2022年に下落している米国株ですが、今から振り返ると「このデータを見ておけば、下落にいち早く気づけたのに」と思うことがあります。
この記事では、ハイイールド債(低格付け社債、ジャンク債とも呼ばれる)の値動きを見ていきます。
このハイイールド債はS&P500やナスダックなどの米国株指数よりも数ヶ月も前に下落が始まっていたようです。
今までそれほど注意してみていなかった数字なのですが、これからはもう少し意識して見ていこうと思います。
この記事のポイント
- S&P500は2022年1月、ナスダックは2021年11月に最高値をつけて下落に転じたが、ハイイールド債はそれより早く2021年9月に下落に転じていた。
- 今回だけではなく過去にも、米国株に先がけて売られることが多かった。
先行して下落していたハイイールド債
債券投資家は株式投資家よりも悲観的で、景気が悪化する予兆を感じ取ると敏感に察知すると言われています。
債券の中でもハイイールド債は景気が悪くなりそうになるとすぐに売られる傾向があるのですが、最近のハイイールド債の価格がどのように動いていたのかを確認して行きます。
以下の図を見ると、ハイイールド債(青線)は2021年9月にピークをつけてから売られ始めていますが、これはナスダック総合指数(赤線)が2021年11月にピークをつけるよりも2ヶ月も早く下落が始まっていることになります。
過去の下落もハイイールド債の下落の先行が見られた
今回に限らず、過去の株価の下落時にもハイイールド債の下落が先行していたかを確認していきます。
次の図は、前回の利上げ時の最終局面(2018年末)に見られた株価の下落ですが、こちらもハイイールド債が株価に先行して下落しています。
また、リーマンショック時にもハイイールド債は先行して下落していたようです。
あまりうまく行かなかったケースも拾ってみると、新型コロナウイルス流行初期(2022年2月から3月)はハイイールド債は株価とほぼ同時に下落しているので、先行指標としては使えませんでした。新型コロナウイルスは多くの投資家にとって不測の事態だったので、これは仕方ないかも知れません。
また、ヨーロッパの債務危機、中国景気減速、ブレグジットなどで揺れた2015年から2016年頃にはハイイールド債は先行して大きく下落したものの、株価の下落は割と小規模(10%前後)でした。
まれに先行指標としてうまく使えない場面もあるものの、ハイイールド債の危険を察知する能力はなかなか高そうです。