8月も最終日になったので、現時点までに公開されているデータからアメリカの景気についてまとめておこうと思います。
アメリカでは個人消費をはじめ、景気回復のピークを超えたと見られる兆候が増えています。また、上昇が続いていたインフレ率も勢いを失って鳴りをひそめはじめた印象があります。
これだけ見ると、これからのアメリカは低成長率・低インフレの経済に向かっていきそうですが、インフレに関してはまだ安心する時期ではないと個人的には思って警戒を続けています。
この記事のポイント
- 経済成長:8月末に発表された個人消費を見ると、伸び悩みが見られる。景気回復はピークをこえて緩やかな成長へ。
- 雇用:7月までは雇用が勢いよく増え、8月も新規失業者は減っているが、企業側からは思うように人が集まらないとの不安の声もあり、9月1週目の雇用統計に不透明感あり。
- インフレ:短期的にインフレ率は低くなりやすい要因が揃っている。しかし、長期的にインフレ率も上がる要因もまだあるので、個人的にはまだ警戒を緩めていない。
個人消費の陰りが不安材料
アメリカの景気回復はピークを超えたことを示すデータがますます多くなって来ました。
ISMから公開されている7月分のデータを見る限り、サービス業はまだ強い景気が続いているものの、製造業は景気はピークをつけて久しいです。
>>再び最高値を更新した米サービス業の景況感【ISM非製造業指数】
そして、8月に発表された個人消費が伸び悩んでいるのはかなり気になっています。
アメリカでは2020年からの3回の政府からの現金給付で、個人消費は大きく伸びていましたがこの数カ月間はその勢いが失われています。
2021年8月のアメリカでは変異株が再流行したとは言え、再び現金給付を行うような話は伝わってこないので、今後のアメリカの景気拡大にはブレーキがかかってゆっくりとした速度になると思います。
不透明感が残る雇用
雇用に関しては、既にデータが公表された7月までは好調だったことが分かっています。
>>予想外に強かった7月の米雇用統計。市場の金利引き上げ予想は2022年11月に繰り上げ。
また、毎週発表されている新規失業保険の申請数(≒失業者数)の変化を見ても、8月は失業者が順調に減っている印象を受けます。
これだけ見ると9月1週目に発表される8月の雇用統計も調子が良さそうですが、やや心配な点もあります。
8月に企業の景気を調査したIHSマークイットによると、求人をかけても満足の行く採用ができていない米国企業の数が増えているとの声が聞こえてきます。
アメリカでは新型コロナの再流行も見られて、IHSマークイットが発表した8月の雇用指数は約1年ぶりの低水準になったと言っているので、9月3日に発表される雇用統計がどのような結果になるのか注目してみたいと思います。
インフレの伸びは少なくとも短期的には緩やかに
最後にインフレについてですが、2021年に急上昇が見られていたアメリカの消費者物価(インフレ率)の伸びがようやく一段落しました。
>>著しかった上昇に落ち着きが見えはじめたアメリカの消費者物価
しかし、「これでインフレが収まる」と結論づけるのはまだ早いと、個人的には思っています。
7月の消費者物価の伸びが収まった理由は、今まで一時的に価格が急上昇していた中古車・レンタカー・航空券などの上昇が一段落したためで、これらはどこかで緩やかになることが分かっていました。
問題は一度価格が上昇すると、なかなか下落しない家賃などの価格上昇です。
2020年からアメリカでは住宅価格が勢いよく上昇しているのですが、消費者物価のデータにはまだ家賃の上昇は大きく見られません。いずれ家賃が上昇した際には、インフレをもう一段引き上げる恐れもあります。
短期的にはインフレ率はこれから上昇が落ち着くと思っていますが、インフレが問題なく収束するのか、再び問題になるのかは今はただ様子を見守ろうと思います。
もしもインフレが本格化した場合には、落ち着かせるまで何年もかかる問題だと聞いているので、投資家の間でインフレが問題だと認識されてから動いても手遅れにはならないはずです。