投資家心理、極度に冷え込む
アメリカの30年国債利回りが異常なほど買われています。買われすぎているために、国債の利回りはついに歴代最低値の2.0889%を下回って、2.015%の新記録を樹立しました。
実にあっさりと更新しました。何の壁もなかったかのように、抜き去っていった印象すらあります。
国債が買われていると言っても良い知らせではありません。
多くの投資家が景気後退に備えて株などのリスクの高い資産を売って、資金の逃げ場を求めてアメリカ国債にたどり着いているように見えます。また一部の投資家は、金融政策として中央銀行が国債を大量に買うことを見越して、先回りして国債を買っている動きもあると思います。
ただ、いずれにしても投資家は世界の景気に悲観的になっています。
私は今すぐアメリカの景気後退が訪れるとは思いませんが、時間をかけて確実にその時がやってくると考えています。そしていざそれが来たときには、大きな爪痕を残すような規模の大きなものになる恐れがあるかも知れないと警戒を強めています。
ドイツと中国の工業大国の不調
30年国債利回りが過去最低を記録した日、この1日だけでもやや大きめの悲観的なニュースが入ってきてました。
- ドイツ2019年第2四半期GDPがマイナス成長
- 中国の鉱工業産は17年ぶり低水準
ドイツについては、米中貿易戦争開始後からずっとドイツ企業から中国への輸出が鈍化していて、輸出の大幅な減少が原因でついにGDP前期比マイナス成長に突入しています。
ドイツ、マイナス成長に転落。1年かけてドイツを追い込んだ米中貿易戦争。
また、7月の貿易統計で輸出が意外にもプラス成長を見せていた中国ですが、7月の鉱工業生産は予想の+6.0%を大幅に下回る+4.8%に減少していました。これは実に、17年ぶりの低水準の成長でした。
中国経済指標、7月は低迷が顕著 鉱工業生産は17年ぶりの低い伸び(ロイター)
景気が安定していて、利回りのいい米国債が買われる
こうした背景から、景気後退の懸念が投資家の間で高まり、世界の中でも比較的景気が安定していて利回りも高い米国債が大量に買われる動きが起こっています。
- 米30年国債利回りは最低値になるまで買われる。
- 米10年国債も大きく買われ、2年国債よりも利回りが低下するまれな現象が発生(2005年以来、14年ぶりの現象)
特に10年国債利回りが2年国債利回りよりも買われた現象が最後に見られたのが、サブプライムショックの2年前だったので、景気後退の再来かと騒がれています。
アメリカの景気後退はまだ来ない
しかし依然として、私はアメリカの景気はまだしばらくは持ちこたえられると思っています。
1週間ほど前に、以下のような記事を書きましたが、状況はその時とさほど大きくは変わっていません。
また、10年国債利回りが2年国債利回り以下になって景気後退の再来と言われていますが、クレディ・スイスによるとこの現象が発生してから平均で22ヶ月以内に景気後退が起こっていると言っています。
過去のデータ通りなら、まだそれほど急ぐ話ではなさそうです。
しかし、状況はやや悪い方向に進んでいることは確かです。私を含めて、多くの投資家の心理を冷やしたのはドイツのGDPマイナス成長でした。米中が第一弾の関税を2018年7月に発動してからドイツ企業から中国への輸出が大きく減少していて、それがドイツの景気を冷やしています。
つまり、ドイツのマイナス成長も大きなインパクトですが、改めて中国の景気の悪化と、関税が1年もの時間をかけて中国に深刻な影響を与えていることが浮き彫りになりました。
私はまだすぐにはアメリカの景気後退は来ないと思っていますが、いつかは確実に来ると思います。そしていざそれが来たときには、大きな爪痕を残すような規模の大きなものになる恐れがあるかも知れないと警戒を強めています。