昨日の記事ではアメリカの製造業の景気を見ながら、「アメリカの景気はピークを過ぎたかも知れないけれど、まだ景気後退を心配するほど弱くない」という話をしました。
この記事では、他のデータを見ても同じことが言えることを確認していきます。
2022年の米国株はどうも不安定な値動きが続きますが、景気を見ても市場を見てもまだしばらくは米国株に投資できる時期は続くと思っています。
この記事のポイント
- フェデリティのビジネスサイクルアップデートによれば、米国は既に景気拡大のピークを過ぎたが、まだ景気後退にまでは時間的に猶予はありそう。
- 国債の動きを見ると景気後退を意識するような動きは見られるが、まだ景気後退にまでは時間がかかる。
- 一方で、株式市場が持ちこたえられるかという視点でも、金融緩和縮小で株価が崩れた2018年よりはまだ状況は良い。
フィデリティのレポートから
簡単に今の景気の強さを確認する方法として、フィデリティが発表しているビジネスサイクル・アップデートというものがあることを以前このブログでも紹介しました。
>>景気サイクルごとにどの業界株が強いかを調べるサイト【ビジネスサイクル・アップデート】
2022年2月時点でアメリカを含む世界各国の景気の位置づけを見てみると、アメリカは景気拡大のピークは超えたもののまだ低迷期までには時間がかかりそうだということがわかります。
本題とはズレるのですが、上の図を見て中国が景気の底を脱しつつあるというのは少し興味深いです。
IMFなどの専門家の意見では中国は2022年で景気の底を打って、2023年には景気が回復すると見られているので、反発を期待して買っている中国株もそろそろいい加減に上昇してほしいところです。
米国債市場の動きから
米国債市場の動きから、景気の低迷はまだ近くないことも確認しておきたいと思います。
アメリカでは景気後退が来る前に10年国債利回りと2年国債利回りの差がゼロになってしまうこと(逆イールド現象が発生すること)がよく知られています。
その現象はまだ起こっていません。
2022年になってから急速に利回り差は急速に減少しているもののまだ0.36%あって、ゼロにはなっていません。
前回の景気サイクルなら0.36%は2018年6月につけていた値です。景気後退が起こったのは2020年2月なので、まだ時間はあります。
つまり、アメリカはこれから景気は鈍化するかも知れませんが、景気後退までにはまだ時間が十分にあると言えそうです。
株式市場について
先ほど、現時点の10年債と2年債の利回りの差は2018年6月に相当する状況だと言いましたが、この言い方は2018年にすでに投資をしていて当時の記録が鮮明に残っている人なら、むしろ2018年との共通点に警戒心を増すかも知れません。
2018年は10月から12月にかけて約20%近くも米国株が下落した年だったからです。
不安をあおるわけではないですが、これまでのところ2018年と2022年は以下のように類似点がいくつも見られます。
- 金融緩和の縮小が予定されている点(利上げと量的引き締め)
- アメリカの景気拡大の勢いがピークを過ぎた点、10年債と2年債の利回りの差が急低下した点。
- 年初から米国株S&P500が10%下落した点。
なので、私も2022年後半から2023年にかけては2018年に見られたような大きな株の下落があるかも知れないと警戒しています。
ただ、今すぐに20%超えの株の下落が起こるとは思っていません。
2018年の下落は行き過ぎた金融引き締め(利上げと量的引き締め)が原因で国債が売られて、株も国債に比べて相対的に割高になって売られたと思っています。
でも、2022年3月時点では2018年ほど米国株は米国債に対して割高ではありません。
以下のグラフは、米国株が国債にくらべて割安なら上になるように作ったグラフですが、現時点の米国株は2018年より割安に見えます。
これからアメリカで金融引き締めがあれば、2018年のような米国株の大きな下落が今後1年以内に起こっても不思議ではないと思っているのですが、それは今すぐに起こるものではないと思っています。