アメリカでは決算シーズンが始まりました。
いくつかの有名な企業が決算発表をしているので、内容をさらっと確認していこうと思います。結論から言うと、好決算が多いなという印象です。
決算発表の数字からアメリカのリセッションを感じることはほとんどありませんでした。
この記事のポイント
- 小売の売上は低迷が伝えられているが、ペプシコの4-6月期の業績は堅調だった。消費全般が落ち込んでいるわけはなさそう。
- デルタ航空の業績も好調だった。トラベル需要はまだ強いという印象を与えた。
- JPモルガンの決算も予想を上回るものだった。リセッションの可能性を感じるのは、貸倒引当金くらいで、ほかは盤石だった。
ペプシコの決算
まず見ていくのはペプシコの決算です。一株利益も売上も予想よりも良い結果が並んでいます。
- 一株利益:$2.09(予想$1.96)
- 売上:$22.32B(予想$21.73B)
強いて難点を言えば、好業績が値上げに頼っているのに、値上げについていけない消費者が一部いるのか販売数量が軒並みマイナス成長になっていることです。
下図で販売数量を確認してみると、前年比でマイナスになっています。
となると今後はどこまで値上げを進められるかかが今後の問題となりそうです。
ただ、2023年の業績見通しを引き上げたところを見ると、ペプシコ経営陣は2023年内はうまくやっていける自信を持っているものと思われます。
- 2023年売上見通し:前年比8%から10%に引き上げ
- 2023年一株利益見通し:前年比9%から12%に引き上げ
実は、アメリカ全体では小売売上は7月に入ってから低迷している兆候がすでに出ているのですが(下のリンク参照)、個人の消費全般が低迷しているわけではないようです。
ペプシコの商品である菓子やドリンクは、他の高い金額のモノの消費に比べて最後まで消費が落ちにくいのかもしれません。いずれにしろ、さすがはペプシコと言った感じの決算でした。
デルタ航空の決算も堅調
続いては、デルタ航空の決算について見ていきます。
この企業の決算はこの銘柄を買うためというよりも、どれだけレジャー・トラベル関連の消費が強いのかを知るために参考になるかもしれません。
結論から言うと、4-6月期は好調でした。
- 調整後一株利益:$2.68(予想$2.40)
- 調整後売上:$14.61B(予想$14.49B)
また、デルタ航空は今の調子はまだしばらく先も続くと思っているようで、ペプシコ同様に2023年の業績見通しを引き上げる発表をしています。
顧客の飛行機旅行の需要は非常に強いままです。この需要の強さを背景に、デルタ航空は2023年の一株利益の見通しを$6から$7に引き上げました。
デルタ航空のCEOのコメントの通りなら、アメリカのレジャー・トラベル消費もしばらく好調が続くと見られます。
この傾向がこの業界にとどまらないなら、アメリカのサービス業界を中心にしばらくまだアメリカ経済は持ちこたえるのかもしれません。
JPモルガンも好調を維持
最後にJPモルガンの決算についても、簡単ではありますが振れておきます。
JPモルガンは3月の銀行不安の中で、ファーストリパブリックバンクの資産を買い取ったこともあり、4-6月期の業績はかなり良い結果になったようです。
- 一株利益:$4.37(予想$4.00)
- 売上:$42.4B($38.96B)
このJPモルガンの決算では、良い数字がいくつも見られました。反対に悪い数字といえば、貸出引当金が前年比2倍に増えたことくらいで、ほとんどが好調でした。
さて、このような好調な決算な続くと、本当にアメリカにリセッションは来るのか疑わしいと考える人が増えると思います。
ただ、まだ完全にアメリカの経済の不安材料は去ったわけではないと、JPモルガンのジェイミーダイモンCEOはコメントしています。
アメリカ経済は引き続き、困難な中でも耐え続けている(continues to be resilient)。消費者のバランスリートは依然として健全で、少し減速しつつあるが消費も続き、労働市場もいくらか軟化しているが雇用の伸びは力強さを保ったままだ。とはいえ、当面は昨年から指摘した経済リスクがしずかに存在し続けるだろう。
また、好調な業績が続いても景気の先行きを不安視している銀行は恐らくJPモルガンだけではなさそうです。
以下は、アメリカの銀行が企業に貸し付けている金額の前年比ですが、過去の景気後退時のような低水準に落ちてきてます。
こういう貸出額の伸びの鈍化は、資金豊富な大企業よりも決算で話題にならない小規模な企業のほうが影響を受けるかもしれません。
恐らく、このまま決算シーズンは大企業を中心に好決算が続くと思われますが、油断はしないようにしたいと思います。