10月最後の記事は、やはりアメリカのGDPについて触れておこうと思います。
今は決算期で業績を追いかけたい企業もあるのですが、既に伝えているようにアメリカでは消費の伸びが鈍化しているなどの変化が数字になって現れているので、個別企業に触れる前に大局を見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- 2021年第3四半期は前期年率で+2.0%に減速した。前期に比べて個人消費の伸びが大きく鈍化していることが背景にある。
- 実は名目GDPではそれほど成長率は悪くない。しかし、インフレ率が高いために実質GDPでは大きな減速になっている。
成長が鈍化したアメリカ
2021年第3四半期(7-9月期)のアメリカの実質GDP成長率(前期年率)が発表になりました。
- 予想:前期比(年率)+2.6%
- 結果:前期比(年率)+2.0%
結果はエコノミストの予想よりも低く、前期までに比べると成長率は大きく低下しています。
しかし、個人的には思っていたほど悪くなかったと思います。
以前、このブログではアトランタ連銀のサイトで公表しているGDP成長率の推計値(GDPNow)はわずか1.3%を指しているという記事を書きましたが、それよりはずっと良い数字になりました。
>>第3四半期の米GDPをわずか+1.3%と予想するアトランタ連銀【GDPNow】
(※ちなみに、GDPの発表直前のGDPNowの値は+0.2%まで落ち込んでいたようです。)
それでも、今回の結果は今までアメリカの経済に楽観的だった多くの専門家の考えるを変えさせるには、十分な弱さだったと思います。
9月の時点での2021年のGDP成長率はFRBが5.9%予想、IMFが6.0%予想とかなり良い数字を思い浮かべていましたが、これはどうも無理そうです。
10-12月期が絶好調だった4-6月期と同じ成長を達成したとしても、2021年通年では+5.4%成長にしかなりません。
FRBなどの専門家たちは「何だか、思っていたよりもアメリカの調子が良くないぞ」と思っていることでしょう。
実質GDP成長率が低い理由
今回の実質GDP成長率が低かった理由は、2つあると思います。
1つはアメリカの個人消費の伸びの鈍化、もう1つはインフレの影響です。
7-9月期の米実質GDP成長率が低かった原因
- (1)個人消費が伸び悩んだ。
- (2)インフレによる影響を受けた。
インフレを考慮したアメリカの個人消費が3月からあまり伸びていないことは、既にこのブログでも何度もお話している通りです。
そして、さすがにそろそろ見逃せなくなっているのはインフレの悪影響です。
この記事で話題にしている実質GDP成長率はインフレの影響を差し引いた成長率のことですが、実はインフレを考慮しなかった場合(名目GDP成長率)はそれほど悪くありませんでした。
以下のグラフで、実質GDP成長率と名目GDP成長率を比べてみましたが、インフレを差し引かなかった場合の今期の名目GDP成長率は+7.8%とかなり高成長でした。
つまり、インフレが高くなっていなければ、今期もそこそこ高い実質GDP成長率が達成できていたはずなのです。
さいごに
今回の記事では、成長率が鈍化したアメリカのGDPについて見ていきました。
このブログで警戒していたほどの急減速にはなりませんでしたが、多くの専門家の予想を下回る結果になったようです。
少し困ったことに、多くの専門家の期待を下回った背景には高止まりしているインフレの影響もある気がしています。
2021年のアメリカは高いインフレ率が続いているので名目GDPでは高い成長が続いていても、インフレを差し引いた実質的な成長はかなり鈍っている姿が見えてきました。
これを問題視するなら、次第にFRBはインフレを抑える政策に舵を切るはずです。
まだまだFRBはインフレを抑えるために「政策金利を引き上げる」などの具体的な話はしていませんが、最近、市場の投資家は利上げを警戒して、来年2022年6月頃にも利上げをしないといけなくなるだろうと予想をしています。
今後のインフレ率やGDPの結果を受けて、もしも6月よりも政策金利の引き上げが早まったり、利上げペースが早まると市場も少し慌てると思います。