチーフエコノミストも次のようなコメントを出しています。
消費者向けのサービス業界で6月は雇用の強い月となり、雇用者数の増加を押し上げる結果になりました。しかし、この業界では賃金上昇が引き続き鈍化しており、採用の増加は景気拡大期後半に見られる急増を迎えた後はピークに近づくでしょう。
彼女もまた、今の強い雇用のデータを見ながらも景気サイクルの終盤を感じているように聞こえます。
以上をまとめると、6月のアメリカの雇用は予想以上にまだ強くリセッションはまだ迫ってはいませんが、それはアメリカのリセッションが来ないという意味ではなく、典型的な景気サイクルの後半の動きになっているのだと思います。