2023年10-12月期のアメリカの実質GDP成長率が発表になりました。
結果が予想以上に強かったのは驚きですが、GDPのデータを眺めていたら2023年にアメリカの景気が強かった理由が少しわかった気がします。
もったいぶらずに結論を言うと、アメリカ政府がたくさん支出しているように見えます。
この記事のポイント
- 2023年10-12月期のGDP成長率は予想を大幅に上回った。
- 2023年にアメリカ経済が好調だった背景には、米政府の支出と雇用政策が見え隠れする。
- 2023年のアメリカ政府の支出の伸びは前年比でリーマンショック時を超えている。
強かった2023年のアメリカ経済
2023年10-12月のアメリカの経済成長率ですが、とても高かったです。
- 予想:前期比年率2.0%
- 結果:同3.3%
- 前回:同4.9%
1年ほど前までは10-12月期あたりにはアメリカは景気後退に陥っているのではないかという憶測もあったのですが、そんな様子を跳ねのけるような高い成長率となりました。
どうして、予想されていた2023年のアメリカの景気後退は起きなかったのでしょうか。
コロナ時にためた余剰貯蓄があったからという理由は既にこのブログで話していますが、どうもアメリカ政府が景気を支えているのではないかと思うデータが見え隠れしてきます。
すでに景気後退時に並みに支出を増やすアメリカ政府
GDPは「消費」「民間投資」「政府支出」「純輸出」に分けれますが、このうち変動が大きい純輸出をのぞいて前年比の成長率をくらべたのが下のグラフです。
こうしてみると、緑色の政府支出が2023年はよく伸びていたことがわかります。
どの程度の伸び(前年比)だったのかを過去のデータとくらべてみると、2000年のコロナショックや2000年のITバブル崩壊時にはわずかに劣り、リーマンショック後にまさる規模になっていることがわかります。
2023年はアメリカの金利が上がるたびに政府の利払いの額に注目が集まりましたが、そもそも赤字になっている背景として必死にアメリカの景気を維持していたのかもしれません。
アメリカ政府の支出以外にもバイデン大統領の政策を色濃く感じたのは、民間投資の中の「住宅を除く建造物(Structure)」です。こちらの伸びも、2023年第1四半期に10年ぶりの高水準を記録しました。
バイデン大統領は製造業の国内回帰を訴えて、米国の工場で生産を促す法案を通してきました。(背景にあるのは脱中国のサプライチェーンと選挙戦のための雇用創出です)
バイデン氏「米国で生産せよ」 24年大統領選へ雇用前面(日経新聞)
工場新設などの動きが「住宅を除く建造物(Structure)」を押し上げたのだろうと思います。
さいごに
2023年のアメリカGDPはすこぶる好調でした。
その背景をデータから探ってみると、どうもアメリカ政府が景気悪化を防ごうと力を入れている様子が見えてきました。
たしかに、政府支出や民間投資の「非住居の建造物」の項目はアメリカのGDP全体に占める比重は高くありませんが、政府支出やバイデン大統領の法案が製造業や建設業の雇用をささえて個人消費もいくらか押し上げられたことが推測できます。
2023年のアメリカの景気のしぶとさは、コロナ流行時の超過貯蓄だけではなさそうだというのが見えてきました。