毎月1週目には前月のさまざまな経済指標が発表されます。この記事では11月のアメリカ経済をデータで振り返りながら、今後数ヶ月の景気の見通しについても書いていきたいと思います。
11月のアメリカは予想されていた通り、やや景気回復の勢いが失速しました。
アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大が続いていて、経済活動の一部に再び影響が出てきていることに加えて、与野党の議論が進まず次の景気対策がなかなか打てない状況だったので、景気回復の勢い陰りが見られます。
ワクチンの承認まではあと一息のところまで来ていますが、一般人に普及するまでには数ヶ月から半年かかるので、今後数ヶ月アメリカの景気は下振れしやすい展開になりそうです。
私は2021年後半にはアメリカでコロナが収束に向かい始めて、景気回復が力強くなると思っていますが、そこに至るまでの道は平坦ではない可能性があります。
この記事のポイント
- 2020年11月は景気回復の勢いがやや弱くなった。新型コロナウイルスの感染拡大と、追加経済対策が遅れていることが恐らく原因。
- 11月にワクチンは承認に近づいたが、一般人のワクチン接種が間に合わない21年1-3月期は最後のコロナ流行になり、景気に悪影響を与える恐れがある。
- ワクチンのおかげで2021年後半にはコロナ収束が見えてくると考えるなら、今後新型コロナを理由にした株価下落が起こった場合には、安値で買えるチャンス。
- 最近は景気は弱まっているのに、市場のインフレ予想は2020年の最高値をつけている点には少し注意。2021年後半に景気回復が強まった後にインフレ率がさらに上昇する展開はあるかも知れない。
アメリカの景気回復は11月にやや陰り
アメリカの製造業と非製造業に景気アンケートした結果(ISM景況指数)が発表されましたが、10月よりも景気回復の勢いはおとえた様子が見られました。
50を超えれば景気回復を示すので、製造業も非製造業もどちらも景気は回復しているようです。しかし、非製造業は夏場から継続的にに少しずつ景気回復が弱まっているのは気になります。
企業の景気回復が弱まってくれば、必然的に雇用の伸びも鈍化します。
11月の失業率を見ると、前月よりは0.2ポイント下がっていますが、失業率改善のペースが鈍っているのは、やはり気になります。
心配なのは21年1-3月の景気
しかし心配なのは、すでに終わった11月の景気よりも2021年1-3月の景気かも知れません。
カリフォルニア州では地域ごとの外出制限に向けて動きだすなど、2020年3月ほどの規模ではないにしろ、再びコロナが景気に悪影響を与えようとしています。
>>米カリフォルニア州、地域ごとに外出制限へ ICU逼迫を警戒(2020年12月4日)
11月にワクチンの最終試験の良好な結果が出たので、承認まであと一息のところまで来ていますが、今目の前で起こっているアメリカの感染拡大を抑えるには間に合わなそうです。
JPモルガンは次の1-3月でアメリカが再びマイナス成長に陥って、景気が悪くなる可能性があると警戒しています。
>>米国経済、来年第1四半期にマイナス成長の可能性-JPモルガン予測(ブルームバーグ)
投資のメインは株で良さそうだが、インフレの動きには少し警戒
ここまでの内容なら、普段からこのブログを読んでいる人には、それほど目新しいことはないかも知れません。
21年の1-3月にマイナス成長になる恐れがあること、それが起こったとしても景気は2020年4-6月に既に底を打っていて景気回復の大きな流れの中での調整にとどまりそうだという話も以下の記事でしたとおりです。
2021年1-3月米GDPはマイナス成長でも、景気はコロナから回復基調
アメリカでは新型コロナウイルスの感染拡大が続いて、再び景気が停滞しないか心配されています。しかし、一歩引いてアメリカの景気の動きを眺めてみると、やはり20年4-6月期で底を打って回復基調にあるようにもみえます。
2021年後半にはコロナが収束すると信じるなら、21年1-3月期に景気低迷して株価が下がっても、それは株を安く買うチャンスになるはずです。
最後に少しだけ、今まで触れていなかった点にも触れていきます。インフレ率についてです。
2020年最高値を記録した期待インフレ率
ほとんど誰も話題にしていないのですが、市場の予想インフレ率(期待インフレ率)がとてもゆっくりと上昇を続けています。
12月4日時点で1.89%にもなり、コロナ前の水準も超えて2020年の最高値を更新しました。
この1.89%はまだインフレの悪い影響を心配する水準ではありませんが、これから1年ほど注意していこうと思っています。
最近の急激なコロナの感染拡大で景気が悪化すること心配するなら、景気低迷でデフレ(低インフレ)に向かってもおかしくないところですが、そうはなりませんでした。逆に、コロナが収束した後の景気回復を見越すかのように11月からスルスルと上昇しています。
実際に2021年後半に景気回復が強まった後は、インフレ率がさらに上昇する展開があるかも知れません。
2%をわずかに超えるくらいのまでのインフレ率なら景気に悪影響はないはずなので、株を中心に投資しておいて問題ないと思っています。インフレ率の上昇が2.5%、3%と止まらなくなってきたら、ちょっと注意です。