2020年2月も半分が過ぎ、毎月公表されているアメリカの経済指標のほとんどは1月分のデータの発表を終えました。
この記事ではアメリカの経済指標から分かることを書いていきたいと思います。
この記事のポイント
- 失業率は順調に低下しているがまだ高い。雇用を支えるための金融緩和はまだしばらく継続される見通しで、これは株価にはプラスに働く。
- 個人消費も弱く、コロナ前の2020年2月のレベルにはまだまだ回復していない。旅行や外出してショッピングをする時期はしばらく先で、ワクチン接種のスピードが鍵を握る。
- アメリカ企業が感じている景気は悪くないが、仕入れ価格の上昇を訴える企業が急増している。インフレと、インフレが引き起こす金利上昇には要警戒。
失業率は順調に低下傾向
大規模な金融緩和と景気刺激策の恩恵を受けて、今の米国株は絶好調の状態にあります。
高い失業率が続いているうちは金融緩和をやめないとFRBのパウエル議長が言っているので、アメリカの失業率がどの程度回復しているのかを見ることには意味があります。
さて、今月の失業率をみてみると、順調に低下していて雇用の回復が継続しているようにも見えます。
ただし、このデータを受けてもパウエル議長は「まだ完全雇用には遠い」と警戒を緩めていないようです。
>>パウエルFRB議長、完全雇用の実現へ「社会全体」が取り組みを(ブルームバーグ)
パウエル議長がいう完全雇用が何%の失業率を意味しているのかはわかりませんが、コロナ前の2020年2月の3.5%を目指しているなら、どんなに早いペースで雇用が回復したとしても年内の実現は難しいと思います。
しばらくは金融緩和が続き、株式投資家としてまだしばらく投資ができる時期が続きそうです。
個人消費はまだコロナ前に回復せず
雇用が完全に戻ってこないと、アメリカのGDPの7割を占める個人消費も回復しません。
少しだけデータが古いのですが、1月末に公開された2020年12月までの個人消費のデータを確認してみると、2020年10月までは個人消費は回復傾向にあったのですが、2020年11月と12月は低迷してしまっています。
上図では新型コロナウイルスがアメリカで流行する前の2020年2月を100として、個人消費の数字をグラフ化していますが、今は100を下回っていて2020年2月の水準にはまだ回復していないようです。
11月から12月にかけて個人消費が低迷したのは、新型コロナウイルスの感染拡大で各州で規制が強化されたからだと思われます。
アメリカの感染拡大は1月でピークをつけましたが、まだ1日の感染者数は他のどの国よりも多いです。この感染拡大ペースをいち早く抑えるためには、ワクチンのペースが鍵を握ります。旅行・ホテル・航空・デパートなどの業績が回復するのは、もうしばらく時間がかかりそうです。
ただし、個人消費が低迷している割には消費者物価は既に上がり始めています。
今はインフレ率は低いので問題にはなっていませんが、個人消費よりも物価上昇のペースが急だと悪いインフレに繋がりかねないので、注意は必要です。インフレに強い銘柄を投資に入れておくのも良いと思っています。
2021年から顔を覗かせるインフレ、それを見越した投資方法
2021年はウイルスが収束に向かうにつれて景気も上がるはずですが、消費も活発化してあらゆるモノの値段(インフレ率)も上昇するだろうと思っています。2021年はモノ(コモディティ)に投資してもそこそこ上手くいくのではないかと考えています。
米国企業が感じている景気は力強い
失業率がまだ高かったり、2020年末から個人消費の回復が鈍っていいるにも関わらず、米国企業が感じている景気は強い状態が続いています。
下図のISM景況指数は50以上が景気拡大、50未満が景気縮小を意味するのですが、毎月のように50を大きく超えています。
ISMが集計しているデータには企業の仕入れ価格などもあるのですが、2021年1月には仕入れ価格が上昇していると回答している製造業は82.1%もいて、2011年4月以来の水準のようです。
ISMは新型コロナウイルスの影響を受けて人件費や輸送コストが上昇してることが原因だと見ているようなので、コロナが収束すれば状況は変わるのかも知れませんが、今や個人も企業もインフレが関心事になりつつあります。
アメリカのインフレが問題視されるきっかけになるのは恐らく4-5月になると思われます。前年3-4月の物価はコロナでボロボロだったので、今年3-4月のアメリカの物価はどうしても前年比で高い数字が出るからです。この時までに、インフレに強い銘柄を仕込んでおこうと思っています。
金利もじわじわ上昇
先程からインフレを警戒する発言をしてきましたが、株に投資している投資家にとっては、インフレ率につられて長期金利(長期国債の利回り)が上昇してしまうことのほうが問題かも知れません。
長期国債が利回りが十分に高くなってしまうと、「リスクをとって株を投資しないで、利回りが良くなった長期国債に投資しよう」と考える投資家が一定数出てくるため、株から資金が逃げ出して株価の下落が怒るかもしれないからです。
今の長期金利は1.2%まで上昇してきても、まだ米国株全体には大きな悪影響は出ていませんが、上昇を続ければどこかで株から資金が逃げ出す時がやってくることには警戒が必要です。
長期金利が急激に上昇せずに、じわじわ上昇している限りは、金利で儲ける銀行株が有利になると思います。銀行株も既に仕込んでおいて良いはずです。
まとめ
だいぶ記事が長くなってしまったので、最後にこの記事の所々に書いてきた投資のアクションについてまとめていきます。
- 失業率はまだ高いので、金融緩和は今後もしばらく継続される見通し。金融緩和が続くなら、株中心の投資で良いはず。
- 景気の本格回復はまだ始まっていない。旅行・航空・ホテルなどのコロナ後の回復を見込んだ銘柄の上昇はまだ少し先。
- ただし、既に物価は上がり始めているので、インフレに強い銘柄は仕込んでおいて良い気がしている。
- 金利もじわじわ上昇している。ゆるやかな金利上昇なら利益が増える銀行の株を買っておいて良いきがする。