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アメリカの経済をデータで点検。好調な回復の中に眠るいくつかの警戒ポイント。

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毎月、最初の1週間はさまざまな経済のデータが発表されます。9月分のアメリカの経済・景気に関するデータがさまざま発表されていますので、この記事でまとめて紹介します。

株価は未来に関するさまざまな予測を織り込んでいくのに対して、経済指標は過去のデータのなので、経済指標が良かったから悪かったからとって株価に直結するわけではありません。

しかし、最新の状況を把握しておかないと株価が織り込んでいる未来に関する理解もおぼつかなくなるので、月に1回くらいは過去の経済データを見直して理解を更新しておきたいと思います。

この記事のポイント

  • 雇用:この数ヶ月は順調なペースで雇用が回復している。しかし、9月はやや雇用の伸びが鈍化した。
  • 企業の景気:企業の景気は好調をキープ。製造業・非製造業ともに力強く回復している。
  • 個人の消費:景気は回復傾向にはあるが、回復ペースは衰えている。
  • インフレ:インフレ率も緩やかに回復している。わずかに気がかりなのは、直近は個人消費が伸び悩んでも、インフレ率の回復は継続が続いていること。

雇用は予想以上の回復ペースにあるものの、直近は回復が鈍化


まず、アメリカの雇用についてですが、4月に失業率が急増してから半年ほどは予想を超える順調なペースで雇用が増えて、失業率も順調に低下しています。

ただし、まだあまり楽観できない材料もあります。毎週発表される新規失業者のデータを見てみると、9月に入ってから新規失業者数は減少傾向にあるものの、減少ペースがかなり鈍ってきています。

新形コロナが流行しはじめた時期から、景気回復はゆっくりとしたペースになるという考えが一部の専門家の中に根強くありました。今後の雇用回復のペースがどれほどになるのかは、かなり気になります。

雇用回復は2023年頃の見通し

上のグラフを作成する時に集計してみたところ、アメリカの4月から9月までの雇用者増加数はマイナス930万人でした。つまり、コロナの影響で4月から失業者数が急増してから、いまだに930万人は職を失った状態にあるようです。

コロナ前の雇用増加のペースは20万人を超えると好調と言われていたので、もしも毎月25万人のペースで雇用者が増えていくとすると失われた930万人の雇用が回復されるのは930÷25=約37ヶ月かかる計算になります。

この記事を書いているのは2020年10月なので、恐らくアメリカの雇用がコロナ前の水準に戻るのは2023年末頃になるはずです。

これはFRBの予測とも一致します。

FRBの目標の1つの雇用の最大化を実現するまでは、低金利の状態が続いて株価が上がりやすくなる環境が続くので、しばらくは株に強気で良さそうです。

アメリカの企業の景気は堅調

次に、アメリカの企業が感じている景気(ISM景況指数)を見ていくと、景気が回復している感じているアメリカ企業はかなり多いようです。

ISM景況指数は50を超えていれば景気回復の傾向と見ることができますが、この数カ月間は50を安定して大きく超えています。

上のグラフを見る限り、製造業・非製造業はともに好調を維持しています。アメリカの企業はこの数カ月間、順調な回復基調にあるようです。

個人消費の伸びは鈍化傾向にある


企業の景気が力強く回復しているのは良いことなのですが、気がかりな点がないわけではありません。

企業の業績が少しずつ良くなっているのは確かですが、よく見ると最近の個人消費の成長(経済の拡大ペース)はだいぶ緩やかになっています。業績が良くなって見えている背景には、物価の上昇が”業績の見た目”をわずかながら後押ししているように見えます。

まず、インフレ率を除いたアメリカの個人消費の伸びを確認してみると、4月以降回復を続けていますが、6月以降はかなり伸びが鈍化しています。(2020年2月個人消費を100としてグラフ化しています)

アメリカの個人消費の伸びが鈍化した背景には、政府の景気支援策の効果が切れたことがあるかも知れません。

もともと大量の失業者がいる状況なので、本当なら個人消費は長期的に落ち込むはずなのですが、4月5月に力強く消費が回復したのは、3月に可決した政府の景気刺激策のおかげでした。その効果は既にかなり薄まっているようです。

一方で、消費者物価指数の変化を見てみると、個人消費が伸び悩んだ6月以降でも比較的順調に回復しています。

アメリカのインフレ率は8月時点で1.3%で目標の2%をかなり下回っているので、まだまだインフレ率の上昇を警戒するレベルではありませんが、個人消費の回復ペースが鈍る中でも物価が回復が継続している点は少し気に留めておいたほうが良いかも知れません。

さいごに


この記事では、データを見ながらアメリカの経済の様子を見ていきました。

コロナ後の4月以降の失業者は予想以上のペースで減少し、なおかつ企業の景気も順調に上向きになっていて、全体的には良い傾向にあるようです。

警戒する点があるとすれば、9月になってから失業率の減少ペースが鈍化していること、さらに6月以降は個人消費の回復が緩やかになっている点です。

また個人消費が伸び悩んでいる中でも、物価の伸びはどれほど鈍化していないので、今後もこの傾向が続いてしまわないか、定期的にインフレ率をチェックする必要はありそうです。

まだまだ警戒する必要はないですが、この傾向がずっと続くようならば、景気低迷しながらインフレ率が上昇する現象(スタグフレーション)が起こって景気回復が遅れる恐れがわずかにあります。


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