1月の雇用統計をよく見ると、雇用の弱まりが見られるという話をこの1週間してきました。
しかし、だからと言って、すぐにアメリカ経済が弱まったり、市場でリスク回避の動きが始まるということは起こっていないようです。
この記事のポイント
- 雇用はやや弱ってきた印象はある。しかし、週別のアメリカ経済の強さ(WEI)を図る指標を見ても景気が弱まっている気配はまだ感じられない。
- 債券市場でのリスク回避の動きも見られない。債券投資家は通常リスク回避に動くときにはジャンク債を売って、国債を買うがその動きはまだ始まっていない。
景気拡大が続くアメリカ
最近このブログでは1月の雇用統計を何度も取り上げて、詳細なデータを見ていきました。
一見すると強そうに見えた今回の雇用統計ですが、よく見ると雇用の弱まりが見られます。
しかし、それでもまだアメリカの景気拡大は続くようです。
毎週のアメリカ経済の強さを数値化しているダラス連銀のウィークリー・エコノミック・インデックス(以下、WEI)というものがあるのですが、この数字は最新のデータでもほとんど衰えていません。
上のグラフの黒線はWEIの13週移動平均を示していますが、この黒い線はまだ落ち込んでいる気配は見られません。
このWEIが調子を落とさなければ、アメリカの実質GDP成長率も落ちることはありません。おそらくまだアメリカ経済は順調に景気拡大を続けているように思います。
雇用に弱まる兆候が見られるようになっても、アメリカ経済は(今のところ)特に何も影響を受けていないようです。
債券投資家の動き
また、もともと警戒心が強い債券投資も現時点ではまだ何も警戒している様子は見られません。
債券投資家がリスク回避をするときには、ジャンク債を売って米国債を買う動きが見られるのですが、その動きは見られません。
以下のグラフが上に向かって上昇すると、ジャンク債を売って米国債を買っていることになるのですが、最新のデータでも低い水準にとどまっています。
このグラフを見ると、まだ債券投資家のリスク回避の動きは全く起こっていないことがわかります。
さいごに
というわけで、アメリカの雇用には限りが見え始めている一方で、まだまだアメリカ経済は健全で、市場にも特に変化がみられないことがわかりました。
経済成長が鈍化したり、市場の投資家が警戒し始めるには、もっとはっきりとした雇用の弱まりが必要なのかもしれません。それにはまだもう少し時間がかかると思われます。
やはり、年始に書いたようにアメリカ経済や市場に変化が起こるとしたら、今年の下半期以降なのだろうと思います。
その頃には、コロナの流行期に貯めた余分な貯蓄も株価を支えているリバースレポの減少もなくなるので、その影響も現れるはずです。