コンテンツへスキップ

歴史的な低迷を見た2020年4月のアメリカの景気。

  • by

5月は4月分のアメリカの景気を数値化した経済指標が多く発表されましたが、どの内容も歴史的な低水準でした。

3月13日にアメリカで新型コロナウイルス流行の緊急事態宣言が出されて、4月は1ヶ月通じてほとんどが外出禁止の規制が敷かれていたこともあり、幅広い分野で経済活動が停止していました。

これほど一気に景気が低迷することも滅多にないと思うので、ここに記録を残しておきたいと思います。

この記事のポイント

  • 20年4月のアメリカの失業率は歴史的な急上昇を記録した。5月の失業率はさらに悪化する見通し。
  • 製造業・サービス業がそれぞれが感じている景況感もいずれも急落した。製造業の景気指数の落ち込み幅は1948年の統計開始以来最大だった。
  • アメリカのGDP成長率を左右する個人消費も大幅な低迷を記録した。
  • 5月は4月に比べると景気が上向きはじめた傾向が見えている。しかし、1918年のスペインかぜで外出規制が緩かった都市では経済回復が鈍かったと言うデータがあり、今後のウイルスが収束した後もアメリカの景気回復が遅い恐れがある。

過去の景気後退を大きく上回る失業率


アメリカの失業率は4月に14.7%まで急増しました。

2月まで3.5%と歴史的な低水準を記録していたのですが、たった2ヶ月後には過去のどんな景気後退よりも高い失業率を記録するほど数字が悪化しました。

そしてさらに都合が悪いことに、5月のアメリカの失業率は約20%まで悪化すると予想されています。

6月5日発表予定の米雇用統計

  • 失業率予想:19.5%
  • 前月:14.7%

唯一の救いは、これらの失業者の増加のペースは少しずつ緩やかになってきていることです。

毎週木曜日に発表される新規の失業保険申請件数を見ていくと、実は3月末をピークに減少しています。

以前として毎週数百万人を超えるハイペースで失業者が増えていますが、ピークは超えたようです。

米企業の景況感は歴史的な勢いで下落


失業者が増えるということは、必然的に消費もますます減って企業が感じとる景気も悪化します。

ISMが毎月発表する製造業とサービス業の景気を表す指数は11年ぶりの低水準でした。

急速に悪化したアメリカ製造業の景気
11年ぶりの低水準を記録したアメリカ非製造業の景気

特に製造業の落ち込み幅は激しく、1948年の統計開始以降で最も大幅に低下を記録したようです。

個人消費も大幅に低迷


アメリカはGDPの75%が個人消費から来ているほど、個人消費がさかんな国ですが、アメリカ経済の原動力になるはずの個人消費も4月に急減速しました。

4月のアメリカの個人消費は前年同月比でマイナス17%と大きく下落しています。

またクレジットカード会社が集計するクレジットカードの利用金額を見ると、さらに悲惨な状況が見えてきます。JPモルガン・チェースのクレジットカード利用額のレポートをみると、前年比でマイナス40%の大幅な減速をしていたようです。

5月の指標は景気が下げ止まったように見える


4月は急速に景気が悪化しましたが、5月にはこの景気の低迷が一服する数字が出始めています。

既に経済指標の中には、5月分の発表が終わっているものがありますが、たとえば(先程のISMではなく)マークイットが集計している企業の景気指数を見ると、4月を底に景気はわずかに回復しています。

2020年5月に景況感が上向いた理由

  • アメリカ各州で新型コロナウイルス対策の外出制限が解除され、段階的に経済活動が再開された。
  • 4月中旬から、米政府の景気刺激策の影響で消費が上向いた。

ウイルス収束後の景気回復の強さに懸念


気になるのは、新型コロナウイルスが収束しても、アメリカの景気回復はしばらくかなり弱いと思われることです。

1918年に世界的に流行したスペインかぜのデータを振り返ると、厳しい外出制限を長く続けた都市ほど、ウイルス収束後の景気回復が早く、規制が緩かった都市ほど回復が弱かったことがわかっています。

スペインかぜ流行時、厳しい規制をかけた都市(黄色)は死亡率が低く、景気回復が早かった

スペインかぜについての詳細はこちらの記事を参照ください。

そして、今のアメリカはウイルスの新規感染者が毎日2万人を超えている状態でアメリカで経済活動が再開させていて、厳しい規制を長く続けているとは言い難い状況です。

スペインかぜの教訓が今回も当てはまるなら、ウイルス収束後のアメリカの景気回復は弱いと予想せざるを得ません。

現時点で米国株はかなり順調に回復をしていますが、なかなか景気が回復しない様子を見かねて株が下落する局面はあるかも知れません。

また、ウイルスを収束後でもFRBや米政府が景気を支える追加の策を打ち出すような未来がぼんやりと見え隠れします。


本ブログからのお願い

この記事は、読者が自由に記事の金額が決められるPay What You Want方式をとっています。

「役にたった」「面白かった」など、何かしら価値を感じた場合は、YUTA'S INVESTMENT TICKETをクリックして、価値に見合った金額をお支払い下さい。

価値がないと思った場合には、お支払いは不要です。同じ記事を読み返して、新しい気づきがあった場合には、1人で何回クリックしても問題ありません。