アメリカ経済は強いと言われています。最近の長期金利の上昇も、アメリカの景気の良さを反映しているという解説も聞きます。
たしかに、毎月政府が発表している投資家から注目度の高いデータを見ていると、雇用は堅調で消費も強いです。おまけにインフレ率も鈍化していて好調そのものに見えます。
しかし、世の中よく見て見ると好調ではないデータも存在します。
この記事のポイント
- 第3四半期のGDP予想でかなり強いものも出始めているが、データによってはアメリカの経済の復調が感じられないものもある。
- 2023年は経済全体でモノの流通量が大幅に減っていることが気になっている。ダンボールの出荷はリーマン・ショック時なみの成長率が続いており、本当にアメリカ経済は力強いのか少々疑問が残る。
強いGDP予想と弱いGDP予想
2023年のアメリカのGDP成長率は、予想ほど悪くないという見方が広がっています。
第1四半期や第2四半期も予想よりも大きな伸びを記録していました。そして最近では、毎月の経済指標でも消費の好調さが伝わったのか、第3四半期もアメリカ経済は順調に伸びるという予想が増えています。
例えば、先日も話をしたようにアトランタ連銀のGDPモデル(GDP Now)では、第3四半期の実質GDP成長率を前期比年率5.8%と絶好調な予想をしています。
しかし、第3四半期+5.8%の成長を素直に信じていいかは少し疑問の余地があります。上の図の青線のコンセンサス予想でもそこまで高いGDPの成長率は予想されていません。
また、同じようなGDP予想をしているニューヨーク連銀のモデル(WEI)を見ると結果は全く異なります。
8月12週のデータをもとにしたニューヨーク連銀のGDP予想ではわずか+1.1%です。
アトランタ連銀のGDPNowとニューヨーク連銀のWEIの結果の違いは、元にしている経済データの違いです。
アトランタ連銀のGDP Nowはたとえば小売売上では7月の好調を伝えた政府発表を参考にしていますが、ニューヨーク連銀の方では同じ7月で小売売上のマイナス成長率を報告したredbookリサーチのものを使っています。
どちらのデータが正しいのかわかりませんが、本当にアメリカ経済が好調ならあらゆるデータで算出しても、結果は力強いものになるはずです。
なので、第3四半期や今後のアメリカ経済が本当に好調だという考えを私まだ信じきれていません。
ダンボールの出荷
私はどちらかといえば、アメリカの経済は実は多くの人が考えているより強くないのではないかと考えています。
経済指標などのように規模が大きく集計が複雑なものではなく、もっとシンプルなデータを見ていると弱さを示しているものが多いからです。
例えば、パッケージング・コーポレーション・アメリカというダンボールを作っている業界3位の大手企業が出しているデータを見ていると、ダンボールの出荷は大きく鈍化しています。
ダンボールの出荷が前年よりも大きく鈍化しているということは、モノの移動が大きく去年から減っていることになります。
モノが動くところにお金も動くはずなので、アメリカは経済はそれほど強くないのではと考えてしまいます。
もちろん、その分サービスが好調なら経済は拡大を続けられるのですが、モノの移動の不調はリーマン・ショック時と同じ規模であることを考えると、サービスの消費もこのまま無傷でいられるかは疑問が残ります。
というわけで、最近の投資家はどうもアメリカ経済に強気な意見の人が急速に増えていますが、いろんなデータを眺めているとまだ楽観できないでいます。