9月のアメリカ消費者物価が発表になりました。
原油価格のを背景にエコノミストの予想をわずかに上回る数字が出たようです。
9月の物価を押し上げたのは主にエネルギー価格ですが、他にも少し気になる動きがあるのでひろっていきます。
この記事のポイント
- 9月の消費者物価はエコノミストの予想をわずかに上回った。
- 原油価格が上昇したせいかエネルギー価格が伸びで、物価を押し上げた模様。
- ただ、その他にもサービス価格や住居費が再び伸びているのは要注意。これらの上昇が根付くと物価は下がりにくくなるので注意。
エネルギー価格が押し上げた9月の物価
9月のアメリカの消費者物価ですが、わずかに予想を上回る結果になったようです。
- 消費者物価:前月比+0.4%(予想+0.3%)
- 消費者物価コア:前月比+0.3%(予想+0.3%)
エネルギーや食料品を除いたコア指数は予想通りだったところを見ると、第一印象としてエネルギーが悪さをしたように見えます。
試しにエネルギー価格の伸びを確認すると前月比1.5%上昇しているので、やはりこれが主な問題だったということになりそうです。
原油価格は9月から始まったことではなく、7月から上昇が続いていました。その影響を受けて、7月以降はアメリカの消費者物価はやや上昇傾向にあり、エネルギー価格の影響を差し引いているコア指数ではインフレ鈍化を示すという流れが続いています(下図)。
原油価格は9月末から低下中
エネルギー価格の上昇を受けて消費者物価は9月まで上昇が続いていましたが、翌月からはこの流れが変わるかもしれません。
(あくまでも現時点まですが、)9月末から10月半ばにかけて原油価格は既に10%を超えて下落しているので、このまま行けば10月の消費者物価は低下してくれるはずです。
気になる点
ただ、今月の消費者物価の数字は少し気になるインフレ圧力の上昇が見られるので、サラッといくつか書いておきたいと思います。
- (1)賃金の伸びは低下しているはずなのに、サービス価格が上昇している。
- (2)これから低下することが見込まれているはずなのに、住居費が上昇している。
最近のアメリカでは賃金の伸びが低下しているにも関わらず、(1)サービス価格が上昇しているのは少し気になります。
この手のものが上昇するとインフレが長引く恐れがあるので、注意が必要です。
また、住居費は前月までせっかく良い感じで下がってきていたのに9月に急上昇しています。この住居費は消費者物価に占める割合が大きいので、この項目が上がると消費者物価指数が上昇しやすくなる点はやっかいです。
このブログの前半では「エネルギー価格が物価を押し上げていた」と書きましたが、エネルギー価格ほどではないもののサービス価格や住居費もジワリと物価を押し上げているのは少し不気味です。
来月もインフレ押し上げていないか、引き続き注意して見る必要がありそうです。
原油価格の速いペースの下落は何を意味するのか
一方で、インフレ加速ではなくインフレ鈍化を示すようなデータもあります。最近の原油価格です。
9月末から急速に価格を下げていて、消費とインフレの急速な鈍化を見込んでいるのかと考えてしまいます。
- (3)原油はかなり早いペースで価格が下落している。
このまま一直線に原油価格が下落するとは思えませんが、もしもこの下落が続くなら11月前半にはピークの9月末からの下落率は30%にも達する勢いです。
先日も話をしましたが、景気サイクルの終盤で原油価格が30%も下落するのは消費低迷(不況)のシグナルで、かつては2008年リーマンショック前や2020年コロナショック前に見られました。
そして、2008年も2020年もどちらも一時的なデフレや低インフレになっています。
9月末にはガソリン需要が落ち込みから原油が下がった背景がありますが、昨晩発表された最新のデータではガソリン需要は弱くなかったので、これから原油価格が元に戻す可能性は十分あります。
いずれにしろ、原油についても様子見が続きそうです。これが上昇に転じるか、下落に転じるかで未来がかなり違った方向に進む恐れがあります。
長くなったので最後に話をまとめます。
9月は予想よりもインフレが強かったですが、原油価格が上昇から下落に転じた10月はインフレの伸びが鈍化することが予想されます。しかし、データをよく見ると、これから高インフレ・低インフレどちらにも向かいうる要因があって不透明感が増しているので、引き続き物価の動向に注視する必要はありそうです。