予想を大幅に上回った米GDP成長率のカラクリ

少し前のことですがアメリカで2021年第４四半期(10-12月)のGDP成長率が発表されたので、それについて書いておきたいと思います。

結果は既に知っている人も多いと思いますが、予想よりもかなり良い数字が出たことでニュースになっていました。

ただ、私はGDP成長率の内訳を見た上で「楽観視はまだできない」と少し懐疑的な見方をしています。

この記事のポイント

• 2021年第４四半期のアメリカのGDP成長率は+6.9%で、かなり良い数字だった。エコノミストの予想も大きく上回った。
• しかし、内訳を見てみるとGDP成長にもっとも大きく貢献したのは在庫の増加分だった。
• 今後のアメリカの経済成長を見越して企業が積極的に在庫を積み上げていると見ることもできるが、個人的には消費が思ったよりも振るわず売れ残った恐れもある。

予想を大幅に上回った2021年第４四半期

冒頭でもお話しましたが、2021年第4四半期のアメリカのGDPの実質成長率は予想よりも、かなり良かったです。

予想は5.5%でしたが、結果は6.9%で予想を大きく上回りました。

• 予想：5.5%(前期比・年率)
• 結果：6.9%(前期比・年率)

この数字を見た時には、正直私も驚きました。

このブログでは11月からアメリカの消費が低迷していることを伝え、12月の消費も振るわなかったので、てっきり今期の成長率はかなり低い数字が出てくるものだとばかり思っていました。

>>【関連記事】低調だった2021年12月のアメリカの個人消費

内訳を見ると不安材料も垣間見える

良い意味で裏切られたように感じたアメリカのGDP成長率ですが、一体何が起こっていたのでしょうか。

それを探るために、アメリカの実質GDP成長率の内訳(※寄与度：全部を足すと今回の成長率+6.9%になる数字)を見ていくと、今回の数字が予想以上に良かったカラクリが見えてきます。

上の図でアメリカのGDP成長率の内訳を見てみると、消費は予想通りで大した伸びはみせていないのですが、在庫が大きく積み上がったせいで経済が成長しているように見えていたようです。

在庫が増えたことの意味

在庫が積み上がった意味ですが、好意的に捉えるなら「今後のアメリカ経済が成長することを見越して、在庫を積み増した」という考えができます。

2021年の頃から頻繁に「需要はないのに、供給が少ないからインフレになっている」という話はどこからともなく聞こえていました。これを聞いたアメリカの企業が、物流の混乱が少し和らぎ始めた10-12月の間に在庫を積み上げた可能性はあります。

しかし、私はどちらかと言えば在庫を積み上げたのではなく「積み上がってしまった」と表現したほうが正しい気がしています。

2021年の年末はクリスマス商戦を早めで本来なら活発な消費で経済が潤うはずでしたが、残念ながらこの時期は以下のように個人消費が振るいませんでした。

これを見る限り、「今後のアメリカの経済成長を見越して在庫を積み上げた」というようりも、「思っていたほどは売れず、意図せずに在庫が積み上がってしまった」と見るほうが自然な気がします。

さいごに

この記事では、2021年第4四半期のアメリカのGDP成長率について触れていきました。

予想以上に成長率が良かったので驚きましたが、内訳を見てみると在庫が積み上がってしまったようにも見えて、スッキリしない結果だったと思います。

最後に付け加えておくと、最近は消費の伸びがかなり鈍化したアメリカ経済ですが、すぐに景気後退になるとも思っていません。

11月や12月に消費しなかった分の貯蓄は溜まっているはずなので、反動で好調になる時期もあるはずですし、2021年後半からは賃金も伸びているのでしばらく景気は持ちこたえられると思います。

その証拠に、先日の記事でもみたように景気後退が2022年内に起こるような兆候はまだ確認できていません。

>>【詳細記事】次の景気後退について考えていること【2022年2月版】

2021年第４四半期のアメリカはGDP成長率の数字ほど良い経済ではありませんが、そうは言っても悲観してすぐに景気後退を考えるほど弱くもないと思っています。