7月のアメリカの消費者物価の発表がありました。
発表された物価上昇はほとんど市場の予想通りだったため、株価も対して大きく反応していませんが、今月の数字を見ると少し状況が変化したと思っています。
2021年のアメリカのインフレ率の上昇には「一時的な要因」と「長続きしそうな要因」があるという話を今までこのブログでしてきましたが、7月になってようやく「一時的な要因」が落ち着いてインフレ率の上昇が緩やかになってきたと思います。
この記事のポイント
- 7月のインフレ率は少し変化が見られている。前月比で物価の伸びは鈍化して、前年比でも消費者物価ペースは加速しなかった。
- これまでの物価上昇の勢いが失われたのは、中古車と航空運賃の価格の伸びが止まったため。
- 2021年のインフレ率には一時的な要因と持続しそうな要因があるが、一時的な要因は落ち着きつつある。
著しかった上昇に落ち着きが見えはじめたアメリカの消費者物価
2021年7月の消費者物価のの結果ですが、ほとんど事前の予想通りになりました。
- 前年比:5.4%(予想5.3%、前回5.4%)
- 前月比:0.5%(予想0.5%、前回0.9%)
2021年からアメリカで大きく伸びていた消費者物価(前年比)の加速が止まっています。
以下のグラフをみても、消費者物価の伸びが一段落していることがわかります。
新型コロナウイルス流行前では消費者物価の伸びは2%前後だったことを考えると、現在の5.4%の伸びはとっても高いのですが、天井知らずで上がっていた数ヶ月前の状況からは変化が見られます。
物価の上昇が落ち着いた要因
さて、前月まで火を吹いたかのように上昇していたアメリカの消費者物価が、7月には伸びが鈍化した要因は何だったのでしょうか。
それは、今まで物価を押し上げていた要因を整理するとわかります。
アメリカのインフレ要因
- 一時的なインフレの要因:半導体不足*による中古車とレンタカーの値上がり、航空チケットとホテル価格の上昇。
- 長続きしそうなインフレの要因:アメリカの大きな財政赤字、予想よりも大きな上昇が続く平均時給、住宅価格の上昇
*注:半導体不足は7月以降に徐々に改善され、2022年に供給が安定すると見られています(ガートナー調べ)。
7月分の消費者物価で変化が見られたのは「一時的なインフレ要因」のほうです。
今まではワクチンを打った人々が街に出る需要が増えて中古車やレンタカーに値上がりが見れたり、旅行の需要が回復して航空券やホテルの価格が上昇していましたが、その価格上昇も7月に一段落したようです。
つまり、コロナからの景気回復の影響で一時的に上昇していたモノの価格の上昇は、7月にゆるやかになったと言えそうです。
まとめ
この記事では、今まで急上昇していたアメリカの消費者物価の伸びが鈍化した点について書いてきました。
コロナからの景気回復で特に価格が上昇していた中古車・レンタカー・航空運賃・ホテルの価格上昇が一段落しはじめたことが、要因のようです。
ただし、7月に消費者物価の伸びの鈍化が見られたからと言って、これからコロナ前の物価の2%に向けて一直線に下がるとは限りません。
今回のデータで物価の伸びの鈍化が見られた「一時的な要因」のほかに、「長続きしそうなインフレ要因」がまだ残っているからです。そのために、2%を大きく超える物価で安定してそれ以上下がらないこともあるかも知れません。
以下に、今後のアメリカの消費者物価のシミュレーションをやってみましたが、これから何ヶ月も前月比0.2%(年+2.4%ペース)で推移するなら、大きな心配は要りません。
そうではなく、何ヶ月先も前月比+0.3%(年間+3.7%)やそれを上回るペースで物価が上昇している場合には、長期的な行き過ぎのインフレがくすぶっている可能性があるので、注意が必要です。
行き過ぎたインフレが起こっているとアメリカの中央銀行が気づいた段階で、株高が続いた低金利の時代は転換点を迎えます。
可能性はまだ全然高くないですが、もしも長期的なインフレが存在していてそれに対応するために低金利の時代が終わってしまえば、順調だった米国株も下落するリスクはまだ残っています。
現時点では、まだまだどのような未来が待っているか見えてこないので、今後も消費者物価の観察を続けます。